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KDDI、高輪の新本社始動 都市と人がつながる“実験場”

KDDIは、東京・高輪に移転した新本社を報道陣に公開した。JR東日本やローソンなどとともに「TAKANAWA GATEWAY CITY」で実験的に取り組む施策を披露した。

1.3万人のKDDI社員が集う“実験場”

KDDIは本社の移転にあたり、最寄り駅のJR山手線・高輪ゲートウェイ駅や、再開発された近隣のビル群からなる「TAKANAWA GATEWAY CITY」と連携し、「未来への実験場」としてさまざまな取り組みを実施する。KDDI本社は、約1万3,000人が利用する見込み。

来街者に対しては、高輪ゲートウェイ駅で降りて駅の改札を通過し、隣接する「TAKANAWA GATEWAY CITY」に足を踏み入れると、気候やリアルタイムの環境、1万人規模の人流シミュレーションも考慮した、パーソナライズされた特別な案内を受け取れるといったように、街を訪れる人と街がつながる仕組みを用意する。公共スペースを移動するロボットも活用され、例えば親子連れに飲料を配布するといったパーソナライズされたサービスを提供する。

カメラなどを活用、都市OSが来街者を分析・把握
男性二人のテーブルに公共スペースで稼働するロボットが近づく
フェイスケア用品のサンプルを配布
子連れの女性客には飲料を配布
公共エリアのロボットは、当初はプロモーション用のサンプル品などを配布し、ユーザー側に料金は発生しないような運用になる予定

働く人に対しては、KDDIは社内にオフィス特化型のコンビニを設置、ロボットによる回遊販売や注文に応じた配送を実現し、省人化や効率化を図る。ロボットは、エレベーターに乗ったり自動ドアやゲートを通過したりでき、人と同じように移動する。KDDIはほかにも、パートナーとの共創拠点の運営や、新しい働き方へに挑戦する各種のフロア・設備を用意し、新たな働き方を推進していく。

ローソンとロボットの活用

受付階の6階にあるローソンと連携、アプリで注文した商品を指定の場所まで配送するデリバリーロボット。入館ゲートやエレベーター、執務エリアへの自動ドアも通過できる
こちらはあらかじめ商品を積んだ回遊販売のロボット
上部の青いチェックインタグにスマホをかざし、アプリで購入できる
執務フロアの17階にある「ローソン S KDDI高輪本社店」。アプリによる決済でレジを廃し、通常であれば4名で運用する規模だが、スタッフは1名のみ
店内
商品にはバーコード
電子値札にもバーコードを記載
「ローソン S KDDI高輪本社店」の店内や回遊販売では、値札か商品のバーコードをアプリで読み取ってカートに入れ、決済する
専用のオフィスローソンアプリ
注文する商品が決まっていれば、アプリ上で商品を選びカートに入れて決済するだけでもOK
カートの中身
社員へのアンケートではカフェやレストランをしのぎ、コンビニの導入が最も支持された
スマホで店舗運営の省人化やレジ待ちのストレス低減を実現。「ローソン S KDDI高輪本社店」は土日が休業のため金曜日などにダイナミックプライシングも導入する
4名で運営する規模だが1名にできた
ロボットは回遊販売と社内配送の2種類

新オフィスの働き方改革

社員食堂のメニューの配送を行なうロボット(左)、社内メール便の拠点間配送を行なうロボット(右)
ローソンの配送・回遊販売ロボットは弁当などに非対応。このロボットで社食を注文して配送してもらえる
社内の拠点間を移動するメール便ロボット。最終的な配送は専属スタッフが行なう
飯田橋の旧本社にはなかったという社員食堂
この日は7種類のメニューが用意されていた
来客向けのショールーム
サテライトグロース戦略の“サテライト”をディスプレイの前に置くと詳細が表示される
データセンターの最新設備も解説。これは最新GPUや水冷設備
GPSが利用できない状況でも自立稼働する災害対策用ドローン
大型ドローン
10波共用基地局アンテナの内部

都市OSと高輪モデルを横展開

こうした取り組みの裏側では、街やKDDI、JR東日本などの、さまざまな種類のデータを収集し解析する基盤を「都市OS」として構築し、AIによる解析も駆使して、最適な提案やパーソナライズされた提案を行なっていく。これらは、ほかの都市にも展開できる形とし、JR東日本とともに、高輪の取り組みを「高輪モデル」と名付け、条件が合致するほかの都市に横展開も図っていく。

KDDIの松田社長
都市OSで活用される人流データ

KDDIの松田社長は、データの収集と分析を行なう都市OSを基盤とし、街を訪れる人と街で働く人の双方に「新しい価値を提供していく」と意気込む。「これまでは人が自ら情報を取りに行く形だった。これからは、街が能動的に情報を提供する」(松田氏)。

都市OSについてはJR東日本も積極的に取り組んでおり、都市OS「TAKANAWA GATEWAY URBAN OS」を中心に据えて、さまざまな連携を図っていくことが語られた。「TAKANAWA GATEWAY CITY」には環境、モビリティ、ヘルスケアという3大テーマがあり、特に通信とSuicaのかけ合わせや融合で、新たな価値を創造していく方針。モビリティについては、新規事業の「エアモビリティ」を展開する場所にもなる。

東日本旅客鉄道(JR東日本) 代表取締役社長の喜勢陽一氏
都市OS「TAKANAWA GATEWAY URBAN OS」を中心に据える