レビュー

スマートウォッチの新時代、Galaxy Watch4(LTE)を使ってみた

サムスン「Galaxy Watch4」LTE対応版を腕に装着したところ

Androidスマートフォンでも本格的なスマートウォッチを使いたい……。そう考えている方にとって「Galaxy Watch4」は待望の製品と言って良いでしょう。新OSを採用している点だけをとっても大注目に値しますが、Andorid端末とのペアリングを前提とした製品では極めて珍しい、LTE通信対応モデルがラインナップされているのです。LTEで何がどう便利になるのか? 実際に使って試してみました。

新OS採用、さらにLTE内蔵

Galaxy Watch4は、Androidスマートフォン「Galaxy」シリーズで知られるサムスンが9月に国内発表したスマートウォッチです。製品バリエーションは非常に豊富で、外観、リストバンドなどが異なる「Galaxy Watch4」「Galaxy Watch4 Classic」という2つの製品ラインが存在し、それぞれにディスプレイサイズが2種類ずつ、さらにカラーバリエーションが2~3ずつ用意されています。

一般的なスマートウォッチにはBluetooth/Wi-Fi通信機能が搭載されていて、スマートフォンと組み合わせて運用します。スマートウォッチ側にはマイクとスピーカーが内蔵されていて通話ができますが、これはあくまでスマートフォン側の電話機能を軸にしているため、スマートフォンの電源が切れていたり、スマートフォンをどこかに置き忘れて手元にスマートウォッチだけあるというシチュエーションでは、電話をかけられません。

こうした中、Galaxy Watch4にはBluetooth/Wi-Fiに加えて、LTEによるモバイル通信機能を追加で備えたモデルが存在します。日本国内では主要4キャリア(携帯電話会社)のうちauのみが取り扱っており、LTE通信を有効化するには、auの携帯電話回線と、その有料オプション「ナンバーシェア」という有料オプションの契約が必要です。腕時計だけを用意しても、それだけで電話できる訳ではないのでご注意を。

「ナンバーシェア」を契約すると、ペアにする携帯電話と同じ電話番号がスマートウォッチ側に割り振られ、スマートウォッチ単独で電話の発信・着信が可能となる機能です。Apple Watchではすでにお馴染みのサービスですが、Android系の端末ではこれまで利用できませんでした。

そこで今回は、auのLTE対応版Galaxy Watch4のディスプレイサイズ40mm/ブラックをお借りして試用しました。au オンラインショップでの販売価格は38,764円です。なおペアリングするスマートフォンはauから販売されたPixel 5(Andorid 12にアップデート済み)で、「ピタットプラン 5G」契約の物理SIMカードを装着しています。

LTE対応といっても外観上特に変わったところもなし
背面には心拍センサー
充電ドック
充電時はこのようにセッティングします

新OSの採用についても触れておきましょう。Android……というかGoogleはこれまで「Wear OS by Google」(旧称はAndorid Wear)ブランドのもとで、スマートウォッチ用OSを提供してきました。しかし5月、サムスンが独自に開発していたOS「Tizen」との統合を発表。新たに「Wear OS Powered by Samsung」が誕生し、そのOSを採用した最初期の製品がGalaxy Watch4なのです。

個人的な話になりますが、筆者はWear OS by Google(とその前身OSの)採用スマートウォッチを2016年から使い続けています。直近では、2020年9月に「OPPO Watch」を購入しており、もはやWear OS by Googleは生活の一部と言って良いほど。OS一新のGalaxy Watch4でどれくらいの変化が起こったのかにも大変注目しています。

本体設定画面などでは「Wear OS Powered by Samsung」の記述を確認できませんでしたが、このようにアプリストアとして「Google Playストア」が用意されています
LTE対応モデルは、このようにeSIM関連の記述あり

スマホとのペアリングは「Galaxy Wearable」で

Galaxy Watch4のセットアップを進めるには、Androidスマートフォン側に「Galaxy Wearable」アプリをインストールします。これまでのWear OS端末であれば、Googleが配信する「Wear OS」アプリを使うのが常識でしたが、この時点でまず大きな変化があったと言えます。

セットアップ前のGalaxy Watch4の電源を入れ、ペアリング待ちの状態になったら、ほぼすべての設定操作はアプリ側で行ないます。この途中、サムスン製スマートフォンで用いる「Galaxyアカウント」でログインすると、データのバックアップなどができるので、任意に登録しましょう。また「料金プラン」に関する設定は後述のLTE通信に関連してくる部分なので、ここでは「スキップ」しました(後からでも問題なく設定できます)。

「Galaxy Wearable」アプリ
画面を確認しながら、Bluetoothなどの設定をしていきます
「Galaxyアカウント」へのログインは任意ですが、フルに機能を使うためには必須になってきます
スマートフォン側で操作をする必要はほとんどなし

「Galaxy Wearable」アプリはかなり高機能で、Galaxy Watch4に関するかなりの設定がアプリ単独で行なえます。従来の「Wear OS by Google」では、Googleの「Wear OS」アプリと、各スマートウォッチメーカーが独自に配布する設定用アプリを組み合わせなければならないケースが多かっただけに、だいぶスッキリした印象です。

設定完了後の「Galaxy Wearable」アプリ。Galaxy Watch4のかなりの項目について、設定調整やカスタマイズが行なえます
例えばアプリ一覧などもアプリから調整できます

旧Wear OSとはかなり異なる操作・UI体系

操作画面やユーザーインターフェイス(UI)も、「Wear OS by Google」と「Wear OS Powered by Samsung」ではだいぶ異なります。Galaxy Watch4と私物のOPPO Watchと比べて一番差を感じるのは、インストール済みアプリの一覧呼び出しで、画面下→上へのスワイプで実行します。本体側面のボタンは使いません。同様に、通知の確認は左→右スワイプとなっています(OPPO Watchの通知確認は下→上スワイプ)。

こちらがウォッチフェイス。ここではデジタル表示ですが、クロノグラフ風アナログだったり、グラフィカルなものも多数あります
ウォッチフェイスの設定は「Galaxy Wearable」からも行なえます
搭載アプリの一覧画面

本体側面の物理キーは、上側が「ホームキー」で、どの画面からもウォッチフェイス画面に戻るための操作を担います。下側が「戻るキー」で、操作を一手戻すか、あるいは直近に利用したアプリの一覧を呼び出すかを設定で選べます。ちなみに、ホームキーと戻るキーの同時短押しでスクリーンショットが撮れます。

本体側面(左腕に装着した場合の右側)に物理ボタンが2つ

 主要な設定項目へ簡単にアクセスするための「クイックパネル」は画面上→下、「タイル」と呼ばれるウィジェット状データ画面の呼び出しは右→左のスワイプです。

クイックパネル
「タイル」は、ウィジェット感覚でアクセスできるメニューです。こちらは「S Health」のタイル

スマートウォッチで便利なのは、届いたプッシュ通知をスマートウォッチで確認し、不要だと思えばスマートフォンに触れることなくすぐ削除できる点にあります。その重要な「通知の削除」は、対象となる通知を左右スワイプで選んで、その後上方向へスワイプする格好です。

通知の表示。ここから上にスワイプすると、通知を削除できます
通知を一番左までスクロールすると、通知を全削除するメニューも

ただGalaxy Watch4は、通知の表示に関してはかなり抑制的な設定になっていました。多くのアプリのスマートウォッチ通知はデフォルトでオフになっていて、スマートフォン側にだけ通知を表示するようになっていました。

ここまで説明した操作・仕様は、Wear OS by Googleで培ってきた知識から微妙にズレていて、正直面食らいました。まぁ、その操作を覚えていくのが楽しいというのも確かなので、気長に向き合っていくのが良さそうです。

とはいえ、そうした印象を覆すだけのパワーもあります。アプリケーションの多様さです。実際試用してみても、まさにGalaxy Watch4の華だと感じる部分です。

標準インストール以外のアプリを追加するためのカタログ(ストア)は「Google Playストア」に事実上一本化されています(プリインストールアプリを更新するためのストアアプリはあるものの、メニューの深い階層に存在する)。現状ですでに「Google マップ」「Google Keep(メモ)」などの超メジャーどころも配信中。スマホのGoogle マップでナビゲーションを開始して、「○○m先を右へ曲がる」といった通知をGalaxy Watch4で受け取ることも可能です。

「Google Playストア」からGoogleの各種アプリをダウンロードできる
もちろん「Google マップ」も

そして、個人的に最重要視している「Google Fit」アプリも、現在はGalaxy Watch4で利用できます。歩数や運動量を計測するためのアプリとして知られるGoogle Fitですが、さまざまなメーカーの製品から取得したヘルスケア・フィットネス情報を集積するハブとしても大変重要な存在です。

筆者の場合、スマートウォッチで計測する心拍情報に加え、Withings社の体重計で測定したデータも2017年頃からGoogle Fitに自動連携させているため、Google Fitに対応していないヘルスケア製品をそもそも買いたくないという境地に達しています。試用した限り、特に問題なくGoogle Fitも動作しているようですし、これだけでもうGalaxy Watch4を使い続けたくなります。

個人的に最重要な「Google Fit」。これがサムスン製スマートウォッチで使える不思議
なお「S Health」というサムスン製のフィットネスアプリのほうが、OSとも深く統合されています。体組成計測機能などは、この「S Health」の領分です

LTEモデルならではの「ナンバーシェア」、手続きはアプリから

さて、ここからはLTE対応版のGalaxy Watch4だからこそ利用できるモバイル通信の設定・利用方法について確認していきます。

LTE周りの機能を利用するには、auの「ナンバーシェア」という有料オプションに加入しなければなりません。料金は月額385円。ただ現在は、終了期限未定の48カ月無料キャンペーンが実施中でので、4年間は無料扱いです。

その加入手続きは基本的にオンラインだけで完結します。LTE対応版のGalaxy Watch4を通販等で購入し、手元に届きさえすればOK。あとはスマホとのペアリングに用いる「Galaxy Wearable」アプリから行います。

「Galaxy Wearable」アプリの「時計の設定」画面内にある「料金プラン」の項目をタップ。今回用意したPixel 6はデュアルSIM運用を行なっていたせいか、ここで「ナンバーシェア」の対象とすべきau回線のSIM(電話番号)の選択が入りました。au以外のSIMを選択しても上手く動作しませんので、素直に選択します。すると、設定のためにWi-Fiを一時オフにせよという指示が出ますので、それに従って画面を進めていきます。

「Galaxy Wearable」アプリの時計設定画面には「料金プラン」の項目があるのでタップ
デュアルSIM運用をしているとSIMカードの選択画面が出るようです。ここではau回線を指定します
Wi-Fiをオフにするようにとの指示
この画面が出れば、あとはもう一般的なWebショップのように必要事項を入力していくだけ

あとはもう、Webブラウザで買い物するのとほぼ同じ。案内や注意書きを読みながら必要事項を入力していくだけです。氏名住所以外には、4桁のネットワーク暗証番号、契約関係の書面を郵送するかWeb閲覧にするかを選ぶ程度。10~15分あれば誰でも手続きできると思います。ただし受付時間は9時~21時とのこと。auの加入者管理システムの都合でしょう。

手続きが終わると、たいした待ち時間もなく、すぐにナンバーシェア機能が有効化されます。昨今のeSIM契約で手続きの迅速化は体験していましたが、Galaxy Watch4でもこれほどスムーズとは。かなり衝撃的でした。

ネットワーク暗証番号の入力画面。これが本人確認に相当する部分でしょう
必要事項を入力して最終確認
設定完了。すぐにナンバーシェアは有効化されます

時計だけで音声通話。ただし単独でLINEできる訳でもなく

Galaxy Watch4がどのように通信しているかは、クイックパネルを開くとよく分かります。BluetoothとWi-Fiどちらとも異なる電波強度表示。これこそがLTE通信ができている証しです。ただ、ペアとなるスマートフォンが傍らにある場合はBluetoothで可能な限り接続し、電力消費を抑えているようです。スマートフォンの電源等を切らない限り、4G電波強度のアイコンはそうそう表示されません。

クイックパネルにはLTE通信状態を示すアイコンが! ただし、常に出っぱなしではなく、省電力のためにかなり積極的に通信をカットしているようです(それに伴ってアイコンも非表示になります)

いろいろ試してみましたが、電話の発信・待受に関しては非常に快適でした。スマートフォンの電話帳(連絡先)に登録している人の名前、発信・着信履歴は、Galaxy Watch4から閲覧できます。もちろんスマートフォンの電源が切れた状態であっても、です。

「電話」アプリのメイン画面
発信相手ごとの通話履歴も確認できます
通話中の画面。マイクをミュートにしたり、スピーカー音量の調整ができます

事前に心配していたのが、電話待受の確実性でした。Galaxy Watch4ではLTE通信が確立していても、かけてくれた相手には「電波が届かないところにいるか、電源が入っていません」のガイダンスが流れてそれっきりになることが頻発するのではないか。ただ、筆者が試した限りでは、そうしたトラブルはありませんでした。

BluetoothもWi-Fiもオフなのに……
電話がきちんとかかってくる不思議

通話の品質も良好です。Galaxy Watch4はホームキーと戻るキーの間の部分に小さなマイク穴が開いているので、そこを口元に近づけて話すと相手もかなり聞きやすくなります。またスピーカーフォンの受話音量も調整できるので、よほど音の大きな工事現場にでもない限り、通話は問題ないでしょう。

一方で、データ通信に関しては過度な期待は禁物です。例えばLINEは、あくまでスマートフォン上で動作するアプリであって、Galaxy Watch4単独ではメッセージの送信も受信もできません。ここは是非、勘違いせず正確に理解しておきたい部分です。

また、Galaxy Watch4単独でGoogleマップのナビゲーション機能を使うのも難しいようです。スマートフォンとの接続が確立した状態でないと、地図の表示それ自体できないことを確認しました。

良く見ると、2つの物理ボタンの間、裏蓋の側面とでも言うべき位置にマイク穴があります

とはいえ、Google Fitのようなアプリを使って数十分のジョギングなどをする際、LTE版Galaxy Watchはピッタリだと思います。ジョギング中は、通知が届いた瞬間に内容を見ることもないでしょうし、とはいえ緊急の電話はとりたい。そうした二律背反的なシチュエーションを埋める効果が、LTE対応Galaxy Watch 4にはあります。

「予備の電話」としては間違いなく最強

Galaxy Watch4はこのほかにも、体脂肪率などの体組成を測定する機能、睡眠計など健康関連の機能を多数搭載していますが、今回は筆者が特に興味のあった設定周り・LTE通信機能などを中心に解説しました。

繰り返しになりますが、筆者はGoogle系のスマートフォンを長らく使っているので、歩数や運動量が腕時計を付けているだけで自動的に集積されていく楽しさにはすでに触れています。では、そのスマートウォッチにLTE機能が入るとなにが変わるのか? それはズバリ「予備の電話機」としての安心感でした。

ナンバーシェアによって、1つの自分の電話番号で、2台同時に電話を待ち受けられるようになります。もし旅行先でスマートフォンを無くしてしまっても、そのまま電話の待受はできますし、こちらから家族や電話会社に電話をかければ連絡がつきます。この時、発信元の電話番号は変わりませんから、家族・友人は抵抗なく電話に出てくれるはずです。

スマートフォンが壊れたり無くなったりしても、その場で少しはリカバリーできる───これが、スマートウォッチのLTE対応の真髄ではないかというのが、筆者の結論です。少なくとも今のところは。

ですので、使い方や予算、在庫状況によっては、Wi-Fi/Bluetooth版のGalaxy Watch4をあえて選択するのは十分「アリ」でしょう。au オンラインショップや大手通販サイトなどの販売価格を総合すると、同一ディスプレイサイズの製品がLTE版がどうかで6,000~7,000円程度の差があります。

一方で、月額380円のオプション料金が48カ月に渡って無料になるキャンペーンも魅力的です。なんだかんだで、これが購入に向けての最後の一押しになる気も……。

スマートウォッチは、確かに「スマート」な機械かもしれませんが、基本はやはり「腕時計」です。LINEを返したり、レストランで料理を撮影したり、QRコード決済したい場合にはスマホ本体が必要になってきます。それを踏まえて、スマートウォッチにLTE対応を求めるかどうか? 個人個人で考えてみてはいかがでしょうか。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。