お金の教室

第2回

「オルカン」って何? 徹底比較で“人気だから選ぶ”を脱却

NISAでは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」・通称“オルカン”をはじめとした全世界株式インデックスファンドがとても人気ですが、「全世界株式インデックス」と名乗る投資信託は実はたくさんあります。その中でどれが良いのかを見ていきます。すでに全世界株式インデックスファンドに投資している方も、1年に1回くらいは確認しておいた方が良い内容です。

全世界株式インデックスファンドの概要、全世界株式インデックスファンド比較、まとめの順で解説します。

全世界株式インデックスファンドの概要

NISAで人気の全世界株式インデックスファンドですが、そもそも「全世界株式」とは、先進国と新興国の株式に投資信託1本で投資できる、とても便利な投資信託です。世界の経済成長の恩恵を受けられることが人気のポイントだと思います。

また、世界を牽引する国や企業が変わっても大丈夫、という考え方も重要です。今はアメリカが世界経済を牽引していると思いますが、今後新興国が伸びてきたとしても、投資先としてすでに含まれているため、その比率が自動的に高くなっていきます。世界が変わっていっても投資対象に含まれているので安心できる、これが全世界株式インデックスファンドの特徴です。

ちなみに「インデックス」とは、日本語でいうと「指数」です。指数とは、株式市場を幅広く投資対象として示す指標のことです。例えば日経平均は、日本を代表する225社の株価の平均を表しています。

全世界株式インデックスファンドには、代表的に2つの指数がありますので、次に見ていきます。

2種類の全世界株式インデックス

全世界株式の指数は大きく2つあります。「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」と「FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス」です。MSCIはMSCI社が算出、FTSEはFTSE社が算出しています。

MSCIの「オール・カントリー」は「すべての国」という意味で、先進国だけでなく新興国も含まれる、ということを示しています。

一方、FTSEの「グローバル・オールキャップ」は、「世界(グローバル)」かつ「時価総額の規模すべて(オールキャップ)」という意味です。キャップはキャピタライゼーション、つまり時価総額のことです。時価総額が大きい企業も小さい企業も幅広く投資対象にする指数、ということが名前に込められています。

投資対象国はどちらも先進国+新興国です。投資対象銘柄はMSCI(ACWI)が大型株・中型株、FTSE(グローバル・オールキャップ)が大型株・中型株・小型株と、小型株が含まれます。

この違いにより、構成銘柄数も変わります。MSCIは約2,277銘柄、FTSEは約9,946銘柄で、小型株が含まれる分だけ大きく増えます。

また、どちらも時価総額加重型です。時価総額が大きい会社ほど比率が高くなり、例えばNVIDIAやAppleのような巨大企業には多く投資されます。一方で小型株は比率が小さくなります。

この2つの指数は、金額ベースで約86%は重なっています。残り約14%が、小型株部分の違いです。

国別構成比のトップ10を見ると、両方とも最も多いのはアメリカです。MSCIが約62%、FTSEが約59.6%で、MSCIの方がアメリカ比率がやや高いです。日本はMSCIが約4.8%、FTSEが約5.3%で、FTSEの方が日本比率がやや高いです。それ以外の国は差が小さく、基本的には大きくは変わらないと考えてよいと思います。

次に、過去のリターンの違いを見ていきます。ここではドル建てのリターンを年率換算して比較します。

  • 1年:同じ
  • 2年:MSCIが0.5%高い
  • 3年:MSCIが0.4%高い
  • 5年:MSCIが0.2%高い
  • 10年:MSCIが0.1%高い

過去10年間で見ると、大型株のパフォーマンスが良かったこともあり、MSCIの方が若干高いですが、ほとんど変わらないと言えます。小型株が入っても比率が小さいため、指数全体へのインパクトは大きく出ていない、というのが過去10年の値動きです。

全世界株式インデックスファンド徹底比較

ここから、全世界株式インデックスファンドを徹底比較していきます。

まず、NISAつみたて投資枠で購入できるMSCI(ACWI)連動ファンドは全部で20本あります。

次に、FTSEグローバル・オールキャップ連動ファンドは4本です。

この中からどれを選ぶべきかを考えるために、足切り条件を設けます。


    足切り条件
    1.MSCI(ACWI)とFTSE(グローバル・オールキャップ)に分けて比較する
    2.「除く日本」「除く米国」など、投資対象が変わるものは除外する
    3.純資産総額100億円以上(規模が小さすぎると繰上償還の可能性が高くなるため)

この条件で絞ると、MSCI(ACWI)連動ファンドで選ばれたのは下の表にある8本になります。

この表では信託報酬が低い順に並べていますが、特に低いのは次の3本です。

  • 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックスファンド:0.051%
  • はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー):0.0525%
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):0.0525%

純資産総額を見ると、以下の通りです。

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):9兆4,424億円
  • 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックスファンド:6,406億円
  • はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー):1,187億円

いずれも十分な規模です。

次に「総経費率(実質コスト)」を見ます。信託報酬以外にも、保有中にかかるその他費用があり、それを含めたものが総経費率で、年1回の運用報告書で確認できます。

  • 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックスファンド:0.08%
  • はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー):0.07%
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):0.08%

差は0.01%程度なので、ほとんど誤差の範囲と考えてよいです。

さらに、指数とどれだけ連動しているか(乖離)も確認します。こちらも運用報告書で確認できます。基本的にプラスにもマイナスにも大きく振れていないことが重要です。

  • 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックスファンド:0.0%(非常に優秀)
  • はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー):-0.4%
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):+0.2%

本来は0%が理想ですが、1%以内であれば許容範囲です。結論としては、この3本はどれを選んでも問題ないと思います。購入できる金融機関が異なる場合があるので、ご自身のNISA口座がある金融機関で買えるかどうかを確認して投資するのが良いでしょう。

続いて、FTSE(グローバル・オールキャップ)連動ファンドを見てみましょう。絞り込み後は3本です(「除く米国」があったため除外)。

同様に信託報酬を比較すると以下のようになります。

  • SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド:0.058%
  • SBI・全世界株式インデックス・ファンド:0.062%
  • 楽天・全世界株式インデックス・ファンド:0.12%

純資産総額は、楽天が最も大きく約7,733億円、SBIの2つも数百億円以上の規模です。

ここで注意点があります。これらの投資信託はアメリカのETFに投資する形になっているため、ETF側でも信託報酬がかかります。そのため、実質コスト(総経費率)は信託報酬より高くなります。

  • SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド:0.14%
  • SBI・全世界株式インデックス・ファンド:0.11%
  • 楽天・全世界株式インデックス・ファンド:0.21%

実質コストだけ見るとSBIの0.11%が良さそうに見えますが、最後に指数との乖離(リターンの差)も確認します。

  • SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド:-0.8%
  • SBI・全世界株式インデックス・ファンド:-1.4%
  • 楽天・全世界株式インデックス・ファンド:-0.4%

1%以上の乖離は大きく、さらに中身を見るとFTSEグローバル・オールキャップと完全に連動するか微妙な投資対象が含まれている点も気になります。よって結論としておすすめは、SBI・V ・全世界株式インデックス・ファンドです。

結論:全世界株式インデックスファンドの選び方

今回は「全世界株式インデックスファンド」を複数の視点から比較してみました。まとめると以下の通りです。

  • MSCI(ACWI)とFTSE(グローバル・オールキャップ)に分けて考える
  • 「除く日本」「除く米国」などは比較から外す
  • 純資産総額100億円以上で足切りする
  • そのうえで、なるべく信託報酬が低いものを選ぶ
  • さらに、総経費率と指数との乖離が1%未満かを確認する
  • 総経費率の差が0.02%以内なら、ほとんど誤差と考えてよい
  • 年に1回は内容を確認しておくと良い

これからという方も、すでに投資を始めている方も、ぜひ一度確認してみてください。

塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル

近著「私が投資したNISA・iDeCoのお金、このままで大丈夫?」

塚本 俊太郎

外資系運用会社で20年以上勤務したのち、金融庁の金融教育担当として高校家庭科での金融経済教育指導教材や小学生向け『うんこお金ドリル』の作成を担当。現在は金融教育家として、金融リテラシーや資産形成について講演等を行う。著書に、『50代でも間に合う!オトナの“金育”』、『子どもに伝えたいお金の話 金融教育のいまを聞く』、『サクッとわかるビジネス教養 金融学』など。また、NHK Eテレ「趣味どきっ!今日から楽しむ“金育”」(2023年3月と2024年1月計8回)の講師をつとめた。X(塚本俊太郎X金融リテラシー)にて、毎週土曜朝7時より「塚本俊太郎のゼロからのお金の学校」を音声ライブ配信している(Voicy、Podcastにもリプレイを配信)。YouTube「塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル」でも資産形成について発信している。近著に『私が投資したNISA・iDeCoのお金、このままで大丈夫?』など。X : @shuntarotsu/YouTube : @FinancialLiteracyChannel