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万博の東ゲート混雑問題解消? 西ゲートへの新ルートを体験

地下鉄夢洲駅。出てすぐ万博・東ゲート

「並ばない万博」だったはずの大阪・関西万博。Osaka Metro夢洲駅との接続が便利な「東ゲート」だけが混み合って入場待ち、西ゲートはガラガラ……こういった状況が続いたこともあり、東ゲートから西ゲートへの徒歩ルートが、6月16日から通行可能となった。

徒歩ルートは6月17日現在で「西ゲート入場のチケット所持者」「8時30分から12時まで」と利用条件は限定されているものの、東ゲートが度を越えて混み合っている際に「予約を西ゲートに取り直して、徒歩で移動しよう」といった具合に、混雑を回避できる。

また、6月15日からはシャトルバスの新ルートとして、Osaka Metro南港ポートタウン線 トレードセンター前駅~西ゲート間が開業した。1日約20往復(会場行き20本、トレードセンター前行き17本)とそれなりに本数も多く、ポートタウン線の沿線から西ゲートへの新ルートとして期待がかかる。

トレードセンター前駅(アジア太平洋トレードセンター)に到着する西ゲート行きシャトルバス

新しい徒歩ルートおよびシャトルバスは、「並ばない万博」なのに混み合って待ち時間が長い東ゲートを回避し、西ゲートに利用者を分散させるための施策でもある。実際に体験してみると、課題は相当にあるものの、徒歩は「今までじっくり見えなかった景色」、シャトルバスは「快適座席+車窓」と、利用価値とはまた違った楽しみ方も見えてきた。

これから行かれる方向けに、移動の際の注意点にも触れていく。さっそく現地で「新・徒歩ルート」「新・シャトルバス」を体験してみよう。

東→西ゲート徒歩は熱中症対策必須も「万博のウラ側」が楽しい

6月16日現在、徒歩移動で注意すべき点は、「夢洲駅から徒歩移動への案内が、ほぼ皆目なかった」こと。ルートの分岐点は夢洲駅のすぐ裏手にあるので、「東ゲートが混んでいる、なら西ゲートに移動しよう」と思い立っても、場内をかなり迂回して、いったん駅に戻る必要がある。

徒歩ルートの詳細(大阪万博公式ホームページより)
東ゲート行き通路(右)と、西ゲート行き通路の分岐点(左)

利用できるのが「西ゲート入場のチケット所持者」であるため、必要に応じて予約を取り直したうえで、徒歩移動ルートに入ってみよう。

約1.6kmのルートのほとんどは道幅2~3mといったところ。広い箇所も歩道中央部に障害物があり、あまり歩きやすいわけではない。また途中には自動販売機・トイレ・給水などは一切ない……。一般開放する予定がなかったエリアを歩道化したこともあり、あまり贅沢は言えない。

歩道でもっとも広い部分は3m程度。途中に障害がある

ただ、徒歩の道中では、ふだん滅多に見ない警察車両やトラック、おびただしい数のシャトルバスなどを眺めることができる。少し早い時間だと、会場内の飲食店に食材を配達する「スジャータ」、清掃や足ふきマットを管理する「ユニマット」などの業務用車両が、無数に行き交っているのだとか。

さらに、万博会場内の外周バス「eMover」走行をフェンス越しの至近距離で眺めたり、「大阪IR」(カジノを含む複合施設)建設現場や、施工者などが記された建設計画図などを観察したり。徒歩距離は足早な方だと30分弱で通り抜けてしまうが、万博運営のウラ側を覗き見たような気分が味わえる。

陸橋を降りてきた警備車両
各方面からのシャトルバスも頻繁に走行する。写真左側は「大阪IR」建設現場
いちばん通路が狭くなった部分。関係者用の通路でもあり、警察犬が会場に向かっていた

ただし、アスファルトからの熱気と排気ガスは相当なので、これから歩かれる方は熱中症対策が必須だ。

東ゲートでの荷物検査も開幕当初よりはスムーズになっているため、炎天下を1.6kmも歩かずとも、東ゲート前で行列を待っている方が良いかもしれない。そこは、万博公式ホームページでの混雑状況の予想や、夢洲駅を出た瞬間の「うわっ、混んでる!」といった状況判断で、予約を西ゲートで取り直して徒歩移動するのが良いだろう。

筆者が足を運んだ際には、西ゲートは東ゲートより明らかに空いていた

新・シャトルバス開業で西ゲートへのアクセスが便利になったが……

6月15日から運行を開始したシャトルバスの新ルートは、梅田・なんばといった大阪の中心部ではなく、南港エリアの南港ポートタウン線・トレードセンター前駅と西ゲートを結ぶ。

トレードセンター前に向かうバス。筆者のみの乗客1名で発車した

トレードセンター前駅の至近距離には「さんふらわあ」(鹿児島県志布志・別府~大阪港)フェリーターミナルがあり、名門大洋フェリー・オレンジフェリーが発着する「南港フェリーターミナル」も、南港ポートタウン線で4駅・約10分で到着できる。朝6時台、7時台に到着するフェリーと、朝7時40分始発、8時台には3本も運行があるシャトルバスの組み合わせは、フェリーで「0泊3日」の万博弾丸ツアーに行くにはうってつけだ。

ただし、これまでの桜島駅発のシャトルバスに比べると、西ゲート側の乗り場(夢洲第一交通ターミナル・A-1ブロック)、が、相当に遠く分かりづらい。

万博会場のシャトルバス乗り場。画像下が西ゲート、桜島駅は赤色(D1~)、トレードセンター前行きはA-1(左上奥)(万博公式ホームページより)

かつ、予約はこれまでの「KANSAI MaaS」アプリではなく、「大阪・関西万博 西ゲートシャトルバス予約サイト」という別のホームページで予約する必要がある。もちろん、個人情報やクレジットカード情報などKANSAI MaaSで入力したものも、すべて再入力が必要。なぜこんな「乗り場は遠い、予約はバラバラ」な事態になったのか……。

それはさておき、このシャトルバスにも隠れた楽しみ方がある。ふだんバスが通らない「夢洲トンネル」を通過するうえに、復路(西ゲート→トレードセンター前駅)では大回りして南港ポートタウン線の車庫を半周する(もちろん構内や車両を眺め放題!)など、車窓の見ごたえも十分なルートを走る。

夢洲トンネルを通過する

さらに、使用する車両は大型観光バス(三菱ふそうエアロエース)で、他のシャトルバスより段違いに乗り心地は良かった。

「車窓からの景色が見ごたえ抜群、ついでに西ゲートへのアクセスも便利」というトレードセンター前発着のシャトルバスは、別の意味で人気が出るかもしれない。なお、調整がつき次第「コスモスクエア駅前~西ゲート」間のバス路線も新設されるようだ。

ゲート間移動したいけど、歩きたくない そんな方に「無料渡船のススメ」

ゲート間の移動は1.6kmもあり、これからの季節はとにかく暑い。「そこまでして歩きたくない、でも西ゲートに移動したい」という方の裏ワザとして、「無料の市営渡船使用」という裏ワザがある。

この渡船は、夢洲駅の2駅手前の「大阪港駅」北側にある天保山桟橋から、ものの2~3分で安治川を渡って対岸を結ぶ。西ゲートに向かう「桜島駅シャトルバス乗り場」までは、徒歩400mほどだ。

天保山桟橋と対岸を結ぶ「大阪市営渡船」
東ゲート→西ゲート間で大阪市営渡船を使う場合のルート(地理院地図より筆者加工)

徒歩でのゲート移動のようにタダではないが、それでも「地下鉄330円、渡船無料、桜島駅シャトルバス350円」と、移動経費は最低限で済む。ただ難点と言えば、駅と天保山桟橋がやや遠いことと、市営渡船の利用者がほぼ地元の方に限られるせいか、万博モード・万博ファッションで乗船すると、船内の雰囲気的にかなり浮くことぐらいか。

開幕から2カ月が経過した大阪・関西万博も、混雑状況は日に日に増している。公式ホームページなどで混み具合をチェックしたうえで、ゲートでの時間待ちを最低限で済ませて万博を観覧したい。

万博会場内のガンダム像
宮武和多哉

バス・鉄道・クルマ・MaaSなどモビリティ、都市計画や観光、流通・小売、グルメなどを多岐にわたって追うライター。著書『全国“オンリーワン”路線バスの旅』(既刊2巻・イカロス出版)など。最新刊『路線バスで日本縦断!乗り継ぎルート決定版』(イカロス出版)が好評発売中。