トピック

カシオ G-SHOCK、ド定番から最新ヒットモデルまでまるっと紹介

カシオの「G-SHOCK」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか? “ゴツゴツしたデザインの腕時計”あるいは“昔に流行した腕時計”だろうか? 実際にはどちらも正しく、そして間違っている。

G-SHOCKは今、素材や構造の進化で“シュッとした”シンプルでコンパクトなモデルもラインナップしており、実際に人気を集めている。また出荷数はこの10年で右肩上がりのペースで伸び、大ブームだった1997年を遥かに凌ぐ規模になっているのだ。

“腕時計はいらなくなる”と言われて20年――右肩上がりのG-SHOCKが切り開く世界

本稿では、40年近い歴史の中でさまざまなモデルが登場しているG-SHOCKについて、カシオ計算機 マーケティング統轄部 時計マーケティング部 部長の上間卓氏に伺いながら、定番モデルの見分け方や最新の注目モデルを解説する。また、映画などで活躍したエピソードや、最新のカスタマイズ注文サービス「MY G-SHOCK」を提供する意図についても聞いている。

カシオ計算機 マーケティング統轄部 時計マーケティング部 部長の上間卓氏

4つの“マスターピース”とは

G-SHOCKを熱心に追いかけていない人にとって、多数あるモデルの位置づけは分かりづらいもの。カシオのWebサイトではシリーズを分けて紹介されているが、そこからは読み取りづらい、歴史的なシリーズや定番・売れ筋は、どのようなモデルだろうか。

上間氏によると、ベーシックなモデルのうち、定番・ベストセラーモデルは、5600シリーズ、6900シリーズ、110シリーズ、2100シリーズの4つがあるという。

5600シリーズ

左から、DW-5000C(1983)、DW-5600C(1987)。5600シリーズは初代モデルのデザインを継承し、現在も後継・派生モデルが展開されている

5600シリーズは、G-SHOCKの初代モデル(DW-5000C)のデザインを色濃く継承するモデル。デザインは大きく変えずに、電波ソーラー対応やフルメタル化などさまざまな派生モデルが登場している。

もはや伝説的な初代モデル、DW-5000Cの実機
1987年から海外で展開された5600シリーズ初のカラーモデルの復刻版、DW-5600Rシリーズ。2021年の10~11月に発売されるモデルだ

6900シリーズ

左からDW-6900B-9(1995)、DW-6900WS-1JF(2021)

6900シリーズは、三つ目と呼ばれる3つのサブダイヤル表示や、絵柄が浮かび上がるELバックライトが特徴。1997年頃までの第一次ブームを牽引したデジタル表示のみのモデルで、スケルトンやメタルカバードなどさまざまなモデルが展開されている。大柄で派手なモデルも多く、アメリカ市場での大ヒットを支えたモデルでもある。G-SHOCKの歴史の中では、現在はクラシックな部類に入る。

110シリーズ

左からGA-110-1A(2011)、GA-110HC-1AJF(2011)

110シリーズは、アナログ表示を取り入れた新定番モデルとして、2010年に登場。ビッグケースやサブカルチャーを取り入れたデザインで、インパクト抜群のド派手なモデルも多数ラインナップされている。

GA-110WLP-7AJR(2021)

2100シリーズ

左からGA-2100-1AJF(2019)、ミドルサイズのGMA-S2100-7AJF(2021)

2100シリーズは、2019年に発売された完全新作モデル。初代モデルのスクエア型のケースを再解釈した八角形のオクタゴンベゼルが特徴で、アナログ・デジタルのコンビネーション表示も採用することで、それぞれの歴史を融合させたというコンセプト。

薄型化やコンパクト化を実現しており、最新のカーボンコアガード構造も採用し、G-SHOCKの継承と進化を体現した新定番モデルになっている。

「これら4つは、社内ではマスターピースと呼んでいるベストセラーのシリーズです。5600や2100は比較的シンプルなデザインのラインで、6900や110はタフネスを打ち出したデザインです。強いブランドには“絶対的な定番モデル”がありますから、そうした部分はしっかりと意識して取り組んでいます」(上間氏)

新定番、“いろいろ裏切っている”2100シリーズ

最新の売れ筋は2100シリーズで、ベゼルにメタルパーツを使った派生モデル(GM-2100シリーズ)もかなりヒットとしているという。「2100シリーズは樹脂ケースのモデル(GA-2100シリーズ)を発売してから、世界中で大ヒットしています。そこにメタルパーツのモデルを加えましたが、こちらも売れています」(上間氏)

2019年に登場したGA-2100シリーズ

2100シリーズがヒットしている理由は、(デジタル表示の)5600シリーズの系譜をアナログ表示のモデルで表現したという、開発者側が提案する、過去の名作を融合させたというコンセプトがひとつ。もうひとつは、時計業界全般のトレンドである小型化や薄型化といった流行をキャッチアップできている点だ。

「2100シリーズは、ある意味では“裏切っている”G-SHOCKだと思います。G-SHOCKはゴツゴツしたデザインというイメージだと思いますし、極端に言うと、ここまでシンプルなデザインのモデルは無かった。G-SHOCKは気になるけど、ゴツゴツしたデザインはちょっと……という人に対して、シンプルでアナログのG-SHOCKなら買ってみようか、と受け入れられたのではないかと思います」(上間氏)

「これまでG-SHOCKは男性向けが基本でしたが、(2100シリーズなどは)男女関係ない形に、マーケティングとしても取り組みを変えています。男女どちらでも合うミッドサイズのモデルも出しています。提案型のプロダクトであっても、こうした社会の流れやトレンドは掴めているのではないかと思います」(上間氏)

ミドルサイズで、ステンレスのベゼルカバーを採用したGM-S2100シリーズ(2021)

フルメタルモデルも人気が拡大

近年のG-SHOCKの展開においては、メタルパーツといった素材や仕上げにもこだわった、数万円や10万円以上のモデルもラインナップの中に増えている。これはG-SHOCKの登場から時間が経ち、ユーザー層も幅広くなったことが影響している。

「現在のG-SHOCKのユーザー層は10代から50代にまで広がっています。若い世代には低価格帯のモデルを提供していますし、上の年代には高価格帯のモデルを提案して成功していると思います。例えば初代モデルをフルメタル化したGMW-B5000シリーズは、発売した2018年から世界中で売れ続けている、大ベストセラーモデルになっています」(上間氏)

最新モデルのMTG-B2000シリーズ(2021)。15万円前後で販売されるモデル
初代モデルをフルメタル化したGMW-B5000(2018)。66,000円。現在も世界中で売れ続けているという
サイバーデザインを施したGMW-B5000TVA-1JR(2021)。198,000円だ

現場で選ばれるG-SHOCK

G-SHOCKの長い歴史の中で気になるのは、映画やドラマ、あるいは“現場”で活躍したエピソードだ。

G-SHOCKが登場している映画で有名なのは「スピード」(1994年)。キアヌ・リーブス演じる主人公のジャックは、G-SHOCK(DW-5600C)を着用して活躍する。このほかにも映画「ミッション・インポッシブル」でDW-6900などが、ドラマ「24」にはDW-6600が登場している。

アメリカでは、G-SHOCKは80年代からタフネスウォッチとして浸透を始めており、映画などで用いられる背景にも、“現場の人”に選ばれてきたことが大きい。当時から警察官や消防士、軍の隊員が私物として購入し現場で使用しているという。

また、サーフィンやスノーボードといったスポーツシーンでは、それまで、とにかく腕時計が壊れるという不満が大きく、これを解消したG-SHOCKは人気を集めた。「そうしたエピソードを聞いて、マーケティングに反映させて、スポーツ向けモデルの投入といったコミュニケーションを図りました」(上間氏)

G-SHOCKを愛用する音楽アーティストも多い。古くは80年代のスティング(DW-5700C、1987年)、初期のレディー・ガガ(BABY-G BG-5602-9、2008年)をはじめ、エミネム、カニエ・ウェスト、コールドプレイ、ジャスティン・ビーバーなど、さまざまなアーティストがG-SHOCKを着けてミュージックビデオなどに登場している。

スティングが80年代に使用したDW-5700Cの復刻版、DW-5700-1JF(2001)
レディー・ガガが着用した「BABY-G」ブランドのBG-5602-9(2008)

上間氏によると、こうしたG-SHOCKの“出演”について、カシオから依頼したものはないという。映画・スピードで使われたものも、キアヌ・リーブスの私物というのは有名なエピソード。アーティストも、ファッションアイテムとして私物を着用している形だ。エミネムはG-SHOCKの大ファンで、後にコラボモデルも発売されている。

なおアメリカ市場では、タフネス性能がまず受け入れられたという土壌があるためか、現在もマッチョなタフネスモデルの人気は根強い。マッドマスターシリーズなどは毎回ヒットを記録するとのことだった。

MUDMASTER(マッドマスター)、2021年10月発売のGWG-2000シリーズ

MY G-SHOCK

MY G-SHOCK

G-SHOCKの最近の取り組みで大きな注目を集めているのは、パーツをさまざまな色でカスタマイズして注文できる「MY G-SHOCK」だ。サービスの検討を始めたのは1年半前ぐらいからとのことだが、実現までにはさまざまなハードルがあったという。

G-SHOCKは大量生産が前提の製造ラインを構築しているため、受注生産に対応する製造ラインは構築しづらいという課題があった。一方で、G-SHOCKのマーケティング施策として、ユーザーとのコミュニケーションをもっと強化するという方針を定めたことや、カスタマイズの需要を認識していたこともあって、大きく舵を切ることを決断、カスタマイズサービスにも本格的に取り組むことになった。

もっとも、ここでいうカスタマイズとは、自分だけの1本を作る、プレゼントしたくなる1本を作るというコンセプト。「カスタマイズといっても、部品を単体で売るという概念やコンセプトではありません」(上間氏)とのことで、あくまで製品の形で提供するのが基本となっている。

ちなみにバンドをサードパーティの製品に交換するユーザーカスタマイズについても、あくまで自己責任という形。特にG-SHOCKの耐衝撃性能は、バンドを含めて純正品の状態であることが前提であり、この点は留意しておく必要がある。

MY G-SHOCKは、ユーザーと直接コミュニケーションを図るサービスでもあるため、今後の展開にさまざまな可能性も秘めているという。「MY G-SHOCKを提供することで新しい需要が見えてきて、それに対応した、新しい展開を行なう可能性もあると思います。ここで売上を大きく伸ばすというより、ファンの需要や動向を見たいという意味を込めています。反響は予想より大きく、手応えは感じています」(上間氏)

カシオはG-SHOCKの今後のマーケティング施策としてコミュニティの強化を挙げている。MY G-SHOCKも、ユーザーと直接コミュニケーションを図り、関係を強化していく取り組みの一環と言えそうだ。