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大阪万博「未来づくりロボットWeek」を見てきた 最新ロボットと触れあえる

大阪・関西万博のEXPOメッセ「WASSE」にて、7月13日から19日の日程で、「未来づくりロボットWeek」が開催されている。テーマは「見て、さわって、体感!『ロボットとつくる共創社会』」。日本のロボティクスの「現在・進化・未来」の3つのテーマゾーン展示を通じて、「ロボットとつくる共創社会」への予感を体感できるイベントとされている。来場予約は不要。

展示企業は以下のとおり(五十音順):AVITA、SMC、川崎重工業、川田グループ、GROOVE X、セイコーエプソン、セブン&アイ・ホールディングス、THK、トヨタ自動車 未来創生センター、ハーモニック・ドライブ・システムズ、ファナック、不二越、安川電機、ugo。

会場はEXPOメッセ「WASSE」

会場は西ゲート近くにあるEXPOメッセ「WASSE」イベントホール南。まず入口では、ロボットスタートアップのugoによる案内ロボット「ugo pro」が迎えてくれる。エントランスの待機ゾーンに続く会場内の展示は、「働き方」、「スキル」、「コラボ」の3テーマに分けられている。全部で15種類のロボットが静態ならびに動態で展示されていて、かなりの賑わいだった。順番にご紹介する。

EXPOメッセ「WASSE」。リングの外側、ガンダムパビリオンやパソナパビリオンの近く
会場では別のイベントも行なわれているので出入り口に注意しよう
会場に入ると最初はまず待機ゾーン

「ugo pro」は遠隔操作と自律動作のハイブリッド制御方式のロボットで、警備・点検・案内などの用途に使える汎用ロボットだ。2本のアームはエレベーターのボタン操作やカードタッチなどが可能。胴体部分は昇降する。なお「ugo pro」は万博会場だけではなく、東ゲート最寄りの夢洲駅にも設置されて、案内を行なっている。

待機ゾーンほか、会場内の3カ所に案内ロボットの「ugo pro」が設置されている
「ugo pro」も音声認識とLLMでやりとりできるが、今一つご機嫌ななめだった
シアターで概要が紹介される
テーマは「人とロボットの共創」

産業用ロボットから、人と一緒に働く「協働ロボット」へ

テーマ1「働き方」は、ロボットと働く未来の姿を提案するゾーン。自動車や電機関連の製造に広く使われている「産業用ロボット」は通常、安全柵のなかに設置され、人と仕切られて仕事をこなす。いっぽう、近年注目されているのが、人と同じ空間で一緒に働ける「協働ロボット」だ。その変化を体感できるゾーンとなっている。ロボットの小型化・精密化を担うギア(歯車)や、設置する場所を選ばない無線技術も紹介されている。

テーマ1「働き方」。産業用ロボットと協働ロボットの違いなどが紹介されている

まず入口を入って左手には、川崎重工業の6軸多関節ロボットがベルトコンベアを流れるスマートフォンを検査装置にセットするというデモが行なわれている。

川崎重工によるスマホ検査ロボットのデモ

その向かいではファナックの「ゲンコツロボット」が、超高速で錠剤の仕分けを行なっている。「ゲンコツロボット」は軽量なパラレルリンクアームと器用な手先を持っているロボットで、高速作業ができる。

不二越は、ぶつからないロボットとして接触する前にピタッと止まる協働ロボット「MZS05」を出展している。ロボットのベース部分に2つのLiDAR、本体にも静電容量方式の接近感知センサーを搭載し、高速作業中にも物体を感知すると、実際に衝突する前に減速してスローになり、止まる。

不二越協働ロボット「MZS05」

川田グループはヒューマノイド研究プラットフォーム「HRP-2」の静態展示のほか、人と一緒に働く人型協働ロボット「NEXTAGE Fillie(ネクステージ・フィリー)」を出展。工場などで用いられているロボットで、会場ではノベルティを袋にセットして来場者に配布している。

川田グループブース
手前が「NEXTAGE Fillie」、奥が「HRP-2」

ハーモニック・ドライブ・システムズは、ロボットの関節部などに使われる波動歯車減速機「ハーモニックドライブ」を使ったジャンケンロボットハンドを出展した。なめらかで正確な動きを可能にする歯車だ。ロボットとじゃんけんチャレンジもできる。

ハーモニックドライブを使ったじゃんけんロボットと勝負できる

通常のロボットや工場にはたくさんのケーブルが使われているが、SMCは「無線オートスイッチ」技術を使った無線ルーレットによる「おみくじ」を出展。ワイヤレスで給電されて動くルーレット上で動作する無線オートスイッチの位置信号を検出してライトが光り、二つのルーレットで色合わせするというものだ。応答時間は0.2秒。無線なので断線によるトラブルのリスクはないし、ケーブルスペースを考える必要もない。

人と一緒に働くためにロボットもスキルアップ

続くテーマ2「スキル」には、人と一緒に働くためにスキルアップしたロボットたちが揃えられている。ロボットに追加されつつある「視覚」「力覚」「動作学習」「AI学習」「判断能力」などの先端技術を、デモや体験を通じて実感できるゾーンだ。

テーマ2は「スキル」。ロボットのスキルを紹介するゾーン

安川電機は「MOTOMAN NEXT」を出展している。NVIDIAのGPUを搭載した産業用AIロボットで、AIを使うことで人が判断する作業の自動化を目指している。

安川電機の産業用AIロボット「MOTOMAN NEXT」

アプリケーションは二つ。「いちご選果ロボット」は形と重さを判断しながら、いちごのパック詰めを自動化できる。

もう一つは食堂の食器の片付けを行なうロボットだ。ランダムな食器を見て判断して片付ける。残菜が残っていたら、それも判断して廃棄するといった動作を自動で行なう。

ファナックは、こちらのゾーンでは協働ロボット「CRX」の「ダイレクト教示」機能を使って、「絵や文字を完全コピー」するロボットシステムを出展している。ロボットに付けた筆を直接動かして絵や文字を書くと、ロボットが動きを覚えて完コピしてくれる。好きな文字や絵の描き方を教えることができる。

EPSONは垂直多関節ロボットと、高感度・高剛性の力覚センサーを組み合わせた、ロボットとの「黒ひげ危機一発」対決を出展した。黒ひげくんが飛び出す穴を避けながら剣をはやくさして、最後に黒ひげくんを飛ばすと勝ちとなる。「2023国際ロボット展」でも出展されたデモで、ロボットは最後、飛び出した人形を網で拾って助けてくれる。

不二越は、柔らかいケーブルを自動で挿す器用なロボットを出展していた。コネクタ挿入などを自動化するためのロボットで、ビジョンシステムを使ってロボット動作に合わせてリアルタイムに画像を撮影し、補正を行ない、器用に挿していく。

人型ロボットとコラボする未来

最後のテーマ3「コラボ」は、ロボットの未来を象徴する存在として、ヒューマノイド(人型ロボット)を中心としている。「人とロボットが共生する未来社会のかたちを探るゾーン」とされている。

人型ロボットと「コラボ」するゾーン

THKは、俊足のヒューマノイドロボット「FRED(フレッド、Flexible Robust Engineering Design=柔軟で頑丈な工学的設計の略)」を展示した。THKが独自開発したバックドライブ(逆駆動)性による耐衝撃性と小型高出力を両立した高性能アクチュエータの採用や、生物の二つの関節にまたがる二関節筋と似た特性を持つリンク機構を採用することで、高い身体性能を持ち、2025年5月には世界最高水準の走行速度13.8km/h(3.8m/s)を記録したヒューマノイドロボットとされている。

THKは俊足のヒューマノイドロボット「FRED」を紹介

会場のデモでは速度を半分程度に落とした走りを披露した。使われている部品も含めて今後の製品化その他については未定とのこと。

トヨタ未来創生センターはAIバスケットボールロボット「CUE」を紹介していた。プロバスケットボールチーム「アルバルク東京」の一員として活動しているロボットで、3ポイントシュートを打ったり、ドリブルしながらスラローム走行もできる。2024年には24.55mの長距離シュートに成功してギネス世界記録にもなった。

トヨタ未来創生センター AIバスケットボールロボット「CUE」

川崎重工業は人とロボットの共生を目指して開発がスタートした人共存型ヒューマノイドロボット「RHPシリーズ」を紹介していた。「RHP Friends」は「RHPシリーズ」の一つで、介護施設などで使われることを想定して開発されている。

川崎重工業「RHP Friends」

最後に来場者を見送るのは、トヨタの相棒ロボット「トミーくん」だ。トヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」のキャスター富川悠太氏をモデルにしたコミュニケーションロボット。音声対話ができる。こちらの対話はさすがにスムーズだった。

トヨタの相棒ロボット「トミーくん」

このほか会場のイベントスペースにはGrooveXの家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」もいて、ふれあうことができた。

GrooveXの家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」

「フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ」も開催

このほか会場内では、World Robot Summit 実行委員会主催で、ロボットを使うことで従業員の負担を減らした未来のコンビニ実現を目的とするロボット競技「フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ」も開催されている。

WRS「フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ」も同時開催。Team Meijoのチャレンジ中だった

参加チームは以下の8つ。Happy Robot(⾦沢⼯業⼤学)、TAK(東京都⽴大学)、NaRiPa(立命館大学)、TMU Mecha Clerk(東京都⽴大学)、HARChuo(中央大学)、Team Meijo(名城大学)、Hibikino-Musashi@Home(九州工業大学)、eR@sers(玉川大学)。

Hibikino-Musashi チーム
来場者が見守るなかでロボコンが行なわれている
商品を無人で仕入れ・陳列・販売する無人店舗運営システムのコンセプトモデル「MiLo」も展示されていた
3Dフードプリンターのゾーンも