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2025年のSNS総まとめ AI画像生成・ネットミーム激動の1年
2025年12月30日 08:30
AIで画像生成が当たり前に
3月にChatGPTの画像生成機能が大幅にアップデートされ、無料ユーザーも含めて誰もが簡単に画像生成ができるようになりました。OpenAI CEOのサム・アルトマン氏も自身のXのアイコンにジブリ風で生成した画像を使い、「◯◯風」の画像生成は物議を醸しながらまたたく間に広がりました。
AIが生成したイラストや写真は、実際に描かれたものや撮影されたものと区別がつかないくらいリアルなものも多くあります。SNS上の画像がAIによるものなのか判別できるか、という点でもSNSリテラシーが試されるようになりました。
Instagram15周年 ショート動画はどうなる
SNSプラットフォームでは、今年Instagramが15周年を迎え、Instagramの未成年保護機能「ティーンアカウント」も開始しました。TikTokは「TikTok Shop」を日本でもローンチし、ライブショッピングや動画からの購入を可能としています。
Instagramはリールと呼ばれるショート動画に注力しており、TikTokは言わずもがなショート動画の元祖。Z世代の若者にとってショート動画は欠かせない存在となっており、YouTubeもショート動画を投稿する人が増え、どのSNSでも存在感を示しています。
一方、ショート動画を大きく打ち出さなくなったのはLINE。「LINE VOOM」というショート動画サービスを提供していますが、9月からは下部メニューの「VOOM」タブを「ショッピング」タブに順次刷新すると発表しています。これはEC機能を強化することを狙いとしており、筆者の環境にはまだ来ていませんが、2026年にはLINEギフトやLINEショッピングをタブから利用できるようになりそうです。
Threads発祥のネットミームも
SNSでは毎年ネットミームが生まれては消えていますが、2025年はXやTikTokだけでなく、Instagramアカウントで利用するSNS「Threads」発祥のネットミームが生まれたのも特徴的です。
4月頃からゴールデンウィークにかけて、子育て中の女性を中心に「大沢たかお祭り」というタグが盛況に。これは俳優の大沢たかおさんが映画「キングダム」で演じた王騎将軍の画像を使ったもので、育児中のユーザー達の大喜利合戦となって盛り上がりました。
キャプションには主に「育児あるある」が添えられ、30~40代の女性が活発に利用しているThreadsならではの賑わいを見せました。このミームはXにも広がりましたが、盛り上がりすぎて著作権に関しての疑問の声も多く挙がるようになり、次第に陰りを見せました。
Instagramの責任者アダム・モッセーリ氏は10月31日、Threadsの1日あたりのアクティブユーザー数が1億5,000万人を突破したと投稿しています。ミームが物議を醸すようになるのも多くの人の目につかないと起こらないことで、それくらいThreadsのユーザー数は増えてきているといえそうです。
2025年前半に盛り上がったネットミームには「エッホエッホ」もあります。現代用語の基礎知識 選「2025 T&D保険グループ新語・流行語大賞」のトップテンに入賞したほか、ピクシブとドワンゴによる「ネット流行語100」の「ネット新語賞」も受賞しています。
こちらの発祥は、オランダの写真家ハニー・へーレさんが投稿したメンフクロウのヒナの写真です。ハニー・へーレさんが2021年に撮影した写真を、4年後の2025年2月に比較文学研究者の津田雅之氏が投稿。見た目の可愛らしさと躍動感から、次第に「エッホエッホ 〇〇って伝えなきゃ」という言葉が添えられるようになり、ミームへと派生していきました。
地面を走るメンフクロウのヒナ。まだ飛行能力が発達していない段階のようです ©Hannie Heerepic.twitter.com/CNlSBZNk9I
— Masayuki Tsuda (@MasayukiTsuda2)February 23, 2025
今年は日本国際博覧会(大阪・関西万博)も開催され、公式キャラクター「ミャクミャク」も大人気となりました。公式アカウントではミャクミャクもエッホエッホのネットミームに乗り、5,517万を超える表示数となっています。
エッホエッホ
— Expo2025 大阪・関西万博 (@expo2025_japan)February 26, 2025
いよいよ再来月に開幕するってみんなに伝えなきゃ
エッホエッホpic.twitter.com/0wSku8oYzn
ネットミームでは、模倣されていくうちに異なるスタイルになり、大元から変化したものがヒットするケースも多々あります。そのひとつが、「ナルトダンス(ライラック)」です。
「ナルトダンス」とは、中国で流行していたダンス「科目三」が元になったもので、人気マンガ「NARUTO -ナルト-」のコスプレをして踊っている動画が話題となり広がっていきました。
当初は中国の楽曲で踊られていましたが、日本で話題となった際、Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」が、ダンスの激しい動きにマッチしたため、この曲で踊ることが定番化しました。TikTokではMrs. GREEN APPLEもミームに参加。「本人に届いた!」とユーザーが喜びました。
さらに、1枚の画像や動画とともに「〇〇して今これ」という、自分の状況を説明するコメントを付ける「今これ構文」というミームとナルトダンスがかけあわさったものも広がります。
例えば、「面接玉砕して今これ」という絶望の一文とともに、「ライラック」のサビの部分をナルトダンスで踊った動画を投稿するといったギャップを楽しむものや、「嫌いな上司が別部署に異動して今これ」など嬉しい状況に陽気なダンス動画を一緒に投稿する文章と動画の状況が一致したものなど、今これ構文はさまざまな使われ方があります。なお、「ライラック(ナルトダンス)」は、サイバーエージェント「Z世代ヒットトレンドランキング2025」で11位にランクインしています。
生成AIによるネットミームも誕生
生成AIによるネットミームでは、Z世代よりも若い年齢の「α世代」に「イタリアンブレインロット(Italian Brainrot)」が流行りました。AIが生成した不気味でシュールな生き物にイタリア語風の変な名前がついているキャラクターは起源がはっきりしないままネットミームになり、TikTokやYouTubeで人気者になりました。「Brain Rot」は直訳すると「脳が腐る」という意味で、見続けていると脳が溶けていくような感覚になるということを表しています。
イタリアンブレインロットのキャラクターは、木の棒のような「トゥントゥントゥンサフール」、3本足のサメ「トララレロ・トラララ」、頭がカプチーノのカップになっている「バレリーナ・カプチーナ」などで、すべて生成AIで作られたものです。AI特有の不気味さや意味がわからない歌やリズムが子どもたちの心をがっちり掴みました。
イタリアンブレインロットのキャラクターを使った動画は様々なストーリーやダンスなど、TikTokやYouTubeに多数投稿されています。クリエイター「ザビャン」が作った楽曲「トゥントゥントゥンサフールに恋している」はYouTubeで約14万いいねを獲得しています。
ジェンダーに関する炎上や中高生によるディープフェイクポルノ
一方で、SNSでは今年も炎上騒動が起きました。2月頃から始まった「赤いきつね」アニメCM騒動では、東洋水産が公開した若い女性が赤いきつねを食べてホッとする様子のアニメ動画が性的であるとして炎上しました。これに対しては、「過剰反応だ」とする声もあり、議論がやみませんでした。3月には女性がすっぴんを恥ずかしがる日本郵政のPR動画が「ルッキズムの助長」「女性をバカにしている」などと言われて炎上し、動画は削除されました。
また、6月には読売巨人軍公式Xの「父のキゲンは、巨人が決めている。」というコピーに対して「テレビを占拠されるなど、いい思い出がない」などの声が殺到しました。
このように、Xを中心としてジェンダーに関するテーマは変わらず炎上しやすいテーマです。また、時代の価値観の移り変わりも明確になりました。
生成AIが普及したことで偽・誤情報も蔓延しました。11月には、宮城県女川町の公式Xが「熊が出没した」という注意喚起を行なったところ、偽画像だったことがわかり、町は謝罪して取り下げを行なう事態も起きています。
生成AIによるディープフェイクポルノも問題視されています。警察庁は12月、ディープフェイクポルノの被害実態を公表し、20歳未満の被害者のうち8割以上が中高生であることがわかりました。加害者の半数は同級生や同じ学校の生徒だそうです。生成AIを使えば誰でも卒業アルバムの写真などからポルノ画像を生成でき、拡散できてしまいます。
こうした権利侵害に役立つ法律も施行されました。2025年4月1日に施行された、ネット上の誹謗中傷や権利侵害への対応を強化する「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」です。これにより、誹謗中傷を受けた人がSNS事業者に削除申請を申し立てると、原則7日以内に対応の可否を判断することが義務付けられました。また、削除基準を公表しなければならないことや、日本語で簡単にアクセスできる窓口の設置が義務付けられました。
今年は生成AIで作られる偽・誤情報やディープフェイクの拡散がついに本格化した年とも言えます。もし誹謗中傷や権利侵害にあってしまったら、すぐにSNS事業者に削除申請を行ない、警察庁の「インターネット上の誹謗中傷等への対応」を参考に、適した相談窓口に相談してください。
バイトテロはBeRealに 詐欺も激増
2025年もバイトテロが発生してしまいました。しかし今年は「BeReal.」の投稿が発端となる炎上も起きています。女子高生と思われる人物が回転寿司チェーン店で寿司をなでる動画が拡散、個人情報が特定されるなど騒ぎになりました。他にもコーヒーチェーン店やラーメン店で同様のバイトテロが起きています。各企業は謝罪文を掲載、懲戒処分を下すなどの対応に追われました。
BeRealは、通知が来たら2分以内に投稿するSNSです。通知が来る時間はランダムで、予告されていません。そのため、通知が来るとユーザーは高揚し、慌てて投稿してしまいます。また、親しい知り合いだけのクローズドSNSであるため、内輪ノリの気分になり、気が緩みます。しかし、投稿を見た誰かがBeRealからXやYouTubeにシェアすることにより、知り合いを超えて拡散されます。これまで、Instagramストーリーズがバイトテロの発端でしたが、今後はBeRealにも注意喚起が必要です。
SNSを舞台とした事件としては、SNS型投資詐欺やSNS型ロマンス詐欺も激増しています。警察庁が12月2日に公表した「令和7年10月末における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」によると、前年よりも被害が大幅に増加しています。SNS型投資詐欺ではInstagramの被害が最多で、次いでYouTubeとなっています。SNS型ロマンス詐欺では、マッチングアプリが最多、次いでInstagramになっています。どちらも、LINEのやり取りに持ち込まれて金銭をだまし取られています。
ロイター日本語版の11月8日付け報道によると、米メタは2024年の年間売上高の1割にあたる約160億ドルが、詐欺や販売禁止品などの不正広告によるものだと明らかになったとのこと。
Metaは広告詐欺を6割減らしたと発表していますが、対応が十分でない可能性が高まっています。
2026年はSNSも生成AIと共生
生成AIの影響が色濃く出た2025年のSNSですが、来年はますます生成AIが作り出すフェイク動画や偽・誤情報に苦労しそうです。ポジティブに捉えれば、精度の高いネットミームを簡単に作れるようになった年とも言えます。
直近でも、12月24日にXが画像の「AI編集」ボタンを実装。他のユーザーが投稿した画像に対して、誰でもAIで編集できてしまい、悪用を懸念する声が生まれています。ここ数年はSNSが交流する場から視聴する場へと変わったと言われていますが、今後はAIとの共生の場になっていきそうです。













