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狂乱の万博ラストシーズン ガラ空きから激混みの184日間
2025年10月15日 08:20
4月から開催されていた大阪・関西万博は、10月13日の最終日をもって、184日間に及ぶ会期を終了した。
開幕当初は批判的な意見も多く、14万人が入場した開幕日(4月13日)の翌日から7万人、6.3万人と、入場者は急激に減少。万博人気も急減速する……かに見えたが、閉会前は1カ月以上も「1日20万人以上」をキープしており、会場も開幕当初のガラガラぶりが嘘のような賑わいぶりを見せた。
閉幕を3日後に控えた10月10日、取材を兼ねて万博会場を巡りつつ、パビリオンで働く人々や「月10回以上は万博に行く人」などのお話とともに、万博最終盤の熱狂の様子や「開幕直後と終盤で変わったこと」を聞いてみた。
閉幕前の様子を見てみよう! どこに行っても混雑
この日は入場後、取材のためパビリオンの中の方と西ゲート近辺で待ち合わせた……が、人ごみをかわしてゲートまでたどり着くこと自体が困難なようで、待ち合わせ場所に全然来られない。
合流後も3人でパビリオンに向かうものの、関係者の方いわく「100m歩くのに5分かかることもある」状態。確かに、どのルートを歩いても向かい側からの人波に押され、3人グループだとすぐにはぐれそうになってしまう。結局、4月の時点で5分で到着できたパビリオンへの行き道が、10分以上かかってしまった。
さらに、大屋根リングをのぼるエレベーターも行列、大屋根リングからウォータープラザの噴水を眺めるビュースポットまでもまっすぐ進めない人ごみ……移動するだけで体力を消費してしまうが、あと数日で万博は閉幕するため、少しでも景色を眺めるために歩きたいところだ。
関係者が語る「開幕直後と閉幕前の違い」 まずは行列?
万博開幕当初と閉幕前で、ほかに変わったことはあるか? 関係者の方に聞いたところ、印象に残るのは「何の列か分からない行列」の増加だという。
会場内はすでに人で埋め尽くされており、「とにかく並ぼう!」とばかりに並んだところで、イタリア館・フランス館の行列かと思ったら、ただのトイレ待ちだったりすることもある。なかには、行列に並んでみたものの、その先には特に何もなかった……ということも。開幕当初は人気パビリオン以外で行列ができること自体少なく、こういったところに「開幕から半年間での万博の評価の好転」を感じるそうだ。
そして、閉幕前の各パビリオンは「各国の行列が混ざってしまうこと」を懸念していたようだ。この日もスイス館の方が、スピーカーで「スイス館の行列の方、もう少しこちら側に寄ってください! これ以上行列がずれて混ざると、横のバーレーン館の人に、めっっちゃ怒られます!」と誘導、何とかトラブルを防ごうと必死であった。
確かに、会場内にこれ以上のスペースはない。会場内の各所で、行列の動線が交差しているのは悩ましいところであり、次回の万博(2027年に横浜市で「国際園芸博覧会 GREEN×EXPO 2027」開催)で、教訓を生かしてほしいところだ。
花博、愛・地球博とも違う? 関西万博の印象は「休憩所の賑わい」
また、別の関係者の方々が「印象深い」とされていたのは、「子供連れの来場者の増加」「休憩所の賑わい」だという。
今回の万博会場には、転倒しても痛くないクッションなどを備えた「ボーネルンド」などが設置した子供用の遊び場がある。様子見の人々が多かった開幕当初はあまり賑わっていなかったものの、終盤にかけて家族連れが増加したことで、子供の歓声をよく聞くようになったのが嬉しかったそうだ。
また大屋根リングの下以外の各所に、屋根付きの休憩所があった。過去に「愛・地球博」(愛知県)や「花の万博」(大阪市鶴見区)に行った方でも、「ここまで子供向けの遊び場や休憩所はなかった」とのこと。さらに給水所やお湯の補給所もあるので、長時間滞在で休憩をとって、次のパビリオンに行くこともできる。
なお通期パスポートを所持している筆者も、パビリオン取材後にエアコン完備のP-25 休憩所(ブラジル館横。団体客がいないと一般開放される)で原稿を書いて、そのまま送ったこともあった。たった半年の開催なのに、ここまで休憩スペースや遊び場がしっかり設けられていた万博も、なかなかないだろう。
当日予約なしイベントも盛況 ミャクミャク待ち2時間?
万博は大半のパビリオンが予約制になっていたが、「予約なしパビリオン」やイベントも、それなりにあった。なかでも人気絶大であった、「大阪ヘルスケアパビリオン」で実施されていた「ミャクミャク」ハイタッチ会に、合流した家族とともに並んでみた。
夜20時から開始されるハイタッチ会は、行列を作ったうえで19時ごろに係の方が50組ずつ第1陣、第2陣……と仕切り、1組20分程度で撮影・ハイタッチを行なう、というものだ。受付前に到着したのは夕方18時過ぎだったが、この時点で200人以上の群衆が押し寄せ、係の方の「行列を作ってください」指示を待っている。
このハイタッチ会の良いところは、「並べばだいたい参加できる」こと。早い順番で並んで第1陣を狙う人々は、19時ごろに行列の形成が指示される前に団子状に固まって、受付側にじわじわとにじり寄る。群衆が前方までにじり寄ったところで、係の方が「密集しないでください、もっと広がってください!」と指示を出すとまた周囲に広がり、10分もすると全員が受付ににじり寄る……。
係の方がマイクで「これで事故など起きたら、ミャクミャクはもう来ません! 危なくない程度に空間を取って、離れてください!」とアナウンスして、また人々は離れる。この繰り返しで、行列を形成する時間まで持ちこたえた。
誘導を行なう係の方も、万博で経験を積むにつれて、群衆のあしらい方が手馴れている。おそらく閉幕後の再就職も、各方面で引く手あまたであろう。
19時ごろに行列が形成され、19時30分頃までに「第1陣」「第2陣」と手早く切り分けられ、無事にハイタッチ会は終了。撮影時間がしっかりあるだけでなく、ミャクミャクの方から小走りで近寄ってハイタッチしてくれるという、サービス満点のイベントであった。
最後まで遊びつくして、土産物屋(大丸松坂屋)を出たのは夜21時過ぎ。そこから長蛇の列に並んで東ゲートを退場できたのは21時25分、入場制限がかかる夢洲駅の改札にたどり着いたのは22時過ぎ。今回の万博の予約最大量であろう23万人台でここまで混み合うのなら、これ以上の入場者収容は難しいのだろう。
目立った「会社帰り万博」「ビアホール替わり万博」
また、通期パスで足しげく通った方々は「夕方から夜にかけての入場者の多さ」が印象に残ったという。
今回の万博は、夜には花火やドローンショー、各パビリオンのイベントが遅い時間まで開催されていた。ライトアップされた大屋根リングを眺めるだけでも、「夜の万博」に足を運ぶ価値があったという。
さらに、会場は「大阪市内から地下鉄で20分弱、降りてすぐ東ゲート」という立地が幸いして、「会社帰り万博」で世界中のビールを飲み歩く、といった人も。現に夜向けの店舗はほぼビヤガーデンのような賑わいを見せており、夜の来場者の獲得に繋がったのだろう。














