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Suica対応で俄然注目! スマートウォッチの新基準「Google Pixel Watch」
2022年10月13日 02:00
「Pixel」ブランドを掲げ、自社ハードウェア製品に注力しているGoogleですが、注目のプロダクトがまた1つ加わりました。「Google Pixel Watch」です。
いわゆる“スマートウォッチ”ですが、Googleとしてのリリースは初。ユーザーインターフェイス(UI)は大きく改良され、日本市場ではまさに待望の電子マネー「Suica」対応を果たしました。
10月13日から発売ですが、価格も39,800円と円安・値上げが目立つ昨今では、なかなか懐に優しい設定といえそうです。このPixel Watch、どんな特徴があるのか? スマートウォッチ未体験のユーザーにどんなメリットがあるのか? 詳しく見ていきましょう。
直径41mmの小さ目ボディにリューズ付き
Pixel Watchの外観は、ごく普通の腕時計そのもの。しかし内部には通信モジュール・モーションセンサー・脈拍計・マイクなどが内蔵されており、これらがスマートフォンと協調動作することで、単純な腕時計では成し得ない体験ができます。
Pixel Watchのケース部分は丸型で直径41mm、厚みは12.3mm。市場では角型で長辺45mm超のスマートウォッチもかなり多く出回っていますが、その中でもPixel Watchはかなり小ぶりなサイズといってよいでしょう。また重量は36gで、充電式のバッテリー(294mAh)を内蔵しています。
バンドはユーザー自身で交換できる設計になっています。今回試用機としてお借りしたのは、4種類のカラーバリエーションのうち、ケースのカラーがMatte Blackのモデル。またバンドは、ソフトなゴムのような質感が特徴の「アクティブバンド」(フルオロエラストマー素材)で、色はやはり黒系のObsidianでした。
着け心地は良好そのもの。ただ、ダイバーズウォッチなどを好む人からすると、画面はやや小さい印象を受けるかもしれません。このあたりは是非店頭などで実機をご確認ください。筆者が試用した限りでは、コンパクトな分、服の袖に引っかかることが少ない等のメリットを感じました。
気になる価格ですが、Bluetooth/Wi-Fiモデルが39,800円、4G LTEのセルラー通信機能が付加されたモデルが47,800円(いずれもGoogle ストア販売価格)。サムスンのGalaxy Watch5や、Apple Watch SEとほぼ同水準です。
製品のカラーバリエーションは標準パッケージでは4種類ですが、別売バンドが多数用意されています。さらにケース本体のカラーはMatte Blackのほか、Champagne Gold/Polished Silverも含めて合計3色あります。色々組み合わせて、オリジナリティを追求するのも良いでしょう。
操作系はディスプレイのタッチ入力の他に、リューズと物理ボタンがあります。リューズは上下の回転と押し込み操作に対応。リューズは1回押しでメニュー(アプリ)の呼び出し、長押しだと電源関連といった具合に操作が割り当てられています。
リューズ非搭載のWear OS端末は多いため、Pixel Watchの存在感はそれだけで際立っています。音量の操作がより直感的に行なえるなど、UI面での明らかなメリットもあるため、競合機種と比較する上でのアドバンテージとなるでしょう。
Pixel Watchの充電は、付属のアダプターをケース部裏面(心拍センター)にセットして行ないます。マグネットで軽く固定する方式で、これは多くのスマートウォッチと共通の要素です。付属アダプターのUSB端子は、USB Type-Cとなっています。
セットアップはAndroidの「Google Pixel Watch」アプリで
スマートウォッチの代表格であるApple Watchは、iPhone(iOS)とペアで使います。では、対するAndroid陣営はどうなのか? 「Wear OS(途中でAndroid Wearから改称)」というプラットフォームを2014年から展開してきましたが、2021年になってサムスンのスマートウォッチOS「Tizen」との統合を発表。その仕切り直しの目玉製品がPixel Watchだと言ってよいでしょう。
今回は、筆者私物のPixel 6a(Android 13に更新済み)にPixel Watchをペアリングして、使用感を試しました。
実際の製品からは、仕切り直しの影響が大きく感じられます。まず、セットアップの方法は大きく変わりました。これまでは「Wear OS」というアプリに加えてさらにもう1つ、スマートウォッチ発売メーカーの独自アプリもまた必須と言ってよい状況でした。2つのアプリをスマートフォン側にインストールしなければならなかったのです。これがPixel Watchでは、「Google Pixel Watch」アプリを1つインストールするだけで済むようになりました。
また最近発売されたAndroidスマートフォンには「Fast Pair」というBluetoothペアリングの仕組みが組み込まれていますが、Pixel Watchでもこれが利用できます。スマートフォンの画面ロックを解除し、Pixel Watchの電源を入れるだけで前述アプリのインストール確認画面が表示され、その画面操作のほとんどはスマートフォンアプリ側で行ないます。このあたりは完全ワイヤレスイヤフォンのセットアップの流れとかなり似ています。設定内容自体は多いですが、落ち着いて進めさえすれば、トラブる心配は少ないように思います。
Pixel WatchのUIは大変快適でした。新品をセットアップした直後という点は考慮すべきかもしれませんが、まず画面タッチの追従性が高く、画面スクロールのアニメーションも滑らか。チップセットにExynos 9110 SoC、メインメモリが2GB、そして何よりOSバージョンが「Wear OS 3.5」となった効能なのでしょう。筆者はこの2年間、「OPPO Watch」をほぼ毎日装着する生活だったのですが、さすがに隔世の感があります。
Wear OS端末の操作体系についても一応説明しておきましょう。タッチ操作で画面を上下にスクロールさせたり、あるいは左右にスワイプするというのが大筋で、Pixel Watchでもこれは原則変わっていません。メイン画面で上から下にスワイプするとショートカットメニュー、下から上で通知の確認ができます。
一方で、「タイル」「カルーセル」と呼ばれる機能の扱いは少々変わっていました。言わば「ウィジェット」にあたる機能なのですが、これまではメイン画面で「右から左」にスワイプした時だけ、このタイルの閲覧モードに移行していました。しかしPixel Watchでは「左から右」にスワイプしてもタイルが表示されます。恐らくは「タイルをもっと使って欲しい」というのが開発者のメッセージなのでしょう。
実際、Pixel Watchにアプリを沢山インストールすると、アプリメニューから特定アプリを探すのが面倒になってきます。よく使うアプリについては、そのアプリのタイルをショートカット的に登録したほうが何かと便利です。
また、Pixel Watchでは電話を発信したり、着信に応答することができます。完全ワイヤレスイヤフォンで電話するのとほぼ同じイメージですが、Pixel Watchではケース部にマイクとスピーカーが内蔵されているので、通話時は口元に近づける必要があります。
待望! Wear OSでSuica
さてPixel Watchの国内発売にあたって、最大のサプライズとなったのが電子マネー「Suica」への対応でしょう。Suicaは国内限定、それも東日本地域での利用が念頭に置かれたサービスではありますが、いわゆる「交通系」の電子マネーとして全国津々浦々で利用できます。コンビニなどでの店頭決済はもちろん、電車・バスなど公共交通機関の切符代わりにもなるため、対応の意義は極めて大きいと言えます。
国内で流通するAndroid系のスマートフォンの多く(特にキャリア販売されるもの)は「おサイフケータイ」に対応しており、Suica以外のIC電子マネーにも広く対応しています。しかしPixel Watchでは、あくまでSuicaのみの対応で、かつ定期券機能が未サポートであるなど、限定的な実装となっています。ただそれでも、Pixel WatchによるSuica対応の利便は大きいと感じます。
Pixel WatchでSuicaを有効化するには、「Google Pay」アプリを使います。Pixel Watchのアプリメニューから、あるいはリューズボタン2回押しで「Google Pay」が起動するので、その画面から「+」ボタンをタップすると、今後はスマートフォン側の「Google Pay」アプリから設定するよう促されるので、それに従いましょう。Pixel Watch側の操作は最小限です。
設定が完了すると、Pixel Watchの「Google Pay」アプリにSuicaの画像が表示されます。こうなればもう、あとはPixel Watchを決済リーダーにかざすだけで残高からの引き落としが実行されます。ロック解除などの特殊な操作は不要です。
実際にコンビニや自販機で決済を試してみましたが、これがもう快適そのもの。財布やスマートフォンをポケットから取り出すまでもなく決済できるのは、なにかこう「悪魔的魅力」を備えているといいますか……。まぁそれは、いち「おサイフケータイ」マニアの戯れ言だとしても(笑)、便利・快適なのは事実です。
残高の確認や決済履歴についてはPixel Watch単独で実行できますが、残高のオンラインチャージはスマートフォン側のGoogle Payで行ないます。ですので、スマートフォンを持たないまま外出し、Pixel Watchだけで全てを完結させるのは少々難しいと考えてください。
オートチャージ機能は現状なく、またチャージ手段はGoogle Payに紐付けたクレジットカード/デビットカードの利用が前提となります。筆者が試した範囲では「Visa LINE Payプリペイドカード」でオンラインチャージできることを確認しています。
Fitbit機能が前面に
これまでのWear OS端末ではできなくて、Pixel Watchでできること。それがアクティビティ記録およびフィットネスサービス「Fitbit」との連携です。Fitbitをフルに使おうとすると、これまでは同社製の専用ハードウェアが必要でした。しかしFitbitは買収を経て2021年からGoogle傘下となっており、両社の機能が融合した新製品の登場が待たれるところでした。Pixel Watchはその成果……という訳です。
Fitbit機能は、Pixel Watchにインストールされているアプリの1種のように扱われています。ただ、作り込みは流石。前述のタイルは、運動量の確認、運動計測モードの呼び出しなど、用途に応じて複数用意されていますし、デフォルトのウォッチフェイス(盤面)でもFitbitの存在感が大きくクローズアップされています。
Pixel Watchを装着していれば、基本的にそれだけで歩数・心拍数が記録され、さらには歩行距離・消費カロリー・運動強度などが自動で集積されていきます。また就寝中にPixel Watchを装着したままであれば、睡眠時間も計測できます。ちなみにPixel Watchは30分間の充電で残量約50%分の充電ができますので、朝食中と入浴中のように1日2回充電のタイミングを確保すれば、より使い勝手が向上するでしょう。
Fitbitが優れているのは、集積した数字の見せ方です。グラフでカラフルに表示したり、1日あたりの目標に対してどれくらいの進捗だったかがわかりやすく提示されます。Wear OSにおける運動量計測アプリのスタンダード「Google Fit」より遙かにこなれているといってよいでしょう。友だち登録した相手との計測値比較などは、Fitbitの独壇場です。
なお、Fitbitでは有料サブスクの「Fitbit Premium」(月額650円/年額6,400円~)が展開されています。計測したデータの分析がより深化したり、アドバイスなどが充実するのですが、いかんせんデータを長期連続取得した時に本領を発揮するサービスとなっています。今回は試用期間が5日間程度と短かったため、真価を感じるところまではいきませんでした。
ただ、その日の運動に対する準備度を示す「エナジースコア」等、一般的な活動量計では聞き馴染みのない指標も提示してくれます。Pixel Watch購入者が新規にFitbit Premiumを契約すると、利用料が半年間無料になる特典がありますので、気軽に試してみるとよいでしょう。
Google Fit、ちゃんと確認したら使えました!
Fitbit対応という大きな特徴を持つPixel Watch。ただ、率直なところを申しますと、Wear OSの継続利用者として気になっていたのはGoogle Fitの扱いでした。
歩数や消費カロリーのほか、Google Fit対応の体重計と連携して毎日自動で体重を記録できたりと、活動データの保存場所として大変重宝する存在なのです。筆者の場合、毎日7,500歩、歩くことを目標にしているのですが、その管理もこのGoogle Fitで行なっています。
ただ準備には苦労しました。Pixel Watchをセットアップした段階ではGoogle Fitアプリが見つからず「もしや廃止か?!」と一瞬焦ったものの、Wear OS用のGoogle Playストアにはしっかり登録されていたので、これはまぁセーフでした。ならばダウンロードすれば問題なく使えるだろう……と思ったら、今度はインストールでトラブル。レビュー執筆用にお借りした試用機では動作するのに、個人的に購入した製品版では「Fitは現在このデバイスではサポートされていません。今後の最新情報を適宜ご確認ください」と表示され、起動しません。
この現象、恐らくはファームウェアのバージョンなどに起因すると思われますが、原因は特定できず。Pixel Watchの再起動、Google Fitアプリの再インストールなどを繰り返しているうちに、動作するようになっていました。
色々模索している間には、アプリが起動しているのにタイル一覧にGoogle Fit関連のものが並ばないなど、挙動がおかしな瞬間もありました。もし似た境遇にあった方は、諦めずに再起動・再インストールなどを試してみてください。初出時から内容が二転三転してしまい、大変お騒がせしました。申し訳ありません。
【更新】購入したPixel WatchでもGoogle Fit動作が確認できたため記事を修正しました(13日19時00分)
【更新】記事初出時にGoogle Fitに対応としていましたが、購入した製品版では動作しなかったためその旨追記しました(13日14時50分)
Google マップも使えます
Android系のスマートウォッチと言うことで、Google マップの扱いについて気になる方もいるでしょう。結論から申しますと、Pixel WatchではGoogle マップの機能を“限定的”に利用できます。基本的には、スマートフォン本体とペアで使うのが前提となります。
スマートフォンのGoogle マップ上でナビゲーションを開始すると、Pixel Watch側には進行方向を示す矢印、交差点までの残り距離、所要時間が表示されます。地図も表示できますが、画面サイズ的にはやや厳しめ。とはいえ、徒歩ナビゲーションの実行時に、スマホをポケットから取り出さずにPixel Watchだけを見るというスタイルは、十分あり得ると思います。
Googleには継続的な機能強化&製品投入を期待
Pixel WatchはGoogleの製品だけあって、Pixelスマートフォンと組み合わせることでちょっと便利になる面も。例えばカメラのリモコン機能です。Pixelスマートフォン向けのカメラ撮影アプリ「Google カメラ」は、Wear OSとの両対応になっていて、Pixel Watchにもインストールできます。
そしてPixel Watch側から同アプリを起動すると、スマートフォン側カメラのシャッター(即時・3秒待ち・10秒待ちから選択可能)、ズーム調整、インカメラ/アウトカメラ切り替えができます。
この際、フレーミングはPixel Watchからも確認できます。そこまで出番の多い機能ではないかもしれませんが、カメラを三脚に固定して記念撮影するといった場面で役立つはずです。
さて、このあたりでPixel Watchについてまとめましょう。すでに8世代に渡って連続的・統一的に改良を加え続けているApple Watchと比べ、Wear OS採用のスマートウォッチの知名度は圧倒的に低いのが実情です。ただPixel Watchは「Googleとしては初のWear OS端末」という冠がつく意味で注目に値しますし、なによりSuica対応という、実用機能面での強化が図られています。「Wear OSは変わった」との印象を、少なからぬユーザーに与えることができる製品だと思います。
価格面はどうでしょうか。ここのところの円安傾向・物価高を踏まえれば、Wi-Fiモデルと4G LTEモデルのどちらも4万円台に収まっている点は、一定のアドバンテージと評していいでしょう。4~5万円あれば、性能十分なミドルレンジ帯スマートフォンを1台買えてしまいますが、やはりスマートフォンとスマートウォッチは役割が異なります。ちょっとした電話はスマートウォッチで済ませる。スマートフォンを持たずにジョギングして記録を残す。会社でトイレに立つ際、スマートフォンが無くても帰り道に自販機でSuica決済する等々……。「スマホが手元にある」と「スマホが手元にない」の間をちょうど埋めるような存在がPixel Watchだと言えます。
Wear OS系のAndroidスマートウォッチを7年近く使い続けている筆者としては、もうスマートウォッチがない生活は考えられません。フィーチャーフォン全盛時代は「ケータイで時間確認できるから腕時計は要らない」と考えていた時期も一時ありました。が、やっぱりスマートウォッチは「あると楽しい」んですよね。ここまで述べたように、できることも増えます。綿密にコストパフォーマンスを考えて、購入を判断するのも1つの手段でしょうが、情緒的な部分にも目を向けてみてほしいと思います。
一方で、Googleに望みたいのは「継続的な製品展開とサポート」です。かつてWear OS端末を製造していて、現在は販売終了となっているケースは少なくありません。Apple Watchは世代を重ねることで魅力を高めたのは間違いない訳ですし、Googleもそこを見習って2年、3年、5年という長期的な視野に立ち、新製品を発売するなり、それが無理なら既存製品のソフトウェア更新を頻繁に行なうとか、ぜひ「やる気」「諦めない気持ち」を形として見せていただければ!