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動画生成AI「Sora」の躓きとコンシューマビジネスの難しさ
2026年3月28日 09:00
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OpenAIが動画生成AIサービス「Sora」の終了を発表しました。Soraアプリを停止するだけでなく、APIの提供も終了し、動画生成AIの一線から退く形です。
Soraについては、高い品質に驚きの声があがるとともに、アプリ提供開始当初には、「ドラゴンボール」や「ポケモン」など日本のアニメやキャラクターなどが生成されてしまうなどの話題で、政治的にも問題になりました。そのSoraが2025年10月の「Sora 2」発表から約半年での終了というのは、AIの世界の進化が速いとはいえ驚かされました。
Soraアプリでは、自由に映像を生成して、音声も付与できるほか、Soraの映像内に、実際の人物を入れ込んだり、コミュニケーションに活用することもアピール。動画を使うソーシャルアプリを目指していました。しかし、スタート当初に対して、ユーザー数の伸びはそこまででもなかったようです。
注目したいのはその理由です。OpenAIのコメントは以下のとおりです。
当社は、コンシューマー向けアプリおよびAPIにおけるSoraの提供を終了することを決定しました。計算リソースへの需要が高まる中、Soraの研究チームは引き続き、ロボティクスの進展や、現実世界の物理的なタスク解決に貢献する世界シミュレーション研究に注力していきます。
さらに、「AGIの実現に向け、エージェント型AIの実現に必要なコンピュート・計算リソースの確保が必要だった」と説明しています。つまり、動画生成に必要な膨大なコンピューティング資源を、他の用途に割り振る必要があったということのようです。
動画生成については、物理世界における物体の相互作用の理解など、「ワールドモデル」構築に必要とみられており、今後のフィジカルAI拡大などでの活用が期待されています。Soraはその中核とも言えるサービスですが、一方でこれらが収益を生み出すのは、まだ長い道のりが必要でしょう。OpenAIとしても、より目的の定まった、“今求められる”AI活用に集中すべきと判断したようです。
加えて、動画生成による肖像権や著作権に関する問題なども発生しました。ビジネスを拡大するには課題は多く、こうした状況も終了の判断を後押ししたのかもしれません。
一方で、動画生成AIモデルやサービスは各社が積極的に展開しています。AdobeやRunwayのほか、Googleも「Veo 3.1」などを展開しています。
これらにも類似した問題は発生しうるのですが、GoogleやAdobeは、広告での活用やビデオ編集/補間など、業務やワークフロー上での利用目的がはっきりした提案を行なっています。今後の収益化やサービス強化のための動画生成の“役割”がより明確になっているように見えます。この点は無尽蔵にユーザー拡大に走っていたSoraアプリとの違いと言えそうです。
そうした意味で、コンシューマーにとにかく動画を作ってコミュニケーションすることで、ユーザー基盤を増やすようなSoraの取り組みはまだ早かったといえるのかもしれません。
また、このSora撤退のニュースを見て思い出したのは、2025年10月のAnthropicの取材の1シーンでした。
OpenAIに直接言及した訳ではないのですが、Anthropicのポール・スミスCCO(最高商務責任者)が「Anthropicがエンタープライズビジネスとして運営されているため、消費者向けのAI企業のような利用者拡大のための機能やプレッシャーがない。だから、信頼できるAI導入に注力できる」と語り、企業が安心して利用できる環境が「競争力」になると強調していました。
Anthropicは、安全重視の姿勢がトランプ政権と衝突するなど、別の問題も生まれていますが、Soraの躓きは、コンシューマー向けのAIサービス展開の「難しさ」を表した事例といえるのかもしれません。
AGIに向かってとにかく爆走するというAI展開のフェーズは終わった。そんなことを感じたトピックでした。




