レビュー

スマートウォッチになった「G-SHOCK」。GSW-H1000を試す

スマートウォッチなG-SHOCK「G-SQUAD PRO GSW-H1000」を試してみた

デカい。初めてG-SHOCKを装着してみた筆者の印象は、とにかくデカい、というものだった。

そもそもデカそうだとは思っていたのだ。「G-SQUAD PRO GSW-H1000」(GSW-H1000)は、G-SHOCKとしては初めてのWear OS搭載スマートウォッチであり、バッテリーや通信モジュール、センサーなどさまざまな装備があるせいか、通常のG-SHOCKと比べても大きい部類に入るだろう。

ところが、3日もたてばそのデカさも気にならなくなってきた。これまでG-SHOCKを使ってこなかった筆者は「もっと小さい目立たないヤツでいいじゃないか」と思っていたが、それは食わず嫌いというものだったのかもしれない。人生初のG-SHOCKを体験してみて少しわかってきたことがある。

これは時計じゃない、G-SHOCKなのだ。それがたまたまスマートウォッチになっているだけだ。そんなWear OSでスマートウォッチ化されたG-SHOCK、果たしてどう便利に使えるのだろうか。

タフネスさを活かして多彩なアクティビティを詳細に記録

「G-SQUAD PRO GSW-H1000」

G-SHOCKとしては初めてGoogleのスマートウォッチ用OS「Wear OS」を搭載するGSW-H1000は、主にスポーツ用途を狙った「G-SQUAD」シリーズの最上位モデルに位置付けられている。ウォッチにしては高精細な360×360ドットのタッチ式カラー液晶ディスプレイを装備し、それを囲む立体的なベゼル、ハードかつ太めの樹脂バンドがマッシブ感を漂わせ、耐衝撃や20気圧防水という高いタフネス性能をイメージさせる。

360×360ドットのタッチパネル式カラー液晶と、インパクトのある立体的なベゼル
硬め、太めの樹脂バンド

ここにBluetooth、Wi-Fi、マイク、GPS、心拍センサー、気圧センサーなどの通信機能やセンサー類が組み込まれ、数々のスマートウォッチらしい機能を盛り込んだ。心拍の常時計測ができるのはもちろんのこと、高度や気圧の変化を画面表示し、歩数や消費カロリーといったデータはライフログ的に自動で記録していってくれる。GSW-H1000に話しかけることで、Google アシスタントによる連携済みスマートフォンの音声操作も可能だ。

右側面にはボタンが3つ
左側面にはセンサーと充電端子など
肌に密着する部分には心拍センサーがある
マイクを内蔵し、Google アシスタントを使った音声操作もOK

スポーツ向けモデルということで、記録できるアクティビティの種類は豊富。ランニング、ウォーキング、サイクリング、スイミングは当然として、カヤック、スキー・スノーボード、フィッシング、屋内アクティビティなどにも対応する。

多数の屋外・屋内アクティビティの記録に対応

アクティビティ中に表示するデータも多彩だ。たとえば屋外ランニングではGPSによる位置情報に加え、距離、消費カロリー、心拍数の推移や走行ペース、ストライド、ピッチといった細かな情報まで記録される。終了時にはそれらが統計情報として保存され、液晶ディスプレイの高精細さを活かして各種データや走行経路を表示するなどして振り返ることが可能だ。

屋外ランニング中の画面表示
終了時には記録を確認できる
走行経路の大まかな地図表示も可能
右下の「APP」ボタンを押すと、ダイヤル風のインターフェースの画面が表示され、GSW-H1000の機能(アプリ)を起動できる

自由度高くカスタマイズできる独自ウォッチフェイス

GSW-H1000の最も大きな特徴は、数あるスマートウォッチのなかでも高いカスタマイズ性を誇ること。前述の多彩な情報を好きなようにレイアウトして画面表示できるウォッチフェイス「DIGITAL」を備えているのがポイントだ。

待機時はモノクロによる省電力な簡易表示で、画面を自分に向けるとアクティブなカラー表示になるが、どちらの場合も画面レイアウトは上・中・下の3段で構成され、各段に表示する情報をユーザーが自由に変えられる。

GSW-H1000独自のウォッチフェイス「DIGITAL」では、情報を上・中・下段に分けて表示する
待機時のモノクロ表示

デフォルトは「消費カロリー・歩数・心拍数/ワールドタイム(現在地時刻)/消費カロリー(グラフ)」。だけれど、ビジネスモードな気分なら、「ワールドタイム/現在地時刻/予定」の3つを表示させておくと便利だし、運動量や体調を常に把握しておきたいなら「気圧/消費カロリー・歩数・心拍数/心拍数(グラフ)」を表示させるのもいい。

画面の上・中・下段のいずれかをタップすると、各段の表示を切り替える画面に
ビジネスユーザーっぽいレイアウト「ワールドタイム/現在地時刻/予定」
体調を把握したい人に適していそうなレイアウト「気圧/消費カロリー・歩数・心拍数/心拍数(グラフ)」

さらにアクティビティの実行時は普段とは別の画面レイアウトで表示できる。ランニングなら「心拍数(グラフ)/ラップ/距離」、サイクリング(ロードバイク)なら「距離/速度/高度とコンパス」のような組み合わせも考えられる。フィッシング用には、「気圧 ・フィッシングタイム/フィッシングカウンター/タイドグラフ」がデフォルトとなっているが、「気圧グラフ」や「日の出・日の入り時刻」などに変えるのも面白そうだ。

屋外ランニング中だと「心拍数グラフ/ラップ/距離」というレイアウトも便利
屋外サイクリングで「心拍数グラフ/速度/道路勾配」のレイアウトを使ってみたところ。停止中のため現在の速度表示は見えない
フィッシング向けのデフォルトは「気圧 ・フィッシングタイム/フィッシングカウンター/タイドグラフ」
上段を「日の出・日の入り時刻」に、下段を開始からの時間をカウントする「タイム」にしたところ

こうしたカスタマイズの自由度の高さは、まさにスマートウォッチらしさのある楽しい部分だ。ウォッチフェイスの種類ごと変えて全く異なるテイストにすることもできるけれど、GSW-H1000の充実したアクティビティ関連の機能を可能な限り活かしたいなら、G-SHOCK標準のウォッチフェイスが一番のおすすめと言える。

Wear OS搭載機共通のウォッチフェイスもあるが、GSW-H1000の機能を活かすなら独自のウォッチフェイスにしておきたい

フル活用するなら専用アプリ「G-SHOCK MOVE」

GSW-H1000はAndroidもしくはiPhoneと連携して利用するのが前提となる。Google公式の「Wear OS by Google」アプリはセットアップに必要なためインストール必須。ウォッチフェイスの切り替えやGoogle アカウントの設定、スマートフォンの通知の同期設定など、基本的なスマートフォンとの連携はこのアプリで行なうことになる。

「Wear OS by Google」アプリ。基本的な連携のために必要

より詳細なアクティビティ情報を確認したいなら、スマートウォッチのG-SHOCK専用アプリ「G-SHOCK MOVE」もインストールしておきたい。過去のアクティビティの記録をグラフィカルに表示し、どれくらいの強度で運動したのかなどを簡単にチェックできる。また、スマートフォンで撮影した動画と、その時にG-SHOCKで記録したセンサー情報などを合成して動画コンテンツにする「センサーオーバーレイ」というユニークな機能もある。

G-SHOCK専用アプリ「G-SHOCK MOVE」
過去のアクティビティの記録を詳細にチェックできる
アクティビティ中のセンサー情報を動画に重ねて表示する「センサーオーバーレイ」
動画から見せたい5秒間ほどのシーンを選び、合成表示したいセンサー情報を1つ選ぶ
最終的に15秒の動画が完成

ただ、G-SHOCK MOVEで表示できるアクティビティの記録は、時間、距離、消費カロリー、走行ペースといったデータを元にした基本的な統計情報のみなので、本格的にスポーツに取り組む人にとっては物足りないかもしれない。そういうときのために、アスリート向けのアクティビティトラッカーである「Strava」や「Google Fit」との連携機能も用意されている。より細かく分析したいユーザーや、既存のアクティビティトラッカーの記録を引き継いで管理したい場合は、このあたりの連携もしておくべきだろう。

「Strava」と「Google Fit」との連携設定が可能
「Strava」と連携すれば、もっと詳しいアクティビティ分析が可能になる

バッテリー稼働1日半は短いか?

さまざまなシーンで活躍してくれそうな多機能スマートウォッチのGSW-H1000ではあるけれど、気になるのはバッテリーもちかもしれない。スペック上は、通常の使用方法となるGPS非利用の場合で1.5日以上、Wear OSを終了してモノクロで時計とセンサーの情報のみ表示する「タイムピースモード」では約1カ月間となっている。

モノクロ表示で、各種センサー情報の更新頻度が下がる「タイムピースモード」にすれば1カ月もつ。が、Wear OSとしての機能は使えなくなる

通常使用での稼働時間が1日半というのは、おそらく多くの人にとって「短い」と感じるところだと思う。実際に使ってみたところでも、起床直後に身に付け、夕方に1時間ほどの屋内サイクリングを記録すると、夜にはバッテリー残量が55%前後となった。加えて屋外で30分ほどのランニングをした日の終わりは40~45%。このペースだと2日目の途中でバッテリー切れになるので、夜寝る前の充電は必須だ。

そもそもGSW-H1000には睡眠分析のような機能はないので、就寝中に身に付けている意味はあまりない。その大きさから考えても就寝前に外しておきたいところなので、だったらついでに充電しておけばいい。充電は専用USBケーブルを本体側面に軽く差し込むだけで、マグネット式なので脱着は容易。充電時間も約3時間と長くはない。毎日使うなら、毎晩の充電を習慣づければいいだけなのだ。

充電に使う専用USBケーブル
マグネット式で脱着は楽ちん

「お出かけ」だけじゃなく、自宅でも便利

今回、試せたのが2週間という限られた期間だったので、GSW-H1000のすべての機能をじっくり使えたわけではない。けれど、日常的に身に付けつつ、毎日の習慣になっている屋内サイクリングや、屋外のサイクリングとランニングにも連れ出して、G-SHOCKに慣れていくに従い、「なぜこんなデカい腕時計でなければいけないのか」という気持ちは、次第に薄れていった。

確かにデカいことはデカいが、サイズ感や重量感は、3日もすれば気にならなくなる。そして、次第にこれは腕時計とは別のものだと考えるようになった。「腕時計を着ける」というより「G-SHOCKを着ける」という感覚の方がより正しい気がして、他の腕時計とはまた違ったアイテムのように思うのだ。

1日の始まりに、今日はどの服を着ていこうかと悩むのと同じで、今日はどのG-SHOCKを付けようか(もしくはG-SHOCKを着けるか、付けないか)と悩むようなもの。画面のカスタマイズ性の高さも、よりファッション的な要素を濃くしていると言えるだろう。かといって、ハイブランドの腕時計のような気取った雰囲気はないから気軽に持ち出せる。これだけゴツい見栄えなのに、ラフな服装でもフォーマルな格好でも、思っていたほど違和感がないのは不思議でもある……。

お出かけに連れ出して、ハードな使い方をしてもいい

さらにはスマートウォッチ化したことで、身に付けているだけで1日の生活をしっかりサポートしてくれる。スマートフォンに届いた通知をG-SHOCKで見逃すことなくチェックでき、心拍数や消費カロリー、歩数の表示で健康を意識しながら過ごせて、運動は細かなデータとして残せる。「お出かけ用ファッションアイテム」として考えれば、使う前に充電しておくのは当たり前のこと。洋服だって着る前に洗濯しておくわけで。

住んでいる地域の天気情報がわかる
スマートフォンに届いた通知もチェック可能

外出自粛気味の今、「お出かけ用」のGSW-H1000が活躍する機会は少ないのでは、と思うかもしれない。けれど、自宅にいるときでも便利さを実感できるのはスマートウォッチならではだ。スマートフォンの通知を手元で見られることもそうだけれど、スマートフォン上で再生しているメディアや、テレビなどにキャストしているメディアを手元で制御できたり、Google アシスタントによるスマートフォンの音声操作ができたりと、Wear OSであるメリットがいろいろな場面で活きる。

自宅ではスマートフォンやテレビで流している動画や音楽の再生・停止などを手元で操作可能

スポーツ向けのスマートウォッチとしてさらなる進化に期待

そうは言っても、気になるところもある。1つはアクティビティ周りの使い勝手がまだまだ練られていないように見受けられるところ。たとえばアクティビティの終了がボタン(または画面)の長押しなのは、運動直後で疲労している状態だと回りくどく感じる。

屋内アクティビティでは、データ保存を完了して通常画面に戻るまでに3度4度とボタンを押す必要があるのもつらい。これらはタッチパネルの誤操作などを考えてのことかもしれないが、ボタン操作のみに絞って簡略化してもいいように思う。

アクティビティ中に右上の「START」ボタンを押すと終了確認画面に
ボタンか画面の長押しで終了する
屋内アクティビティでは距離の入力が促される
続いて他のアクティビティを続けるかどうかの確認
記録を履歴に残すかどうかの確認。屋外アクティビティだと終了確認画面の次がこの画面になるため、手間はない
リザルト画面でさらにボタンを押してようやく通常画面に戻れる

また、筆者の環境では、複数のアクティビティがGSW-H1000本体に記録されているときに「G-SHOCK MOVE」アプリ側で同期の操作をした場合、一度に取り込まれるのは(同期されていないなかで最も古い)アクティビティ1件きり。最新のものまで取り込むためには何度も同じ同期操作をしなければならなかった。本体でWi-Fiが利用できるのであれば、アクティビティのクラウド同期を本体のみでできればいいと感じる。

「G-SHOCK MOVE」アプリで一度に同期できるのはアクティビティ1つのみ。データが溜まっているときは手間がかかる

GSW-H1000はスポーツ向けのモデルだけに、コアとも言えるアクティビティ関連の機能の細かな使い勝手の部分で足を引っ張ってしまってはもったいない。ユーザーがGSW-H1000でスポーツをより楽しめるように、これからもどんどん進化していってほしいところだ。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。