トピック

ラストワンマイルを担うアマゾンの配達センター「東京江東DS」を歩く

アマゾンジャパンの東京江東DSの作業風景

日々お世話になっているユーザーも多いかと思うが、ECサイトでお馴染みのAmazonの配送業務は、倉庫かつ発送を行なう「フルフィルメントセンター(FC)」と各所への配送を行なう「デリバリーステーション(DS)」の主に2つのセンターがその役割を担っている。

このうち、発送される商品が格納され、オンラインでのオーダーに応じてピックアップとパッキングが行なわれるFCは、施設内を徘徊して効率的に管理や輸送を行なう「Amazon Robotics」の話題もあり、メディアに取り上げられる機会も比較的多かったが、後者の「ラストワンマイル」を担うDSはあまり取り上げられる機会がなかった。

今回、主に東京東部を中心とした人口密集エリアをカバーする「東京江東DS」を取材する機会を得たので、その実際の業務と最近のデリバリー業務のトレンドを含め情報をまとめた。

Amazon Roboticsが導入された大阪茨城FCの様子。写真は2019年4月撮影だが、最近Roboticsの「ドライブ」が導入された最新のFCではより新しい世代のモデルが稼働しているという

Amazon DSでの仕分け作業はどのように行なわれるのか

まずは基礎データだが、現在Amazon DSは日本国内に30カ所あり、パートナー企業が提供するDSである「DSP(デリバリーサービスパートナー)」の拠点も同等数存在する。江東DSはその数あるDSの1つとなるが、ドライバーを除いて1日100人近いスタッフが勤務している。

1日の同DSからの出荷数は(10万個に近い)数万個ということで、東京東部の多くのエリアをカバーしている。配送タイミングはDSによっても異なるが、出荷量そのものは朝の時間帯の方が多い傾向があるようだ。今回取材したのは平日夕方5時の出荷に向けた準備時間だったため、ピークタイムが過ぎてやや落ち着き、翌日配送予定で仕分けを待つ荷物が溜まり始める状態にあったところだ。

東京江東DSの内部。内部は夏でも冬でも一定温度に保たれて快適な作業環境が得られるよう工夫されている。巨大なシーリングファンは特別製に近いもので、このサイズものが入るのはおそらく日本で初のケースだったという
FCやメーカーから直に送られてきた荷物が仕分け前にいったん集められるスペース
搬入または配送口。仕切りがあるため、内部の温度が一定に保たれる

江東DSでは、各FCやメーカー直送の商品のうち、同DSの配送エリアに含まれるものがいったん集められ、配達を担当する各ドライバーに振り分けるための仕分け作業が行なわれている。詳細は後述するが、ドライバーは「Amazon Flex」という体制で勤務しており、それぞれの要望に応じた勤務時間と大まかな配達エリアを持っている。これに対してAmazon側がAIで指定時間内に配達が完了するよう荷物の振り分けを内部的に自動で行ない、流れ作業の中でラベリングによる仕分け作業を人手を介して進めていくというのがDSでの仕事の主な流れとなる。

順番としては、配達予定の荷物はロールボックスに入れられた形で集められており、これを順番に取り出してラベルをスキャン。仕分け先が印刷された黄色のシールを貼り付けてラインに流す。流れてくる荷物には、翌日配送予定で当日の仕分け作業に含むべきではないものや、エラーで何らかの問題があるものも含まれており、これをいったん別ラインに取り分ける。

最終的に荷物は担当する各ドライバーが持ち出せるよう、細分化されたバッグへと収納されていく。バッグは配達のブロック単位などで分けられるため、配達時の区分けが行ないやすいからだ。

このバッグを担当ドライバーごとに分けてロールボックスに収納しておき、ドライバーの到着を待つ。

仕分け前の荷物が入れられた「ロールボックス」群
ラインにおける最初の工程。ラベルのコードを読み込んでシールを添付する
貼られているのはこのような黄色いシール。これで大まかな送り先が指定される
シールが貼られた荷物は次の工程へと運ばれていく
流れてくる荷物は途中でいったんチェックが行なわれる。エラーがあったり、あるいは翌日配送の荷物は別のラインへと移される
流れてきた荷物は、ここでさらに配送単位で細分化され、それぞれのバッグへと収納されていく
それぞれのエリアの作業スタッフが自身の担当荷物をピックアップし、所定のバッグへと収めていく
バッグへの収納時にラベルのスキャンが行なわれるが、この際に収めるべきバッグの周囲が赤ランプで点灯し、収納すべき先を間違えないようガイドする
仕分けが終わった荷物がバッグに収納された形でロールボックスに格納される。このロールボックスをそれぞれの担当ドライバーに渡す

今回は夕方5時台に始まる配達サイクルに合わせて取材を行なったため、この時間帯が近付くと多くのドライバーが集まってくる。配達には小型のワンボックスカーが用いられるが、バッグなどの収納方法はそれぞれのドライバーがやりやすいようアレンジする形で詰め込みが行なわれているようだ。

配達に使われる小型ワンボックスカー。取材日は夕方5時台の配送サイクルに合わせたドライバーが集まってきていた
車への荷物の収納の仕方はドライバーそれぞれだが、各々がやりやすいスタイルで収納されていく

コロナ禍の一番の大きな変化は「置き配」率の急増

Amazon DSは大まかにカテゴリ分けをすると「ラージ」と「ミニ」の2つのカテゴリがあり、江東DSは「ラージ」に属している。「ラージ」に該当するDSが配置されているのは東京、名古屋、大阪、福岡といった主要都市圏が中心で、その周辺の人口密度の低い東北や四国といったエリアを「ミニ」のDSがカバーしている形だ。

アマゾンジャパン アマゾンロジスティクス ディレクター・リージョナルオペレーションズの道上淳之介氏によれば、同社は全国にサービスをいち早く展開するため「ミニ」のDSを含め一気に拠点を設置したが、出荷量の増加など、ニーズの増大に応じて「ラージ」のDSに転換される傾向があるという。「ラージ」と「ミニ」で作業の流れそのものに違いはないものの、「ミニ」の側では仕分けの際にバッグ単位ではなくロールボックスに直接荷物を収納していくといった違いがある。

アマゾンジャパン アマゾンロジスティクス ディレクター・リージョナルオペレーションズの道上淳之介氏

また昨今の配達トレンドに何か変化があったかを同氏に聞いたところ、出荷量などの変化はコロナ禍突入後も特になかったものの、置き配の利用率が大きく上昇したことを挙げている。2020年3月以降、Amazonが担当する配送エリアはデフォルトで置き配指定となっており、現状で7-8割程度の配送が置き配で行なわれているという。

またオートロックのあるマンションのうち、「Key for Business」と呼ばれる契約マンションは、ドライバーが直接各戸に置き配が可能。この契約もかなりの数のマンションとの間で進みつつあり、配達オプション指定時に住所から判断して置き配を指定できるケースが増えている。置き配により再配達は減る傾向にあり、配達側にとっても受け取り側にとってもメリットのある環境が生まれつつある。

そして配達で問題となるのがドライバーの確保だ。「(ドライバーの確保は)大変かといわれれば、大変じゃないとはいえない。現在Amazon Flexというドライバーの自由度の高いプログラムを推進しており、ドライバーの方々のストレスになるところに積極投資して負担を削減し、Amazonの配送ネットワークに関わるドライバーを増やしていきたい」と道上氏は述べている。

このAmazon Flexだが、「○○日に△時間だけ働きたい」といったリクエストを出しておくことで、AIが自動で仕分けを行なって配達作業が割り当てられる仕組みだ。基本は機械学習(ML)でデータを蓄積していってルーティング処理が行なわれるが、ドライバー自身の習熟度やブロック単位、時間単位で、配達可能な範囲での割り当てが行なわれる。

ドライバーには「ラビットアプリ」と呼ばれるアプリが配布され、ここを通じて配達のためのガイダンスが提供され、それに沿って配れば配達が完了する。配達に必要な機能のみならず、フィードバックなどもアプリを通じて行なえるようになっており、改善につなげるための意見を吸い上げる仕組みで、概ねポジティブな意見が多いと同氏はコメントしている。

新人ドライバー向けの支援制度もあり、例えば研修期間(と呼ぶのが正しいかは分からないが)には「プロドライバー」と呼ばれる習熟した先輩ドライバーが必要に応じてヘルプの形で一緒にエリアをまわったりするなど、スムーズに配達作業に慣れるような仕組みがある。

実際には20回ほど配達作業を行なうとドライバーとして問題なく活動できるとのことで、1カ月ほどの練習期間があれば充分のようだ。今回話を聞いたプロドライバーの方は1日5時間程度が配達作業で、2時間程度を江東DSでのドライバー割り振り作業など内勤に充てており、勤務日数は1カ月あたり20日ほどだという。人によっては1日の配達時間が2時間であったり、週の特定の曜日のみ勤務というドライバーもおり、Amazon Flexの仕組みを利用して隙間時間に作業する人もいれば、ほぼフルタイムに近い勤務態勢の人もいて、このあたりの柔軟性も人集めの一助となっている。

Amazon Flexの受付窓口。ドライバーは各自ここでチェックインして荷物を受け取っていく
RTSとは「Return To Sender」の略。ドライバー配送が終わるといったんここに戻り、何らかの理由で配送できない荷物があった場合はRTSの窓口を通じてその旨の申告を行なう
アマゾンジャパン シニアオペレーションズマネージャーの佐藤雄俊氏。東京江東DSの総責任者にあたり、今回のガイドツアーでもいろいろ説明をいただいた

今回DSの施設紹介の一環としてもう1つ案内されたのが、江東DSの作業スペースの一角にある「Amazon Logistics Academy」だ。スタッフ向けの研修プログラムが提供されている場所で、新入社員などはいったんここに集められて2週間ほどのセミナーを受けるという。コロナ禍ではさすがにリモート研修となっていたが、現在ではリアルでの講義も復活した。ただし、ソーシャルディスタンスなどの理由もありスペース的に全員を収容できないケースもあるという。

物流倉庫の片隅に突如出現した異質な空間は違和感も憶えるが、一方で壁に書かれた標語にはAmazon文化がところどころに見られ、「ここはやっぱりAmazonの一部なのだ」と感じられる。

東京江東DSの隅に専用スペースが設置され、研修プログラムなどが提供されるAmazon Logistics Academy
Amazon Logistics Academyのロゴ。配送倉庫内部の空間にもかかわらず、ここだけは普通のオフィスのようなガラス張りの空間となっている
Amazonの標語が書かれた壁のデザイン。来日時に本国の責任者が残したサインもある