石野純也のモバイル通信SE
第81回
「AIの優位性」を活かし始めたグーグル「Pixel 10」
2025年8月21日 08:20
グーグルは、8月21日にPixel 10シリーズを発表した。ラインナップは昨年と同様で、無印モデルの「Pixel 10」に加え、上位モデルの「Pixel 10 Pro」やその大画面版にあたる「Pixel 10 Pro XL」も用意される。また、発売時期は10月と3モデルより遅れる形だが、フォルダブルスマホの「Pixel 10 Pro Fold」も発表された。
日本では、ドコモ、KDDI、ソフトバンクに加えて、「Pixel 9a」からPixelの取り扱いを開始した楽天モバイルも同シリーズを販売する。4キャリアから発売されることで、例年以上に販路が広がった格好だ。
Pixelならではのカメラ強化 ユーザーの「進化」を促す
デザイン面では、カメラバーを背面に備えたPixel 9シリーズを踏襲しているが、ハードウェアとしては、無印のPixel 10が新たに5倍の望遠カメラを搭載し、3カメラになった。チップセットは4モデル共通で、グーグルが独自に設計した「Tensor G5」を搭載する。その意味では、無印とProモデル2機種の差が少なくなった形だが、Pixel 10 Pro/Pro XLはAIによるズームを強化しており、最大100倍までの望遠撮影が可能になっている。
また、無印のPixel 10が12GBのメモリを搭載しているのに対し、Proモデルは16GBとより大きくなっており、AIを実行するうえでの差分になる。上記のズームの違いは、その1つだ。また、アップデートによって機能が追加される際に、Proモデル限定になる機能が出てくる可能性もある。
グーグルが、ハードウェアのアップデート以上に強調しているのが、Pixelが「Gemini時代のために作られた」スマホだということ。ハードウェアの性能以上に、Pixel 9から大きく進化しているのがAI関連の新機能だ。
例えば、カメラに関しては上記のような望遠性能の進化はあるが、それ以上におもしろいのが「カメラコーチ」という機能。これは、Pixelが被写体を分析して、最適な構図をアドバイスしてくれるものになる。いくらスマホのカメラ性能が向上しても、最後は撮影の“センス”が必要になる。この部分は、単純な機能だけでは補いきれなかった。
ここにGeminiを使うことで、撮影者自身のスキルを向上させることができる。スマホのカメラが画質競争になっているのはご存じのとおりだが、AIによって、それとは別軸で“いい写真”を撮れるようにしているのがPixelの新しいところと言える。構図をアシストする機能はこれまでもあったが、AIを適用することで、柔軟性が高くなっているのがポイントだ。
アプリ間の移動を減らすために設計された「マジックサジェスト」という機能にも対応する。これは、Geminiがそれぞれのアプリ内にある情報を統合して、ユーザーに提案する機能。友だちが会いたいとメッセージを送ってきたとき、地図やカレンダーの情報を表示したり、電話中にメールにあった予約の詳細がポップされたりする。よりエージェント的に、スマホ側からユーザーに提案をする機能と言えるだろう。
強化されるAI機能 「AIの優位性」を活かすPixel 10
音声通話の翻訳機能にも対応する。通話を通訳してくれる機能は、サムスン電子のGalaxy AIが真っ先に対応していたほか、XiaomiやZTEのスマホにも実装されていた。翻訳に定評のあるグーグルだが、Pixelシリーズは電話アプリへの統合には後れを取っていたと言えるだろう。そのぶん、グーグルは一工夫を加えることで他社との差別化を図っている。
一般的な翻訳機能は、ある程度自然なアクセントながら、声色は固定されている。これに対し、Pixelシリーズの「マイボイス通訳」は、翻訳後の音声を話者の声に近づけることで、より自然に相手の言語で会話ができるようになっている。
こうした処理を端末上で完結させられるのは、Tensor G5の処理能力や端末上で動作するGemini Nanoの力だ。また、キーボードアプリのGboardにも、直接呼び出せるライティングツールが組み込まれるという。
これらに加えて、Geminiを使ったグーグルのAIサービスとして評判が高い「NotebookLM」がプリインストールされ、特別な機能が加わる。同じく文字起こしの精度の高さで定評のあるボイスレコーダーや、スクリーンショットを整理する「Pixelスクリーンショット」との連携だ。
ボイスレコーダーで文字起こししたテキストや、Pixelスクリーンショットで撮りためておいたスクリーンショットを、NotebookLMのソースとしてアップロードできるようになる。NotebookLM自体は他のスマホでもインストールすれば使えるが、Pixelならではの機能と連携してきたところが新しい。
これまでのPixelも、オンデバイスで実行できるPixelならではのAIと、グーグル自身が手がける他のサービスが先行対応したAIが混然一体となっていたが、Pixel 10シリーズでは前者がより強化された印象を受ける。ここで挙げたものの中では、カメラコーチやマジックサジェスト、通話の翻訳などにオンデバイスAIが活用されており、一気に機能に広がりが出た格好だ。
背景には、Apple Intelligenceを前面に押し出すアップルや、Galaxy AIの先進性をアピールするサムスン電子とのAIスマホ競争があると見ていいだろう。この点では、AIモデルを自身で開発しつつ、それを動作させるチップセットまで設計しているグーグルが有利な立場にある。グーグルは、Pixel 10シリーズでその優位性を今まで以上に生かす方向に舵を切ったと言えそうだ。











