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最強バックアップ回線? スターリンクを設置してみた:準備編

通信衛星を使うインターネット接続サービス「STARLINK」(スターリンク)のアンテナ代金やサービス料金が、2023年に入って大きく値下げされました(アンテナ値下げは期間限定とされています)。スターリンクは“もしもの時のバックアップ回線”として使えるのではないかと思っていたので、値下げを期に思い切って購入してみました。果たして本当に想定しているような使い方ができるのか、今回は準備編として予備知識や注文して製品が届くまで、別途準備したものなどを見ていきたいと思います。

価格は、2月20日の時点でアンテナ(とルーター・ケーブルのセット)が期間限定の半額になっており、36,500円です。サービスの料金は、同じ場所で常時使う「レジデンシャル」プランが月額6,600円、利用場所を固定せず契約の一時停止も可能な「RV」プランが月額9,900円となっています。

まずはアプリで設置場所のチェック

最初にお伝えしたいのは、まずスターリンクのスマートフォン用アプリをダウンロードして、衛星アンテナの設置に適した場所を確保できるのか、あらかじめ調べておくということです。ユーザー登録などしなくても、カメラを使ってアンテナの視界をチェックするセットアップ機能は試せます。

アプリではカメラで周囲をグルっと撮影して、遮蔽物がどれぐらいあるのか、設置に適しているのかどうか、わかりやすく表示してくれます。アンテナの注文前に、アンテナを設置できそうな場所でスマートフォンをかざし、セットアップを実行して、設置に適した場所のあたりをつけておくのが重要です。

4階の自宅のバルコニーでチェックした結果(左)、1つ上の屋上からチェックした結果(中央)、設置予定場所から見た北向きの視界(右)。筆者宅バルコニー(上記の人工芝の写真)からだと、北西~西が遮蔽物(少し離れたところにある9階建てのマンション)に覆われ、設置に適していないと表示されています

日本においてスターリンクのアンテナは「北向き」に設置します。BSアンテナなどとはほぼ反対方向です。加えて天頂方向も十分に開けている必要があります。つまりベランダなど屋根で覆われている場所は適していません。建物と建物の間で谷間になっているような左右が見通せない場所も不向きです。密集した住宅街であれば、屋根より上の高さの場所が必要と考えて間違いないでしょう。その上で、北・上向きを中心として天頂方向も開けている必要があります。北、北東、北西などに大きなマンションがあれば遮蔽物となるため、設置に適さない可能性が高いです。

このアンテナの視界は、高さが数m変わるだけでも大きく変わるので、少しでも高い場所に設置できれば通信環境はグッと良くなります。私の物件(4階建てマンションの4階)では、西にある屋根のないバルコニーで調べると、北西にあるマンションに視界の1/3程度を遮られていましたが、1つ上の階である屋上で調べると、遮蔽物がほぼない理想的な視界を得られることが分かりました。

なぜこのように比較的広いアンテナの視界が必要なのかというと、スターリンクのシステムは、低軌道を移動している数千基の小型衛星の中から、視界を通過していく衛星に次々と切り替えながら通信しているからです。このため、必要とする視界に遮蔽物があると、衛星との通信断の時間が長くなります。数秒以下の瞬断ならアプリやサービスによってはバッファで吸収できますが、遮蔽物が多くなると通信が一時的に止まる時間も長くなり、通話やオンラインゲームなどのバッファで回避できないサービスには影響が出てきます。可能な限り遮蔽物のない環境を追求するのは、ちゃんと使いたいならとても重要なポイントになります。

期間限定、アンテナ代金はスマホより安く

最初にかかる代金ですが、Wi-Fiルーターや必要なケーブルがセットになった衛星アンテナのキットが、期間限定で半額の36,500円になっています(2月20日時点)。アンテナには「標準」「高性能」「フラット高性能」の3つがあると紹介されていますが、日本から個人ユーザーが契約できるプランのアンテナは「標準」のみになるようです。日本でサービスが開始された初期は、提供されるアンテナが円形の第1世代だったようですが、今は24インチモニターぐらいの大きさの、細長い四角形の第2世代になっています。重量はかなり軽量化されています。

スターリンクをWebサイトで注文すると、米国・カルフォルニアからDHLで発送されます。送料は無料です。税関の通過に時間がかかる場合もあるので一概には言えませんが、スターリンクのアンテナは注文から1週間で、後から注文したパイプ アダプターは米国内で遅延し2週間少しかかって届きました。

スターリンクの箱。外箱に伝票が貼られて届きました
箱を開けるとそのまま収まっていました
パッケージ内容。いたってシンプルです。アンテナから伸ばしてルーターに接続するケーブルは23mもあります。ルーターに接続する電源ケーブルは1.8mでアース付きの3ピンプラグです
標準タイプのアンテナは細長く、アンテナ表面の長辺は513mm、短辺は303mmです。レコード盤1.5枚分ぐらいの面積です。台座もアンテナに合わせて細長い接地面積で、持ち運ぶ際に収納しやすい形です

住宅に据え置きとして設置する場合に、BSアンテナのようにマスト(ポール)に取り付ける場合は、アンテナを固定する「パイプ アダプター」(10,600円)を別途購入する必要があります。私はこのパイプ アダプターと、マスプロ製の「アンテナ用フェンスマスト BM60」(ヨドバシカメラで7,810円)も購入しました。

別途注文したマスプロ製のフェンスマスト(上)とスターリンクのパイプ アダプター(下)

スターリンクのアンテナは自動で動いて角度を変えるほか、天頂方向の視界も必要なため、首が自由に振れるようマストの先端に設置する必要があります。このあたりはBSアンテナなど従来の衛星アンテナとは異なる点です。

ちなみに重量ですが、実測でアンテナ単体が2.9kg、標準付属の台座(4脚タイプ)が1kgでした。市販のマストを選ぶ際は、スターリンクのアンテナの重量を考慮すると、(対応するBS・CSアンテナが)60cm以下用、としているアンテナマストが適していると思います。

マストの先端に装着するパイプ アダプター。ケーブルを外壁に固定するビスやアンテナ収納袋も付いてきます
パイプ アダプターにアンテナ収納袋が付いてくる理由は、屋根までかついでいくならこの収納袋を使って、ということみたいです

料金は2種類

スターリンクを使う上で毎月かかる、個人向けのインターネット接続サービスの料金は、利用場所が変わらない「レジデンシャル」プランの場合は月額6,600円、利用場所がその時々で変えられる「RV」プランの場合は月額9,900円です。これらはサービス開始当初の半額に値下げされており、現実的な価格帯になっています。

レジデンシャルは登録する利用場所が1カ所で、契約の一時停止ができないので、スターリンクを自宅で常用する場合に適しています。RVは利用する場所が1カ所に限られず、利用の一時停止と再開ができます。レジデンシャルでサービスを申し込んだ場合、RVに契約を変更できますが、一度RVに移行するとレジデンシャルには戻せません。RVは通信速度がレジデンシャルよりも制限されるプランなので、一長一短という形になっています。

なおレジデンシャルには、利用場所を追加できる「ポータビリティ」というオプションが月額2,600円で用意されています。これにより、常時使っている人でも別の場所で使うことができます。

ユースケースで見ると、住宅に設置して常時使う場合はレジデンシャルでしょう。RVは、場所に縛られずに使いたいという場合や、バックアップとして必要な時だけ使う場合向け、ということになると思います。私は基本的に自宅に設置して使うつもりだったのでレジデンシャルで注文したのですが、一時停止できるのはRVだけと後から知ったため、今後RVに変更するつもりです。

次回は設置・運用編として、実際に設置して使ってみた様子を報告したいと思います。

太田 亮三