文具知新
大人にこそ使って欲しい! 書き物をグッと快適にする「下じき」
2025年12月3日 08:20
自分自身が子供だった頃と比べると、ペンもノートもすごく書きやすくなっているなぁと感じます。しかし、世間一般で言うところの「書きやすい」はどうにも「滑らかさ」を求める方向に行きがちです。ノートもペンも滑らかになったがために、組み合わせによっては「あれ? なんだか滑らかすぎて逆に書きにくいかも?」と感じることも増えてきたように思います。
滑らかであるということは、筆記時の摩擦が少ないということ。そのため想定以上にペン先が走り、コントロールが効きにくくなります。それを無理に制御しようとすると手に余分な力が入って疲れたり、なんだかいつもより字も下手になってしまったように感じたり、という事態につながります。
もちろん、それはユーザーが滑らかさを望み、文具メーカー各社がそれに応えようと日夜努力を重ねた結果ですので、悪いことではありません。しかし書くものである筆記具も、書かれるものである紙も滑らかであることが当たり前になったことで、その両方を掛け合わせて使うと滑らかになりすぎるというのは、豊かな時代であるが故の新たな悩みと言えるでしょう。
そんな背景からか、近ごろ紙・筆記具に続く書き心地に大きな影響を与える「第3の要素」として注目を集めているのが「下じき」です。
「下じきってなつかしいな~、小学生の頃は使ってたけど、大人になってからは使ってないな~」
という方も多いかもしれません。でも今、「大人向けの下じき」というジャンルがアツいんです! 様々な文具メーカーが大人向けに作っている下じきの中から、筆者が個人的に注目しているもの、愛用しているものをピックアップしてご紹介します。
書き心地を「極める」下じき
ちょっと良いホテルのフロントで宿泊カードなどを記入する時、「あれ? 妙に書きやすいな?」と感じたことはありませんか。それ、実はカウンターに敷いてあるデスクマットのおかげです。適度な弾力による筆記時の沈み込みによってペン先が紙に食いつきやすくなり、滑りが抑制されるのでグッと書きやすくなるのです。
その高級ホテルのようなラグジュアリーな書き心地を家でも存分に堪能できるのが、共栄プラスチックの「Kiwami ライティングマット下敷」です。商品名に「極み」を高らかに謳うだけあって、まさに紙とペンがぴったりと吸い付くような極上の書き心地を味わえます。
それを実現しているのが、適度な厚みと弾力をもったPVC素材。表面には滑り止め加工を施してあるので、筆記時にも紙が全くずれることはなく、非常に安定感があります。またそのおかげでマウスパッドや捺印マットとして兼用できるというのも、ビジネスパーソンとしてありがたい点です。
片面が方眼罫、もう片面が無地となっており、コピー用紙など無地の紙を使うときは方眼サイドで、ノートなど罫線のある紙を使うときは無地サイドで、と1枚で使い分けが可能です。対応する筆記具の幅も広く、ボールペンやシャープペンシルだけでなく万年筆やガラスペン、筆ペンとも相性の良さを発揮します。
サイズはA4(1,045円)、B5(880円)、A5(693円)、B6(638円)の4種類。お値段もお手頃ですので、大人向けの下じきにちょっと興味がある、という方にまず試していただきたい1枚です。いつものノートとペンでもこれを1枚はさむだけでグンと書き心地が良くなりますので、持っていて損はありません。
ちなみに、筆者はA4サイズとA5サイズを所有しており、コピー用紙にシャープペンシルでイラストのラフを描くのに使用しています。薄く透けて見える方眼がほどよいアタリになって、ペン先のコントロールも効くので心なしか絵が上手くなったように感じます。また、無駄な力が入らないせいか長時間描いていても疲れません。文字だけでなく、イラストを描く用途にもおすすめです。
ゆっくり丁寧に書くから字が美しくなる下じき
滑りすぎる紙とペンで字が上手く書けないと感じるのは、知らず知らずのうちに筆記スピードが上がってしまうから。車でも、スピードを出しすぎるとコントロールがしにくくなりますよね。それと同じで、字を美しく書くコツのひとつは「ゆっくり丁寧に書くこと」なのです。
レイメイ藤井の「大人の魔法のザラザラ下じき」は、表面全体に微細なドットを施すことで、筆記スピードを抑えるという今までにない発想で作られた下じきです。だって、下じきと言えばツルツルしているものというイメージがあるじゃないですか。それがデコボコしてるってどういうこと? ですよね。
道路でもスピードを抑えて欲しいところにはハンプなどのふくらみが施されていることがありますが、理屈としてはそれと同じと聞けば、なるほど納得です。また、振動によって脳がペン先の動きを意識しやすくなるため、頭の中でイメージした文字の形と手の動きの誤差を減らす効果もあるんだとか。
実際に書いてみると、ザラザラとした振動が指に伝わって、書くスピードが自然とゆっくりになります。ゆっくりになると落ち着いて丁寧に書こうという気分になりますし、表面の凹凸にも若干のガイド効果があるので、文字の角度などもいつもよりそろえやすいように感じます。
表面には縦罫線が印刷されており、横罫線のノートと組み合わせると文字の横幅やインデントをそろえやすく、レイアウトの面からも筆記の美しさをサポートしてくれます。もちろん、無地の紙と合わせて縦書き用に使うこともできますので、書写の練習などで使うのにも良いでしょう。
おすすめの用途は、手紙や提出の必要な書類など、人に見せる目的で字を書く時です。ザラザラ感がちょっと強すぎると感じるときは厚めの便箋と組み合わせたり、あえて紙を2~3枚重ねて調整したりするとほどよい感じになります。また、裏面は凹凸がより細かいシボ加工になっているため、急いで書く必要がある時などはそちら側と使うこともできます。
こちらもサイズバリエーション豊富で、A4(1,210円)、B5(1,155円)、A5(1,100円)、B6(1,045円)の4種から選べます。
手帳の相棒として考え抜かれた下じき
大人向けの下じきの中でも、特に手帳やノートに挟んで使うのにぴったりなのが調度の「Teriw THE MAT」です。
しっとりした書き心地が味わえる柔らかいシートと、いわゆる昔ながらの下じきに近い硬いシートが上部で縫い合わされた形が特徴。この縫い目の部分をページの上部に引っ掛けることで、開いた時に下じきがスルリと抜け落ちることを防ぎます。そのため、持ち運びの多い手帳やノートとの相性が抜群なのです。
ボールペンや万年筆を使うときは柔らかい面、芯の柔らかい鉛筆やシャープペンシルでは硬い面など、筆記具との相性や好みによってどちらを前にするか選べるのもポイントです。
また、Teriw THE MATの特筆すべき点は、柔らかいシートの裏にちょっとしたものを挟んでおけるポケットがあるところ。ここに吸い取り紙などを入れておくと、万年筆で書き込んですぐに手帳を閉じたい!といった場面でもサッと使うことができて便利です。
柔らかいシート部分が透明なタイプも用意されており、こちらはお気に入りの写真やシールなどをはさんでデコる楽しみも。そういえば、昔の下じきでも好きなアイドルの切り抜きやプリクラをはさむやつ、ありましたよね。大人になった今でもテンションの上がる下じきの使い方は変わらないようです。
ちなみに、透明タイプは方眼罫が印刷されたシートもセットでついてきますので、無地の紙でも字や絵を書きやすいなど、機能面の使い勝手にも抜かりはありません。
裏技的な使い方としては、ポケット部分にシステム手帳のリフィルだけを数枚入れて、下じきだけを持ち運ぶ、なんてこともできます。散歩に出るのに荷物はなるべく軽くしたいけど、立ち寄ったカフェでちょっとだけ書き物をしたい、なんて時によさそうです。
サイズはB5、A5、B6の3種類。カラーバリエーションも豊富なので、手帳カバーとのコーディネートも楽しめます。
どんな場所でも好みの筆記環境を展開できる
紙とペンの滑らかさもそうですが、最近ではオフィスもリビングライクなデザインがトレンドだったり、リモートワークが一般化して自宅のリビングやカフェで仕事をする人がいたりと、必ずしも書き物に専用のデスクを使わないシーンが増えています。
そういう場所のテーブルは表面の凹凸が大きい木目の天板だったり、硬いガラスだったりと、(書き物を想定していないのだから当然ですが)筆記環境として良いとは言えません。そんな場所でも、マイ下じきがあれば、常に自分好みの筆記環境を瞬時に作ることができます。
ぜひ好みの1枚を見つけて、快適な筆記ライフを。大人向けの下じき、一度その良さを知ってしまうと、もう無い状態には戻れなくなりますよ。




















