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ヤフーは“データ”で成長する。ビッグデータを企業間開放する新事業

ヤフーは13日、自社のビッグデータと外部の企業・自治体などが保有するデータを掛け合わせ、消費者の潜在ニーズ分析や課題解決につなげようという「データソリューション」事業を発表した。10月に正式スタートする。5月には同社の紀尾井町オフィスにサービス体験拠点を設け、8月にはベータ版サービスを公開の予定。

ヤフー社内に蓄積したデータを、外部企業でも

今回発表した新事業は、ヤフーが2018年2月に発表した「データフォレスト」構想に基づいている。同社は検索サービスやEC事業を通じて、ユーザーの行動に関するデータを膨大に保有しており、そのデータを元に、自社サービスの改善を日々行なっている。

ヤフー 代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏

しかし、いくら有効なデータであっても、裏を返せばヤフー社内だけでの活用にとどまっているとも言える。また、ヤフー以外の企業も当然、業務を通じて様々なデータを蓄積している。これらのデータを、顧客のプライバシーなどに配慮しながら相互活用し、顧客ニーズの分析であったり、社会課題の解決に繋げようというのがデータフォレスト構想である。

構想の発表に際しては、実証実験への参画団体を広く募集。官公庁や民間企業など100を超える組織から問い合わせがあった。また、実際に実証実験へ至ったケースは約20件に上り、商品開発・価格最適化・需要予測などの取り組みが行なわれたという。この実証実験のフェーズが、10月に正式サービスへと移行する格好だ。

ヤフーのビッグデータを社外とも連携させていく
実証実験の開始から1年。さまざまな企業と協力を進めている

13日の発表会には、ヤフー 代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏が登壇した。川邊氏は1年前の新社長就任にあたって、ヤフーをデータドリブン型の企業へ変革させると決意表明するなど、データ活用を成長戦略の柱の1つに置いている。壇上で川邊氏は「ヤフーに蓄積されているデータを自社のサービス改善だけに役立てているのはもったいない。各所のデータを掛け合わせて、日本企業の成長に繋げていくのがデータフォレスト構想だ」と力説する。

事業化にむけたサービス開発は今まさに進められており、10月の正式スタート時には「生活者の興味関心の可視化」「エリア特性・人流の可視化」「レコメンドエンジン」の3種の機能を用意する計画。また、2019年度内に国内100社以上の導入を目指すとしている。

ヤフー自身のビジネスとしても、データソリューション事業は今後の成長に関わる重要なファクターだ。eコマース、フィンテック、総合マーケティングソリューション(広告など)はヤフーが元々得意とするところだが、データソリューションはこれらと異なる新領域。川邊氏は「データフォレスト構想を推し進め、日本全体をデータの力で活性化させていきたい」とアピールした。

新婚家庭のレシピ検索は、時間とともに品目から材料に。実証実験成果

ビッグデータの有効性は、ヤフー社内の施策でも着実に示されつつある。ヤフオクにおける偽物検知精度は3.1倍に向上。Yahoo!トラベルにおいては、それまでサービス単独で行っていた広告メールの配信を、ウェブ検索サービスやYahoo!ショッピングの利用動向も踏まえた内容に変更したところ、成約率が5.8倍となった。

この1年での実証実験の結果も、説明会では一部披露された。江崎グリコの例では、女性ユーザーのダイエットへの関心を検索動向から分析した。すると、ある特定の栄養素(具体名は非公表)について検索したことがある層は「糖質」「カロリー」「おから」などのトピックに強い関心を示していた。対して、その栄養素名を検索したことがない一般女性層は「肉」「作り方」「簡単」などへの関心が高く、真逆の傾向であることが分かった。

江崎グリコの宮木康有氏(執行役員 マーケティング本部 商品開発研究所長)

セブン&アイ・ホールディングスの例も興味深い。新婚家庭ではレシピ検索が増える傾向にあるというが、その検索ワードは当初の「ハンバーグ レシピ」「カレー レシピ」などが中心だったところから、時間の経過とともに「キャベツ レシピ」「じゃがいも レシピ」のようなものに主流が変わっていく。つまり、何を食べたいのかよりも、今手元にある食材をどう料理すればいいのかに困っていると類推される訳だ。他にも、忘年会に着ていく服に悩んでいたり、大晦日当日になると「鍋」「エビチリ」など、正月料理とは直接関係ない料理の検索が増えることも分かった。

セブン&アイ・ホールディングスの清水健氏(執行役員 デジタル戦略部シニアオフィサー)

神戸市では、三宮駅周辺の再開発にともなって、来訪客の動向を分析した。市外から訪れる客の居住地を神戸市以東・以西で比較すると、多いのは西側で、特に瀬戸内地方のユーザーが多かった。このほか、同駅利用者が最初に訪れる市内エリアなどの分析もできたという。

神戸市 企画調整局の長井伸晃氏(政策企画部 産学連携課 担当係長)

福岡市では、市内の公共交通機関利用に関する書面アンケートの結果を、ヤフー利用者データと比較。アンケート結果とヤフー推計値が非常に近似している傾向が確認され、事業評価などに役立てることができたとしている。

福岡市 港湾空港局の本村和也氏(アイランドシティ事業部 計画調整課 みなと基盤係長)

ユーザー動向を詳細に分析可能、プライバシーにも配慮

新事業の概要については、ヤフーの佐々木潔氏(執行役員 チーフデータオフィサー 兼 メディアカンパニープラットフォーム統括本部長)が解説した。

ヤフーの佐々木潔氏(執行役員 チーフデータオフィサー 兼 メディアカンパニープラットフォーム統括本部長)

ヤフーの各種サービスは、日本のインターネット利用者の間で極めて普及しており、その利用傾向は当然、国内ユーザーの実態が正確に表出したものだと考えられる。データフォレスト構想の各サービスも、その強みを背景に、検索状況や位置情報などの利用データ、性別・年代などの属性データ、さらには興味・関心までを幅広く、かつ高度に分析できるとした。

また、ヤフーのビッグデータに対し、連携するパートナー企業がそれぞれ保有する会員データベースなども連携させられる点も、新サービスの大きな魅力だと佐々木氏は強調する。

ユーザーの行動や興味を深掘りできる
位置情報との連携も可能

個人ユーザーから見た場合、気になるのはセキュリティやプライバシーだ。佐々木氏は「ヤフー全社ですでに重視しているが、データフォレスト構想においても、当然配慮していく」と述べ、データ利用を望まない場合、オプトアウトできるような制度も設けるとした。

また、記者説明会後の質疑応答においても、川邊氏がセキュリティへの懸念に対して言及。法律や利用規約の遵守は当然として、「(セキュリティに対する)社会通念は今急激に変化している。その通念に反してまで無理に事業を行なうつもりはない」との姿勢を示した。

プライバシーへの取り組み