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ガラガラだった「万博行きの船」が値下げで俄然注目 実際に乗ってみた
2025年7月1日 08:00
10月まで開催されている大阪・関西万博へのアクセス手段は「鉄道(地下鉄)」「シャトルバス」「クルマ」……もうひとつ、「旅客船」で行けるのをご存じだろうか?
万博会場がある人口島「夢洲」の北側には港があり、大阪市内や堺市、兵庫県・淡路島から定期船が就航している。桟橋から会場行きの無料バスに乗り継ぐ必要はあるものの、日増しに混み合う鉄道・バスより、渋滞も混雑もなく、比較的空いている西ゲートから会場入りできるのだ。
しかも、6月29日からは「西ゲート優先入場」(予約より1時間早く入場できる。10時・11時枠のみ)、さらに7月から一部航路で大幅値下げも実施される。アクセスルートとしては穴場かもしれない「船ルート」は、本当に使い勝手が良いのか? 実際に検証してみよう。
万博アクセスの穴場ルートの「船」 定期航路は何航路?
万博会場の夢洲は安治川河口近くの人工島で、開催が構想されていた当初から船でのアクセスを想定していた。いまもホームページの「最新の旅客船の運航情報」には多くの航路が記されているが、ほとんどが貸切などの「不定期」扱い。実際に定期就航しているのは、以下の航路だ。
- ユニバーサルシティポート・中之島GATEノースピア~夢洲(運航事業者:ユニバーサルクルーズ)
- 中之島GATEサウスピア~ユニバーサルシティ~夢洲(運航事業者:岩谷産業・大阪水上バス/中之島GATEサウスピア寄港は当面未実施)
- 堺旧港~夢洲(運航事業者:ユニバーサルクルーズ)
- 淡路交流の翼港~夢洲(運航事業者:パソナグループ)
まずは大阪市内の航路から、実際に乗船してみよう。
意外と便利な「ユニバ港」「中之島GATEノースピア」アクセス
夢洲へ向かう航路の発着地点の中でも、「ユニバーサルシティポート」はJR桜島線・ユニバーサルシティ駅から徒歩5分程度。ここから夢洲の桟橋まで3km少々、無料バスへの乗り継ぎも含め、20分少々で西ゲートに到着できる。
大阪駅からだと、そのまま桜島線の終点・桜島駅まで乗車、シャトルバスに乗車した方が安くつく。双方の料金は、桜島駅~西ゲート間バスは350円、船は往路2,000円、復路1,000円(7月1日から)。
しかし、船なら空いているため大体座れて、安治川や大阪湾の海風を目いっぱい吸いながら移動できるため、快適さは段違いだ。何より、「船で移動した」だけで、1時間早く優先入場できるのが嬉しい。
大阪市内のもう1カ所の乗船場所である「中之島GATE」では、乗車場所で注意が必要だ。ユニバーサルクルーズ担当便の発着は、万博開催に合わせて開業した施設「中之島GATEサウスピア」ではなく、川の対岸にある「ノースピア(大阪市中央卸売市場前港)」。川を挟んでサウスピアの目の前にあるものの、1kmほど川を回りこむため、まったく別の場所と言っていい。
「サウスピア」側は屋根や屋外ベンチを備えた海鮮レストランが入居しているものの、ノースピアは屋根や椅子はほぼなく、待ち時間の暑さ・雨対策は必要だ。では、サウスピアから発着する水素船「まほろば」なら快適に待てるのでは……6月30日現在で就航は「調整中」(未定)で、「まほろば」の運航はユニバーサルシティ~夢洲間のみとなっている。
なお、ノースピアは地下鉄中央線・阿波座駅から徒歩15分と遠いものの、大阪駅前の「大阪シティバス」ターミナルから53系統・船津橋行きで終点・船津橋で下車すれば、徒歩8分ほどとなる。真裏には大阪中央卸売市場があり、構内で寿司や海鮮をつまんでから乗船するのも良いかもしれない。
20分で3千円と高いものの“未来の船”水素船「まほろば」に乗れる
ユニバーサルシティ~夢洲間を運行する「まほろば」の見どころは、ズバリ「未来の船」「水上を走るパビリオン」だ。岩谷産業(大阪水上バスに運航委託)が運航する。
水素船の場合は、水素と空気中の酸素を反応させて、発生した電気で水中のプロペラを動かして進む。軽油などの化石燃料を燃やしてエンジンを動かす通常の船と比べて、独特の油臭さがない上に、エンジンの「ガガガガガ!」という振動もない。気が付いたらスッと出航しているほど静かで、パビリオンと同様に「未来の船」として知っておく価値がある。
なお、エコな燃料を使う船としては、「さんふらわあ」別府航路・大洗航路などで就航している「LNG燃料船」、日本郵政などが推し進める「アンモニア船」などがある。水素は鉄道車両などにも応用されているものの、航続距離がまだ短いのが課題だ。
大阪市外ではターミナル駅から徒歩5分と意外と便利な「堺航路」
堺市の堺旧港から夢洲への航路もある。ユニバーサルクルーズが運航するこの航路の利点は「港へのアクセスが便利」で、「鉄道の乗り換えを大幅に削減できる」こと。堺旧港桟橋は南海本線・堺駅から徒歩6分・400mほどの場所にあり、ここから夢洲まで30分少々で直通、比較的空いている万博西ゲートに行ける。
これが鉄道で同ルートだと、堺駅から新今宮駅でJR大阪環状線乗り換え→弁天町駅でOsaka Metro中央線→混み合う東ゲート到着、となる。大阪府南部から万博に行く手段としては、かなりの穴場ルートであることは間違いない。
なお、この航路の難点であった「片道3,800円」という料金も、7月1日から「夢洲行き・2,800円、夢洲発・1,400円」と、大幅に値下げした。鉄道より割高ではあるが、「優先入場レーン」が使えて、大阪南港の工場街や高層ビル群、堺港の呂宋助左衛門像などを水上から眺めるクルーズ船のような体験ができて、万博公式キャラクター「ミャクミャク」ラッピングの船で移動できることを考えれば、それなりに安い。
ほか、淡路島「淡路交流の翼港」から夢洲までの航路もある(運航事業者:パソナグループ)。こちらは日帰り利用者のための駐車場もあり、淡路島の島内や徳島県からクルマで来て、船に乗り継ぐ、といった使い方ができる。もちろん「適度に空いた西ゲートへのアクセス」「優先入場レーン」といった利点は他と同様だ。
喧伝してた航路がまだ就航してない? 課題が残る「万博の船」
ただし、万博へのアクセス航路には、まだまだ課題もある。復路のシャトルバス乗り場に「船の出港40分前」に到着する必要があったり、まだまだ料金が高かったり……。各航路とも利用率1~2割(1便当たり数人程度)と利用が低迷しているのも頷ける話だ。
それでも、地下鉄やバスより身体を伸ばしてゆったり移動できる「船で万博」が、少しでも認知されることを祈りたい。かつ、検討段階で「3社・月250便」「十三船着場整備(すでに完成)」「始発地点に飲み屋街『十三よどガヤテラス』開業」とうたわれていた、淀川区十三~夢洲間の航路開設は、いつになるのか……早めの就航を望みたい。