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「親しい人だけ」のはずが…… なぜBeRealから社内情報は流出するのか

ここのところ、社内で撮影した画像の流出によるトラブルが続出しています。西日本シティ銀行の行員が社内で撮影した「BeReal.(ビーリアル)」への投稿は、Xへと拡散し、炎上に発展しました。投稿には社内のホワイトボードが映り込み、顧客7名の氏名や営業目標が記されていました。同行は4月30日に謝罪文を公表、今後の再発防止に努めるとしています(謝罪文)。

他にも、日テレ「ZIP!」の制作会社社員による入館証やシフト表の投稿や、仙台市の小学校教員による同僚の個人情報漏洩など、次々と明るみになっています。

これらの情報流出は「BeReal.」への投稿から起きています。BeRealでなぜ社内情報の流出が止まらないのか、まずは若者がBeRealに惹きつけられる理由から解説します。

BeRealのゲーミフィケーションの仕組み

BeRealとは、フランスで開発され、日本では2023年1月頃から若者の間で急速に人気となったSNSです。SNSに疲れた若者が「リアルの共有」を求めて集まりました。日本ではMAU(月間アクティブユーザー数)の87%以上がZ世代という、ほぼ若者しかいないSNS(2025年6月時点)です。

世代別のSNS利用率を見ると、その差は歴然です。サイバーエージェントが2025年12月2日に発表した「2025年Z世代SNS利用率調査」を見ると、Z世代が利用しているSNSでは6位にBeRealが入っていますが、Z世代の利用率が22.8%に対し、その上の世代(29~60歳)は0.8%と、大きな差が開いています。

これは、LINEやInstagram、Xといった他のSNSとは異なる様相です。TikTokもほぼ同程度開いていますが、TikTokは上の世代が覗き見ることができるのに対し、BeRealは繋がった相手にしか公開されないため、サービス内で何が起きているのかわからないと思います。

Z世代の利用率が高い「BeReal.」(出所:サイバーエージェント)

BeRealの特徴は、独自のゲーミフィケーションにあります。

ユーザーは自分の好きな時間に好きな画像や動画を投稿できるわけではありません。1日1回、ランダムな時間に来る「BeRealタイム」の通知から2分以内に、アプリ内カメラで撮影した写真や動画を投稿します。

2分以内に撮影すると、「ボーナス」として好きな時間に追加で投稿ができるようになります。2分以内に撮れなかった場合は、後からでも投稿できますが、その場合は通知から遅れた時間が表示されます。

BeRealは通知が来たら2分以内に撮影する(出所:筆者)
通知から遅れても投稿できる(出所:筆者)

投稿は前後カメラでほぼ同時撮影した画像に定められているので、自撮りと目の前に広がる風景を公開することになります。インカメラは自分の顔を見ながら撮影できないため、撮った写真を確認した時点で「この写りはダメだ」と思った場合は撮り直しができます。撮り直した回数は投稿すると公開されるため、できるだけ1回で上手に撮りたい心理が働きます。

投稿の公開範囲はお互いに承認した人同士に限定されます。Z世代がBeRealで繋がる相手は特に親しいと思っている人だけです。例えば、学校やバイトの先輩、昔の同級生などはよほど親しくなければ繋がりません。自分の今の生活を見せてもいい人だけに絞っているのです。

BeRealは前後カメラで撮影した写真が1投稿になる(出所:筆者)

Z世代がBeRealを支持する心理

BeRealが流行した2023年は、5月に新型コロナウイルス感染症の法的な位置づけが「5類」へと移行した年でもあります。Z世代はオンライン中心の学生生活から対面授業へと本格移行し、友人とリアルで会う喜びを再認識していました。そのタイミングでBeRealが注目されたのです。

また、Z世代がInstagramの「映え」や「盛り」に疲れてきていたこともあります。Z世代は普段の生活をInstagramのストーリーズに投稿するのですが、24時間で消えるとはいえ、あまりみっともない写真や動画は載せづらいのが本音です。特に、メインとなっている「本アカ」では、あまり親しくない人ともとりあえず繋がっている状態であり、映えている生活をシェアしなければなりません。

プロフィール画面には映えている写真を厳選して載せていても、「今回はいいね数が少ない」「あの子よりフォロワーが少ない」といったマイナスの感情が湧いてしまいます。

そんなとき、BeRealが登場し、ごく親しい友人とだけ繋がれる新たな場が生まれました。さらに、当時は他ユーザーのフォロワー数や誰と繋がっているのかもわからなかったため、人と比較して落ち込まずに済むようになっていました(現在はフォロワーリストが見られます)。

また、Instagramのように加工を施した画像や動画は投稿できません。誰もが平等な条件で投稿を行ないます。この面白さにZ世代は惹かれ、日常を共有するようになったのです。

BeRealからは毎日投稿を促す通知が来ます。自分が投稿しなければ、友人の投稿にボカシが掛かり、見ることができません。また、毎日投稿すると「Streaks」という炎のマークとともに連続投稿数がプロフィールの横に表示されるようになります。一度投稿を休むと、0にリセットされます。

こうした仕掛けにより、ユーザーは毎日投稿したくなります。その結果、過去の投稿が日記代わりになるという楽しみも生まれました。自分だけが見られる「メモリーズ」はいつ何をしていたか、振り返ることができる場になっています。

なぜ公開範囲を超えて流出したのか

ここまで、BeRealは親しい人にだけリアルな自分を共有するSNSだと説明しました。それなら、なぜ社内情報を撮影した投稿がXなどに流出したのでしょうか。

投稿が流出するには、本人以外が投稿をスクリーンショットか画面録画で保存する必要があります。BeRealではスクリーンショットを撮ると本人に通知される機能がありましたが、現在通知されないようになっているため、どちらも可能です。つまり、本人は親しいと感じている誰かが投稿を保存し、公開範囲を超えて流出させたということです。

また、BeRealは、投稿からおおよそ24時間で他ユーザーから自分の投稿が見られなくなります。例外は本人がプロフィール画面に固定した投稿です。

今回の流出では、2年前と推測される投稿もありました。本人がプロフィール画面に固定していなければ、繋がっている人が24時間以内に保存し、ずっと保管していたということになります。

流出から炎上は、Xでフォロワー数の多いインフルエンサーに送るだけで発生するようになっています。一度バズれば、課金目当てのアカウントが次々とコピーを作成し、たちまち増殖します。やがてYouTubeやTikTokへと広がり、マスメディアも報じるようになり、企業も知るところとなります。今や、かつての炎上よりも桁違いのスピードで拡散されていくのです。

社内ルールの刷新や周知が必要

BeRealは撮影した写真を加工できないため、何が映り込んでいてもモザイクなどをかけられません。また、2分以内の投稿を目指すため、何が映っているかを気にせずに投稿してしまいます。「親しい人しか繋がっていないから大丈夫だろう」という油断も生まれます。

この仕組みが社内情報の流出へと繋がっているのは確かです。ただ、それだけではありません。そもそも、何が社内機密なのか、社員が理解していない可能性が高いと考えます。

BeRealでは、これまでバイトテロも多数発生してきました。ファーストフードやコンビニエンスストアなどのバックヤードで悪ふざけをしている投稿が拡散されています。これも「不衛生」だから叱られたと考えているかもしれないのです。

ホワイトボードに写っている個人名が知られると何がまずいのか、社員やバイトしか見られない掲示物や社内システムの画面、入館証などが外に出るとどういう事態になるのか。大人が改めて説明をする必要がありそうです。

また、BeRealだけを禁止しても他のSNSで情報漏えいが発生する可能性も十分にあります。「今日は残業してる」とPCの画面を撮影してLINEグループに送るなど、常に証拠を添える会話をしているケースも珍しくないからです。

まずは社内ルールの徹底やSNS活用のマナーを共有するなど、地道な教育が第一歩となります。勤務中に「カシャ」というシャッター音が聞こえたら、お互いに注意し合えるような職場にすることも大事でしょう。

また、物理的に不可能とする環境づくりも重要です。社用スマホが支給できる企業なら、私用スマホはロッカーに入れるなどの規則も有効です。もしくは、私用スマホの持ち込みを許可せざるを得ない場合は、持ち込めるエリアを限定する、利用時間を限定することも対策になります。

在宅勤務の場合、周囲に社員がいないため、気が緩む可能性が高まります。テレワーク時のSNS利用に関するガイドラインを改めて共有しておく必要があるでしょう。

SNSは個人の自由ですが、ひとたび仕事の場に持ち込まれれば、それは企業のリスク管理の問題へと発展します。SNSと共に成長してきたZ世代の心理を理解し、彼らの視点も考慮した対策を練ると良さそうです。

鈴木 朋子

ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 身近なITサービスやスマホの使い方に関連する記事を多く手がける。SNSを中心に、10代が生み出すデジタルカルチャーに詳しい。子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。