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ソフトバンク決算で増収増益 料金見直しは「限界」 AIは加速
2025年5月8日 19:32
ソフトバンクは5月8日、2025年3月期通期決算を発表した。売上高は前年比8%増の6兆5,443億円、営業利益は13%増の9,890億円、純利益は8%増の5,261億円。全セグメントで増収増益を記録し、営業利益は中期経営計画の目標を1年前倒しで達成した。
通信料金の据え置きは「限界」
主力のコンシューマ事業では、モバイル売上高は1兆5,745億円、営業利益は前年比7%増の5,304億円。スマートフォン契約数は年間104万件の純増となり、3年連続での増収増益を目指す。5G対応の端末割合が76%まで上昇しているほか、年を重ねるごとに約2倍ずつにモバイルネットワークのトラフィックが増加している点について言及。今後も品質劣化がないよう、積極的に基地局の増設を進めるとしている。
一方で、料金改定の可能性について、宮川潤一社長は「インフレが進むなか、通信料金の据え置きには限界がある」と言及。「これまで値下げが続いてきた業界で、コスト削減を行ない企業努力を続けてきたが限界に達しつつある。通信業界全体でデフレ構造を抜け出す必要がある」として、値上げの必要性を明確に示した。ただし、タイミングや具体策については、ユーザーが納得できる付加価値を伴う形でなければ意味がないとし、慎重に検討する姿勢を述べた。
エンタープライズは売上1兆円が視野に
エンタープライズ事業の売上高は、前年比10.6%増の9,224億円。セグメント利益も前期比34億円増の1,703億円となり、エンタープライズ事業の売上高だけで1兆円が見えてきたとし、今年度(2026年3月期)も2桁成長を目指す方針としている。法人顧客向けには、生成AIを活用した業務支援ツール「X-Boost(クロスブースト)」など独自サービスの展開も進んでいる。
自社開発LLM「Sarashina」を秋に商用化へ
AI分野では、大阪・堺市でのAIデータセンター建設が進行中。自社開発の国産LLM「Sarashina mini」は2025年秋に商用化を予定する。今後は、AI関連投資として年間1,000億円規模の研究開発費を計上し、ソフトウェア開発を含めた技術基盤の構築を進める。AI分野での投資は、現行中期経営計画の目標達成と、次期計画期間の事業成長のための先行投資を両立する方針。
PayPayは黒字定着、IPOに向け前進
ファイナンス事業はPayPayを中核に展開。GMV(流通取引総額)は前年比23%増の15.4兆円となり、PayPay連結のEBITDAは456億円の黒字となった。4月にはPayPay銀行と証券を傘下に収め、グループ内の金融再編を完了した。PayPayのIPOについては「成長の契機になる」とし、上場準備を開始する。