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ヤフーとSBIグループ、証券・銀行など金融分野で提携。ID活用や住宅ローン

Zフィナンシャル 谷田社長、Zホールディングス川邊社長、SBIホールディングス高村副社長、SBIリクイディティ・マーケット尾崎社長

SBIホールディングスと、ヤフーから商号変更したZホールディングス(ZHD)は、金融サービス事業において業務提携する。SBI証券とヤフーが協力し、ヤフーファイナンスアプリからの証券口座開設や取引機能の実現を目指すほか、FX事業や銀行事業においても協力。さらに、Yahoo! JAPAN IDでSBIグループの金融サービスを利用できるシングル・サインオンの実現に向け、協議を進める。

ヤフーやZHD傘下の金融事業やサービスと、SBIホールディングス傘下の金融サービスが協力。ヤフーの6,743万の月間利用者と、SBIグループの2,500万の顧客基盤を連携させ、相互の金融サービス強化を図る。

証券事業においては、SBI証券とヤフーが協力。ヤフーファイナンスのアプリやWebサイトからSBI証券の証券口座開設や取引機能連携などを実現するための検討を開始する。また、ヤフーファイナンスのポートフォリオ機能を使った、利便性向上なども検討していく。売買取引連携は2020年秋頃提供開始予定。

ヤフーファイナンス アプリから株式売買
シングルサインオンに対応

FX事業においては、SBIリクイディティ・マーケット(SBILM)が、ワイジェイFXのカバー取引先に加わる。取引フロー/ポジション情報を共有することで、両社の流動性とデータ分析ノウハウを活かしたフロー管理の最適化を図る。これによりSBILMでは、規模のメリットを生かした収益性向上を、YJFXでは流動性の供給増によるカバー取引の安定性向上を見込む。

銀行事業は住信SBIネット銀行(SSNB)と、ジャパンネット銀行が協業。第1弾として、ジャパンネット銀行を通じてSSNBの扱う住宅ローン商品「フラット35」の取り扱いを行なう。

また、Yahoo! JAPAN IDをSBIグループの金融サービスで利用可能とする「シングル・サインオン」の実現に向け連携。協議を続けていく。

ネットの力で金融を身近に。データ利用はユーザー同意が大前提

ヤフーは、10月1日付けでZホールディングス(ZHD)に社名変更。ZHDはグループ全体の経営機能を担い、子会社のヤフーがメディアやコマースなどの事業を担当、Zフィナンシャルがジャパンネット銀行などの金融系事業を担う体制となっている。

ZHDの川邊健太郎社長は、「'90年代のインターネットは、ほんの一部のマニアックな人のものだった。しかし、いまは水道・電気に並ぶインフラとなった。ネットが“当たり前”になったが、まだ成長の余地はあり、特に金融・Fintechは間違いなく伸びていく。ヤフーでも、メディア、コマース、データにならぶ成長のテーマとして、Fintechを位置付けている。ネットの力で金融をもっと手軽にもっと身近にし、よりよい金融サービスを目指す」と提携の意図を語った。

Zホールディングス 川邊健太郎社長

SBIホールディングスの高村正人副社長は、同グループの強みを強調。SBI証券は480万口座を有し、口座数・売買代金ともにネット証券でナンバーワンであること、さらに証券全体でも「野村を追い抜くのも時間の問題」と言及(野村證券の口座数は534万)し、SBI証券の成長を説明。収益性においても業界第2位となった。また、住信SBIネット銀行も、ネット銀行では後発ながら預金残高1位となり、特に住宅ローンに強い点が特徴とする。

SBIホールディングス 高村正人副社長
「野村(証券)を追い抜くのも時間の問題」

また、FXについては、SBI証券、SBI FXトレード、住信SBIネット銀行の3社で展開しているが、集約すると口座数、残高ともに1位となる。さらに、AIやブロックチェーンなどの新技術にもベンチャー投資を中心に、グループ内に取り込んでいる。

高村副社長は、SBIグループの事業を「日本最大級の金融生態系」と紹介。一方で、「現状に満足していない。最近では金融以外の会社の参入も増えている。生態系の拡大には、ビッグデータをさらに大きくしていく必要がある。だから、Zホールディングス/ヤフーに提携を打診した」と、SBIからアプローチした提携であると明かした。また、若年層の拡大なども今回の提携の意図の一つという。

SBIグループの金融生態系

両グループの金融事業では、競争する部分がある。高村副社長は、「証券は競合しない(ヤフーグループにサービスがない)。FXも潤沢な流動性を共有してユーザーへの便益を提供するもので、ここも競合ではない。銀行は競合する部分はたしかにある。預金や住宅ローンなどそれぞれが持つ従来業務では切磋琢磨するが、お互い持っていない部分で補間できる。そこを機能として提供していく」と説明した。

なお、ヤフー/ZHDでの証券事業参入は「検討はしたが、現時点ではない」という。「これから個別銘柄を買う人が大きく増えるか? それともAI投資信託のようなものが増えるのか? 増えるのは後者のAIだと考えている。前者については国内市場の勝負はSBIに決しつつある。また、ヤフーファイナンスの利用者の大半はすでに証券口座を持っている。であれば、そちらを便利に使えるようにしたほうがいい」(川邊社長)。

Zファイナンスの谷田社長は、「ヤフーファイナンスは、2,000万と言われる国内投資人口の1,500万人に使われている。これまでは、メディアとして“情報”を提供してきた。これを“アクション”につなげて、投資人口をさらに増やしていく」と語った。

なお、ヤフーでは「データ」を使った事業を強化しているが、今回の協業によるデータ利活用については、「まだ具体的な話にはなっていない。いずれにしろ、データの利活用には、プライバシーを尊重し、ユーザーの同意を得ることが大原則。展開の中で考えうるのはヤフーファイナンスとSBI証券であれば、『どんな株式に興味をもって検索しているか』は把握できていたが、『売買』は把握できなかった。今後できるようになった場合は、同意を得た上で、投資信託商品への応用やマーケティングでの利用などは考えうる」(川邊社長)とした。