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無料でバイブコーディング! 「Google Antigravity」なら自分用ツールを好きなだけ作れる
2025年12月2日 08:20
Googleが2025年11月18日に新しいAIモデル「Gemini 3」を発表し、それと同時に「Google Antigravity」というAIコーディングツールもリリースしました。
従来のGemini 2.5は当然として、他社のAIモデルと比較してもはるかに高い推論性能を達成したとされるGemini 3を、AntigravityではコーディングのAIアシスタントとして簡単に利用できるのが特徴です。
また、多くのAIコーディングツールが月額課金や従量課金で提供しているなか、今のところは無料で利用できるのもAntigravityの強み(有料プランの詳細は記事執筆時点では未発表)。一定の制約はありますが、実際、その制約下でどの程度のソフトウェアが作れるものなのか、確かめてみましょう!
3つのAIモデルを選んでコーディング "一応”無料で使える
Antigravityについて簡単に紹介すると、これはコーディング向けのテキストエディタとして知られる「Visual Studio Code」をベースに、独自のAIコーディングアシスタント機能を統合したもの。それ以外の機能面はほぼVisual Studio Codeのままなので、同アプリを利用してきたユーザーなら違和感なく使い始めることができるはずです。
起動するとウィンドウ右側にAIチャットのエリアが表示され、GoogleアカウントでログインすることでAIコーディングアシスタントを利用できるようになります。AIモデルとしては「Gemini 3 Pro High」(高度な推論用)と「Gemini 3 Pro Low」(レスポンス速度重視)が用意され、Anthropicの「Claude Sonnet 4.5」や、OpenAIの「GPT-OSS 120B」も選べます。
使いたいAIモデルと、その左にある「会話モード」を選んだうえで、テキストや画像などを用いてAIに指示し、コーディングを進めていきます。ちなみに会話モードには「Planning」と「Fast」の2つがありますが、AIと対話しながら進めるなら前者を、コーディングだけをしてほしいなら後者を、というのが大まかな使い分けになります。
ちなみに同様のAIコーディングツール、たとえばClineは設計のみの「Plan」とコーディングを実行する「Act」の2つを切り替えられますが、AntigravityのPlanningは設計だけでなくコーディングも行なう場合があるので注意が必要です。1つ1つ確認しながら進めたい場合は、ステータスバー右端にある「Antigravity - Settings」から「Review Policy」で「Request Review」などを選んでおくと安心です。
上限に到達するまでにどこまでツールを作り上げられるか
冒頭でも説明したように、Antigravityは今のところ無料で利用でき、AIコーディングアシスタントの利用も無料です。ただし、具体的な上限については公表されていないものの、すべてのAIモデルが無限に使えるわけではありません。一定以上のやりとりをすれば利用上限に突き当たり、4時間半~5時間弱のクールタイムが入ります。
Gemini 3 Pro、Claude Sonnet 4.5、GPT-OSS 120Bのそれぞれで個別の利用上限が設けられているので、1つのAIモデルで上限に至ったら他のAIモデルに切り替える、といった使い方もOKです。ただ、何度か試した限りでは、今回のようなバイブコーディングにおいてはGPT-OSS 120Bは実用が少し厳しい雰囲気。
なので、Gemini 3 ProとClaude Sonnet 4.5の2つのAIモデルで休まず連続的にコーディングしてもらい、いったんの上限に至るまでの間にどれくらい開発できるのかを確認してみたいと思います。
そんなわけで今回試すのは、「PDFエディタ」のWindowsネイティブアプリの開発。なぜPDFエディタかというと、無料かつWindowsネイティブで、ページ操作が可能なPDF編集ツールというものが筆者の知る限りほとんどないからです。
特に経費精算で領収書PDFを整理したいときには必須で、Windows環境では有料ソフトを使うか、無料のWebツールを使うか、といった選択肢しかなく不便でした(macOSは標準のプレビューアプリがPDF編集機能を備えているので便利なのですが……)。
まずはアプリ名や実現したい機能など、PDFエディタの要件を手元でまとめ、それをチャット欄に貼り付けます。AIモデルはGemini 3 Pro Highを選び、Planningモードで実行。1~2分で「タスクリスト」と「実装プラン」が自動生成され、どのような考え方やフローで開発していくかをユーザーに提示します。これらの中身を確認して、必要に応じて追加の指示を行ない、「Proceed」で承認すればその計画に沿ってAIがプログラミングを開始します。
開発の進捗を可視化し、状況把握しやすくする工夫
筆者が最初に指示したプロンプトでは、実装計画を5つのステップに分けました。Step1ではシンプルにPDFファイルを開いてサムネイル表示するだけ。Step2ではページの入れ替えや回転、削除、挿入などの機能の追加。Step3ではファイル保存機能を実装する、といった感じです。
Step4以降は必須機能ではないおまけみたいなもので、キーボードショートカットやアノテーション(文字や図形を挿入する)機能など、筆者の理想をちょっとだけ詰め込みました。
先ほど説明した自動生成されたタスクリストは、こうしたロードマップに沿った構成になっていましたが、ここで面白いのは、AIが実装を進めるにつれてタスクリストに現在の状況が反映されていくところ。そのうえで、実装プランやウォークスルー(実装内容の解説書)が逐一アップデートされます。どこまでが完成していて、今どの部分を開発中なのかが可視化され、どういう意図をもって開発しているのかも分かるわけです。
そういった事柄をチャットエリアに表示される大量の文字情報を追って把握するのは大変な作業なので、タスクリストなどの機能はバイブコーディングにぴったりかもしれません。実装内容の確認や修正箇所の指示といったユーザーがすべき重要な作業に、より集中できるようにも思います。
そして、Step1の実装は最初のプロンプトも含めわずか3回の指示で完了しました。途中、ビルドしてもアプリが起動しなかったのでそこだけ指摘しましたが、一発で修正して動くアプリに仕上げてくれました。
まだまだ完成形にはほど遠い内容ではありますが、わずか1回の修正指示だけで「動くもの」ができたのは、ツール開発をいろいろなAIツールで試してきた筆者の経験のなかでは初めて。ちょっとビビるくらいにうまくいきました。
2時間ほどでAIモデルの使用上限を迎える
続いてStep2の実装をスタートしましたが、最初の「ドラッグ&ドロップでページ並び替え」の機能を開発している途中で、あえなくGemini 3 Proのリミットを迎えてしまうことに。Gemini 3 Proはかなり効率的に開発できそうなAIモデルですが、開始から30分ほどでのクールタイム発生ということで少々物足りなく感じます。有料でももっとたくさん使いたい! ……と思わせてしまうのは、Googleの術中にまんまとはまってしまっている証拠かも?
さて、Gemini 3 Proが使えなくなってしまったので今度はClaude Sonnet 4.5に切り替えます。それでもページの回転、削除、並べ替えやファイル挿入の機能は一発で実装に成功。アプリの操作性はともかく、ちゃんと機能として形にできるという意味では、Claude Sonnet 4.5もGemini 3 Proと遜色のない性能を発揮してくれるように思います。
ただ、ここで欲をかいてしまい、UIの操作性に関わる箇所で追加要件を差し込んだところ、不具合が多発するトラブルに見舞われました。何度修正指示を出しても解決できず、トークンを無駄に消費してしまい、ひとまずこの時点での実装は諦めることに。当初予定していたStep2は完了できたものの、Step3に入った直後にClaude Sonnet 4.5のリミットに達してしまいました。
Claude Sonnet 4.5に切り替えてからのプロンプト指示は20回ほど、実質の作業時間は1時間余りです。Gemini 3 Proよりは制約が緩めのようですが、UIに絡む部分での無駄なやりとりが響きました。AIは(Antigravityも他のツールも)こういったUI部分での細かい挙動の調整に関してあまり得意でない印象が個人的にはあるので、人の手で調整していった方がスムーズなのかもしれません。
隙間時間の有効活用に、無料で使えるAntigravityはちょうどいい?
結果、PDFファイルを開いてページの回転、削除、並び替え、別ファイルからのページ挿入、といった機能まで実装したアプリができあがりました。編集したPDFファイルを保存することはできないので、ツールとして役に立つレベルではありませんが、トータル2時間ほどの作業でここまで仕上がるのであれば万々歳、というのが筆者の感想です。
続きは4~5時間後のクールタイム明けに、ということになりますが、筆者のような他に本業を抱えた人には、もしかしたらこれくらいの制約のなかでバイブコーディングを楽しむのがちょうどいいのかもしれません。朝に1時間、仕事が終わった夕方以降に1時間、みたいな感じで隙間時間に利用する程度なら息抜きにもなります。みなさんも「こういうのが欲しい」と思っているツールがあるなら、1日1~2時間の「Antigravity活」に勤しんでみてはいかがでしょうか。


















