鈴木淳也のPay Attention
第279回
「コンビニ」の限界を超える ローソンの地域・オフィス・ミニスーパー新戦略
2026年6月26日 09:03
最近、コンビニチェーン「ローソン」の動きが面白い。同社では現在さまざまな出店フォーマットの模索を行なっており、加えて親会社の1つであるKDDIと共同で「au経済圏」のさらなる拡大を進めている段階だ。
2001年のダイエーからの買収以降、三菱商事系の流通関連会社(正確には持分法適用会社)として運営されてきたローソンだが、2017年のTOBで三菱商事の子会社となり、さらに2024年2月にここにKDDIが加わったことで議決権を50:50で持つ両社による共同経営会社となった。
コンビニが解決する「社会課題」と「踊り場」
KDDIの参画により目立つのは「テクノロジーの力で店舗経営者(つまりフランチャイズ)の抱える課題を解決できないか」という技術的なアプローチだが、一方で技術とは別の軸で「いかに商圏を拡大して社会問題そのものを解決していくのか」という、昨今のコンビニビジネスが抱える大きな問題への取り組みも比重が増えている。
前者がKDDI本社で行なわれている同社運営母体の実験店舗でのテクノロジー施策や「LAWSON GO」のような新技術への取り組みで、後者が先日池田市伏尾台にオープンした「ハッピーローソンタウン」のような少子高齢化地域における地域密着型店舗構想などだ。
これらは課題解決や社会貢献の側面が大きいが、もう1つコンビニ業界を悩ませているのが売上の伸び悩みだ。
日本フランチャイズチェーン協会(JFA)によるコンビニ主要7社を対象にした統計で、売上や日販は微増、昨今のインフレ景況を反映したこともあり客単価はやや増加傾向にある。
一方で節約志向や価格面で優位性のある競合が増えたことで顧客の流出が続いており、来客数はマイナス成長となっている。コロナ禍が明け始めた2022年以降は直前までの反動で大きく売上等が伸びているものの、ここ数年はほぼこの方向性で落ち着いている。
従来であれば「出店数を増やすことで売上全体を補完できる」という考えもあったかもしれないが、コンビニ自体の拡大傾向も近年はほぼ横ばい状態にある。フランチャイズのなり手を探す問題に加え、店舗維持に必要な日販を稼ぎ出せる立地はほぼ網羅されつつあり、拡大するうえでの限界が近いという理由だ。
一方で、5月末時点で2万1,942店舗を抱えるセブン-イレブン・ジャパンでは、中期経営計画「経営レポート2025」の中で2030年までの国内1,000店舗純増をうたっている。
説明を見る限り、過疎地域向けのプレハブ店舗や商業施設等に設置された省人化サテライト店舗が拡大の中心になるとみられるが、それだけ従来の出店スタイルでは拡大に限界があることの証左にもなっている。
ハッピーローソンタウンが目指す「地域」の課題解決
6月4日の「ハッピーローソンタウン池田伏尾台店」のオープン記者会見で、ローソンの竹増氏は出店戦略について語り、「本部から同じフォーマットをただ流していくだけでは限界がある。(過疎地の先行ケースとして)和歌山県の龍神村からの事例があるが、既存のローソンとは棚割(品揃え)が違う」と説明。地域住民の声を聞きつつ、その町が必要とする商品やサービスを都度展開していく重要性を述べている。
これからいくつかローソンの新しい出店フォーマットの事例を紹介していくが、それらは画一的なものではなく、ニーズに応じてさまざまな“パーツ”を組み合わせ、その地域(あるいは場所)特有の課題を解決すべきだという考えだ。
実際、ハッピーローソンタウン1号店では通常のローソン店舗の品揃えに加え、阪急デリカのパンや野菜類の販売を行ない、小さな子供も遊べる空間を備えたコミュニティスペースを店内に設けるなど、地域の集会所的な役割を持たせている。
一般にコンビニのイートインスペースは日が暮れた段階で閉鎖されてしまうことが多いが、伏尾台店の飲食スペースは朝6時から夜10時までとかなり長く設定されていたりする。
閑静な住宅街で知られる大阪・池田市だが、伏尾台店は山あいの高台を切り開いて1970年代に作られたニュータウンで、阪急の池田駅からは遠く(バスで20-25分ほど)、住宅地周辺にはほぼ店舗が存在しない。(池田伏尾台店ができるまで)最も近い買い物をできる場所が、高台から降りてきたところにある山の麓のローソン店舗だった。
このあたりは龍神温泉で有名な龍神村も同様で、近場で買い物できる商店がほとんど存在せず、ローソンができたことで行動導線が変化した場所でもある。
ローソンによれば、今後こうした地域共生型コンビニを増やしていく計画で、特に「ハッピーローソンタウン」については2030年までに全国47都道府県に100店舗のオープンを目指しているという。
6月24日にローソンとKDDI、そして日野市が包括連携協定を締結したが、これもまたその出店計画の延長線上にある可能性が高いと考えられる。
竹増氏は池田伏尾台店のオープニングで「間もなく東京都でも同様のアナウンスを行なう予定」と述べており、ハッピーローソンタウン2号店・3号店への道筋になるかもしれない。
最適な店舗フォーマットを手探りで探す
従来であれば過疎地域や人口減少地域はコンビニの維持に必要な日販や流通網を十分に用意できないため出店対象外となることが多かったが、昨今の事情でそうした理由での出店忌諱は難しく、むしろ積極的に利用者のニーズを取り込むことでビジネスとして成立させようとしている。
成功例としては北海道の稚内市で、ローソンが2023年に初出店して以来、現在では7店舗を数えるまでに増加している。
店舗数が増えれば流通の要となる配送トラックの維持コストも少なくなるため、さらなる出店効果が得られる。他方で、セブン-イレブン・ジャパンがうたっていたように「店舗の簡素化で出店コストを抑えて過疎地域への進出」というのも重要だ。
出店コストを抑えつつ、フォーマットを現地事情に合わせて調整するという典型がオフィスローソンだ。
買い物はスマートフォンアプリのみに対応し、現金等での支払いはできない。現在、高輪ゲートウェイにあるKDDI本社17階の店舗や京橋にあるKDDI大阪ビル内のオフィスローソンは、いわゆるコンビニ的なカウンターサービスは一切存在せず、あくまでパッケージ商品やコーヒーマシンを利用できるだけだ。オフィス外に出なくてもすぐに商品を買って自分のオフィスデスクや休憩室で飲食ができるメリットがあるため、社員向けの福利厚生的な意味合いも強い。
冒頭で紹介した「ローソンKDDI大阪第2ビル店」の店舗はもともと違うテナントが入っていたようだが、ここはキッチンスペースが奥にあるため、特別に「からあげクン」や「まちかど厨房」といった揚げ物やできたて弁当を楽しむことができる。こういった部分が高輪ゲートウェイ17階との差だ。
もう1つ、現在ローソンとKDDIが実験しているのが省スペースでの出店が可能な簡易キットの「オフィスローソン」だ。詳細は既報のレポートを参照してほしいが、多摩センターにあるKDDIのデータセンターに設置された「オフィスローソン」では棚の什器をユニット単位で組み合わせて好きな形に配置できる。
30平米程度の面積を想定しているというが、これでSKU(最小在庫管理単位)は400程度ということで、商品点数でいえば一般的なサイズのコンビニの6分の1くらい、店舗面積では5分の1くらいに相当する。置ける商品は限定されるものの、前述の社員向けの福利厚生という観点も考え、自販機とコンビニの中間くらいの店舗だと考えていいだろう。
この場合問題となるのは商品の補充で、基本的には近隣のローソン店舗の配送網を使い、そちらの店舗担当者が“サテライト”の扱いとなっているオフィスローソン店舗まで商品を運び込む。バックヤードには配送済み商品をストックしておく冷蔵庫や棚があるため、当該のオフィスローソン店舗運営者(配送を受け取る基幹店舗がそのまま担当するケースもある)が商品の品出しを行なう。
おそらく一般的には朝の配送ルートに商品を載せ、始業から昼くらいまでのタイミングに商品を並べていく流れになるだろう。こうした小規模なオフィスローソンでは配送トラックを出すとコスト的に割に合わないため、近隣の店舗とひとまとめの形で運用するのが基本となる。
まいばす・トライアルGO対抗の「Lミニマート」
ここまでは社会貢献や福利厚生といった形での商圏拡大がメインだったが、次は競合対策が前面に出た新しい店舗フォーマットだ。
先日小平市にオープンした「Lミニマート」は、「ローソンストア100」をリニューアルしたものとなる。小平店に続き、つい先日には板橋にも2号店がオープンした。
「ローソンストア100」はもともと「SHOP99」という“100円ショップ”をローソンが買収して完全子会社化したもので、100円ショップの空気感を残しつつ、生鮮食品や弁当・惣菜、お徳用パックなどをラインナップに加えて地域スーパーのような形でリニューアルした店舗だ。レジ周りのシステムがローソン仕様に統一されているほか、一部のローソンPB商品を扱っている点を除けば、ローソンとは異色なテイストの店舗だったといえる。
だが現在、ローソンを含むコンビニ店舗は「まいばすけっと」や「トライアルGO」といった都市型ミニスーパーやチェーンのドラッグストアによって価格攻勢を受けており、特に回転の早い弁当などを中心に前出の顧客流出を起こしている。
「ローソンストア100」もカテゴリ的にはミニスーパーに属するが、価格や商品のラインナップの中途半端さという問題があった。特に価格や都市部の買い物ニーズに絞ったラインナップで構成されるライバルのミニスーパーらとは競争面で不利な状況にあり、この2点に絞った形でさらなるリニューアルを行なったのが「Lミニマート」となる。
食料品ではない日用品などは極限まで絞り込み、ローソン系列でありながら“ローソン的”な商品がほとんどない点が「Lミニマート」の特徴といえる。野菜や肉を含む生鮮品を拡充し、従来は扱っていなかった(温度管理が難しい)牛肉や(都市部での小規模世帯向けの)小分け商品をラインナップしたり、冷凍食品コーナーが特に充実していたりと、文字通り“ミニスーパー”と呼べるものになっている。
ローソンはかつて2014年に「ローソンマート」というミニスーパーを横浜にオープンして大規模な拡大計画を立てていたが、わずか1年でこの1店舗のみの出店で撤退している。
理由としては運営コストの高さや価格競争面での不利にあったとされるが、ここでの最大の失敗要因は「コンビニの(フルサービスという)店舗フォーマットをそのままミニスーパーに持ち込んで店舗面積を広げただけ」という点にあり、前述の“最適化”や“ニーズ”を無視したところにあったと見られる。
その意味では10年を経て出店コストを極力抑えつつ最適化を実現したわけで、かつての失敗も上手く昇華できたのではないかと言えるかもしれない。ハッピーローソンタウン、オフィスローソン、Lミニマートともにまだ始まったばかりの取り組みだが、どのように従来のコンビニの限界を超えていくのか引き続きウォッチしていきたい。

















