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ソフトバンクとOpenAI、大企業AI「クリスタル」を日本先行導入 合弁会社設立
2025年2月3日 15:38
ソフトバンクグループとOpenAIは3日、合弁会社SB OpenAI Japanの設立を発表した。大企業における一貫したAI導入を支援し、その企業固有の課題解決を図るソリューションを独占的に提供する。東京で日本の大企業経営者を集め、ソフトバンクグループ孫正義CEOとOpenAIのサム・アルトマンCEOが、企業におけるAI導入の価値と、AGI、AIエージェントなどについて説明した。
新会社が目指すのは、大企業の本格AI導入。会場には日本の上場企業の多くの経営者が集まり、「日本の株式市場の時価総額の半分」(ソフトバンク宮川社長)を集め、AI導入をアピールした。
孫氏は、「AIの革命は企業、とりわけ大企業から始まる」と宣言。「AGI(汎用人工知能)のためには、ふんだんに良質で、ある程度限られた世界のデータがあるのが材料になる。知恵を出すためには、深くて、広くて、リアルタイムで、企業特有の個別データがあることが重要。そのデータから色々なトレーニングや推論ができる。だから最初にAGIが実現されるのは大企業」と宣言。そのAIを企業に導入する会社をSB OpenAI Japanと位置づける。
導入するAIについて孫氏は水晶玉を手に取りながら「クリスタル」と表現。SB OpenAI Japanでは、対象企業専用にカスタマイズされた最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」を導入していくとする。クリスタル・インテリジェンスは、企業の基幹システム等のデータを含めて、あらゆるものをAIに取り込んだその企業固有の知識を「クリスタル」と呼び、長期記憶とAIの推論能力により経営改善していくとする。また、エージェントが人に変わって仕事をこなしていく仕組みも構築していく。
例えば、企業が30年前に構築した基幹システムのソースコードなどは保守も困難になっているが、そうした資産をAIを用いて保守・改善可能としていく。
クリスタル・インテリジェンスの詳細は説明していないが、OpenAIのo1シリーズなどの推論モデルを活用し、ユーザーの指示したタスクを自律して実行するAI エージェントを構築。AIエージェントは、財務関連の資料作成や文書の作成、顧客のお問い合わせ管理などの日常タスクを自動化し、ユーザー企業はクリエイティビティや戦略的な意思決定など、他の業務に時間を費やせるようにする。
まずはソフトバンクグループが“クリスタル”を導入し、ソフトバンクやLINEヤフー、ZOZOなどグループ各社に導入する。その費用は1年間で4,500億円で、OpenAIに支払われる。
ソフトバンクにおいては、クリスタル・インテリジェンスを活用して1億以上のタスクを自動。追加学習やファインチューニングを行なう安全な環境を構築し、エコシステム内で業務効率を向上させるという。このデータ追加学習やファインチューニング環境などをソフトバンクとSB OpenAI Japanが協力して構築していく。
応用例としては、コールセンターにおけるやり取りや、従業員の業務メール、製品の仕様書などをすべてクリスタルで取り込む。社員の退職などでも知識が途切れることのない、「長期記憶」も実現できるとする。
孫氏は、「OpenAIは大変な設備投資で赤字だとか言われるけど、たった一社の契約で4,500億入ります。10社で4.5兆。世界にソフトバンクグループ規模の会社は100社あるので、各社がクリスタルを入れると、年間3B(30億)ドル、45兆円になる。十分な利益を生む。その1社目となるのがソフトバンクグループ」と語った。
クリスタル・インテリジェンスが学習したデータは、企業固有のものとなり、モデルの学習などには使われず、他社で活用することはない。「企業ごとに別々のクリスタル」(孫氏)を構築していく形だ。
SB OpenAI Japanには、ソフトバンクグループからセールスエンジニアが1,000名規模で移籍。OpenAIからもスタッフが参加予定とする。クリスタル・インテリジェンスの開発機能は米国となるが、トレーニングやファインチューニングのインフラは日本に設置する。(米国でトランプ大統領が発表した78兆円規模の投資)「Project Stargateの延長として、Stargate Japan的に設置する」とした。孫氏は「これからぜひ楽しみにしてほしい。必ず大きな、これからの100年、200年、300年、人類の未来に影響を与えるプロジェクトになる」と強調した。
友人のマスク氏に言及。スターゲイトは成功させる
また、OpenAIのサム・アルトマンCEOも登壇し、新たなdeep researchやエージェント対応について言及した。deep resarchは、Webなどのオンライン情報から詳細な調査レポートを作成する機能「deep research」で、3日からChatGPT Pro(月額200ドル)ユーザー向けに提供開始され、今後Plus(月額)/TeamやEnterpriseユーザー向けにも展開予定。
deep researchのデモでは、競合調査など大企業は特に活用のシーンが大きいことや素早く情報を得たい場合のChatGPTに対し、より深く、正確な情報を得るための手法としてdeep researchが紹介された。
また、ArmのRene Haas CEOも登壇し、クラウド側だけでなく、エッジ側でのAI処理の重要性を強調。すべてのコンピュータプラットフォームにAIをもたらせるArmの強みを説明した。
孫正義氏とサム・アルトマン氏による対談も実施。Stargateにおける過剰投資の声には、「GPUは多ければ多いほどいい」という孫氏の意見にアルトマン氏が強く同意。また、イーロン・マスク氏が「ソフトバンクには(プロジェクトを担う)資金がない」と指摘した件について、孫氏は「我々の友人であるマスク氏(アルトマン氏と対立関係にある)は、ソフトバンクにはカネがない言ったと。だが、我々はソフト“バンク”。バンク(銀行)だから絶対に成功させる」と笑いながら語った。
また、両者は中国のDeepSeekにも言及したほか、適切なAI規制についても「必要」と同意するなど、AI推進で協力していく姿勢を見せた。