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育休「給付金厳格化」その後どうなった? 最新保活動向
2026年3月5日 08:20
2026年4月入園の保育園の当落状況が出揃いました。近年の保育園入園や育児休業にまつわる制度は毎年変更されており、数年単位で見ると状況がガラリと変わっています。
特に2025年は大きな変更や新たな施策が多く見られた年度です。4月に育児休業給付金の支給延長が厳格化したほか、出生後休業支援給付金や育児時短就業給付金が開始するなどの変更が加えられています。今までは「保育園に落ちて育休を延長したい」という人のために、あえて落ちやすくする制度もありましたがそういった制度が撤廃されたのが2025年4月です。
自治体単位で見ると、東京都では25年9月から第一子の保育料無償化がスタート。保活情報の収集や見学予約、入所申請をオンライン&ワンストップでスマホからできる「保活ワンストップサービス」も本格ローンチするなど、大きな動きがありました。
今回は、保育園周りの制度はどのように変更され、どう影響が出ているのか解説していきます。
情報格差で明暗 2025年度の保活
筆者は2015年からライター業のかたわら保活セミナーを行なっており、この10年、各地の入園要項や保育データを読み込み、保育園事情を深掘りしてきました。保活を取り巻く状況は本当に変わったな、というのが実感です。
2025年度の保活を総括するなら「情報格差で明暗が分かれた年度」とでもいうべきか……。数々の新制度が施行されたわけですが、情報を取りに行けた人はうまく活用できた一方で、知らずにいた人は恩恵を受けられなかったという事例をいくつか見聞きしました。
後々振り返ると、潮目が変わったのはあのときだったな、ターニングポイントだったな、といわれる年に2025年度はなるかもしれません。
まず、この1年(24年度と25年度比較)で、保活や育休、給付金に関する制度はどう変わったか、ざっくり表にまとめてみました。
こうして並べてみると、「わりと大ごと」なことがいくつも起きています。
特に注目を集めたのは、夫婦で育休を取ることで、手取りが実質10割になるという「3.出生時休業支援給付金」。2022年から始まった「2.産後パパ育休(出生時育児休業給付金)」の制度を、さらにブーストするのが「3.出生時休業支援給付金」で25年4月に始まりました。2025年は、男性の育休取得率は過去最高の40.5%に。前年比10ポイント以上も大幅アップしたのですから、他の男性育休推進施策も合わせて、なかなかの成果といえます。
ただ、この制度、夫婦ともに新たな手続きが必要なため申請が漏れやすく、会社から積極的なアナウンスもなされないなどの理由で、なかなかスムーズには進まない模様。そもそも知らなかった! という人も少なからずいて、情報格差が課題といえます。
また、給付までに時間がかかる点も大きな課題。2カ月分をまとめて申請・給付する仕組みになっている上、申請のタイミングは産後。夫婦の収入が途絶えるのに加え、支給まで2~4カ月のタイムラグが生じるとなると、経済的なゆとりがなければシンドイ……かもしれません。
25年度から一気に3つの新制度が始まったことで、申請者のみならず会社の事務方の作業も煩雑化し、ハローワークの処理状況にも遅れが出ている状況のようです。また、そもそも雇用保険に絡まない自営業者などは対象外となっている制度もあり、今後の改善&進化に期待といった状況です。
「保育園落ちたい」は減ったのか
25年4月に「1.育児休業給付金(通常育休)」が厳格化され、これまで一定数いた「保育園落ちたい」層が減ったのは、25年度保活の最大トピックといえるでしょう。育児休業中の貴重な収入源でもある育児休業給付金ですが、25年4月から支給要件が厳しくなる(厳格化する)ため、「もらいにくくなる」と言われていました。
しかし、これはフタを開けてみたら「実質これまでと同じじゃん!」と拍子抜けした人が多かったようです。
あえて保育園に落ちて育休(+給付金)を延長する、いわゆる「落選狙い」を是正するために、雇用保険法施行規則の一部を改正して始まった厳格化でしたが、結論から言うと以下の5点の要件を満たしていれば、1園だけの申込みでも給付金の延長対象になりました。
1.提出書類に不備がない
2.規定の月までに入園申込をしている
3.内定辞退していない
4.申し込んだ園が自宅か職場から30分以上離れた施設のみになっていない
5.申込書の書式が「育休延長を希望する」など積極的な延長希望の文言になっていない
SNS上では「1園だけだと給付金の延長対象にならない」などの噂が出回って当初は混乱していましたが、本稿を書いた2026年2月現在、行きたい保育園が1園しかなかった人も、きょうだい同園のため1園しか書かなかった人も、落選狙いで人気の1園のみしか書かなかった人も、(1)~(5)の要件さえ満たしていれば育児休業給付金は給付されているようです。
ただ、驚いたのが、意識の変化です。
コンプライアンス意識が高まっている昨今、落選狙いによる給付金の延長は、ルール的にはセーフでもモラル的にどうなの!? という意識変容が、思っていたよりも速いスピードで起きているように感じます。SNSは批判の声だけが目立ちがちではありますが、これまで暗黙のルール化していた育休給付金の延長が、厳格化を境に「大きな声では言えないこと」という色合いを(再び)濃くしている印象です。
では、給付金延長の厳格化により、育休を延長せず復職する人、給付金が打ち切られても育休を延長する人、どちらが多いのでしょうか。
前述のように、意識の変化を受け、あえて落選狙いをしない選択をした人は今年度確実に増えましたし、今後も増えていく可能性はあります。
育休を延長せず復職した人、給付金なしで育休のみを延長した人、また、「落選狙い」が減ったかの正確な数字は、いま公表されているデータから計測するのは難しい状況。ですが、もし厳格化をきっかけに育休延長者が減ったとすると、0歳児保育の利用者が大幅に増えるはずです。そのためには、厳格化直前の25年の4月入園者の状況と、厳格化後の26年の4月入園者の状況(26年5~6月ごろ発表)を比較してみないと何とも言えません。
現状、全国の都市部といわれる地域を調査したところ、依然として0歳児クラスより1歳児クラスのほうが空きが少ない傾向にあります。給付金を延長したか否かはさておき、育休延長→1歳児クラスで入園……という定番ルートを選んだ人はまだまだ多数派だったといえるでしょう。
今も多いのが「潜在的待機児童」
現在26年4月入園の結果が出揃った頃ですが、今回の保活の傾向についても見ていきたいと思います。
全国の約9割の自治体で待機児童ゼロとなっている昨今、保育園が入りやすくなったのか? というと、いや~都市部ではそうともいえないな~という傾向が続いている感じです。
25年に生まれた子どもの数は、前年比2.1%減の70万5,809人。10年連続で子どもの数が減っているというのに、なぜ保育園全入時代が来ないのか。それは、都市部への集中と過疎化という、人口分布のアンバランスがなせる業としか言いようがありません。
行きたい保育園に落ちて、しかたなく育休延長をしたり、小規模保育園や認可外保育施設に入園して認可保育園の空きを待っている……という潜在的待機児童(≒隠れ待機児童)は、都市部を中心に相変わらず(しかもまあまあの数で)存在しています。激戦区といわれる東京都世田谷区を例にとると、25年4月の潜在的待機児童数は1,326人でした。このうち育休延長者は49人。意図的な「落選狙い」を除いたとしても800人前後の人が“保育園に落ちた”という経験をしていることになります。
東京都「第一子無償化」の影響は?
25年の新制度では、東京都では9月1日から第一子の保育料が無料になりました。それに伴い26年4月入園の倍率が上がったという話も聞こえてくるようになりましたが、実際にはどうでしょうか。
筆者が26年4月の入園申請をした育休中ママ達にヒアリングをしたところ「普段なら空いている保育園が無償化の影響で埋まったらしいと噂になっていた」とか、「無償化の影響で競争率が上がるかもしれないと区役所で説明された」などの声は、実際にいくつか聞きました。
ただ、どうにもピンとこないのが、保育料がタダになるからといって、もともと保育園に入れるつもりのなかった人が急に「そうだ、保育園入れよう!」となるのかな……? ということ。
無償化は少子化対策に有効だと思うので、今後子供が増えれば必然的に保育園の需要は高まるとは思います。ただ、それは数年スパンの話。25年9月に始まった無償化を受け、次年度4月に倍率が上がるというのが、何となく腑に落ちないのです。
保育園の入園選考は指数がすべて。フルタイムで働く人から順に働く時間・日数に応じて高い指数が与えられるため、求職中(=これから働き始める)の人はどうしても低指数からのスタートになります。特に第一子となると、きょうだい加点もないため、一斉に申し込みが集中する4月入園は圧倒的に不利。
もちろん、年度途中にタイミングよく空きがあった場合は、求職中でも入園できた人はいたはずです。つまり、無償化によって保育園の倍率が上がったとすれば、4月入園でなく年度途中の入園枠だったのかな? と推測しています。
新制度「時短給付金」の利用状況は?
25年4月に始まった新制度には、上述の表の「4.育児時短就業給付金」があります。この給付金が始まった背景についても紐解いていきましょう。
時短勤務中の収入減をアシストしてくれる育児時短就業給付金。子どもが2歳になるまでの間、時短勤務中の賃金の10%(※支給率は条件によって異なる)を支給してくれるという、なかなかにありがたい制度です。申請は原則2カ月分を、2カ月ごとに行ないます。
一般的に20~25%程度収入が減るといわれる時短勤務ですが、この給付金を活用すれば、減った収入の一部を補填できます。
育児時短就業給付金は厚労省の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において、23年11月ごろから議論が始まりました。時短勤務による収入減が育休明けの離職やキャリア中断の要因になっていること、そして、女性だけに偏っている時短勤務を男女ともに取りやすくし、柔軟な働き方を推進していく目的のもとに生まれています。
フレックスタイム制や変形労働時間制、裁量労働制、いわゆる「シフト制」の人にも配慮された制度設計となっているのはよいところなのですが、これもまた、前述の「3.出生時休業支援給付金」と同じく、手続きが煩雑な故か、知られてなさすぎる故か、サクサクとは進まない模様。
気がついたら対象期間を過ぎていた……という人や、時短開始時と後とで賃金に差がなく給付対象にならなかったという人もチラホラ。時短勤務を開始してからしか申請ができないこともあり、給付までにかなりのタイムラグが生じることも課題になっているようです。
子が2歳までという点も、気になるところです。育児の時短勤務は法律上、子どもが3歳になる誕生日の前日まで。3歳までは時短勤務をする人が多い中、なにゆえ給付は2歳までなのか……。これまでになかった給付金がもらえるようになったのはありがたいですが、今後さらなるブラッシュアップが望まれます。
少子化で保育園の閉園は3年連続で増加
毎年の保活動向を探るにあたり、顕著なのは少子化の影響です。少子化の加速により保育園の閉鎖は増えており、25年7月9日の帝国データバンク発表によると、2025年上半期に発生した保育園の倒産や休廃業、解散件数は22件に達しました。これは、前年同期の13件を上回る数字です。
理由は、少子化の影響による保育園の余剰感と入園者数の減少です。保育士の確保難に加え、食材価格の高騰が経営を圧迫して、特に中小保育園で運営が困難となるケースが増加したようです。定員割れと人件費・物価高騰により、保育園の約3割が赤字経営ともいわれるほど。厳しい状況ですが、今後も淘汰は続いていくでしょう。
なお、利用者目線で考えると、認可保育園の選考・入園調整は自治体が行なっているため、たとえ保育園が閉園となっても他園の受け入れ枠を調整するなどの配慮はなされると思われます。これが認可外保育園となると、ある日突然閉鎖という事態も避けられないため、経営母体が小規模な園や極端に園児数が少ない園などは、年度途中の閉園リスクもあることを念頭に置いておく必要があります。
保育園は入りやすく、年度途中の入園も
めまぐるしく変わる保活周りですが、今後の傾向について確実に言えるのは、保活のDX化が進むということ。東京都は25年9月から、情報の収集や見学予約、入所申請をオンライン&ワンストップでスマホからできる「保活ワンストップサービス」を本格ローンチしました。
開始時点で、都内19自治体・1,276園の見学予約ができ、認証保育園や認可外保育園などその他の保育施設655園の情報収集&見学予約も可能というもの。オンライン入園申請への導線もできています。
東京都の試みによって、他の都道府県や自治体に広がっていくことは今後大いに考えられます。うーむ、保活も進化していますね。
もう一つは、年度途中での入園者が増えていくだろうということ。育休給付金厳格化を受け、意識が変容しているいま、4月の一斉入園ではなく各々が1歳を迎えるタイミングで復職する人は増えていくはずです。こうなると、年度終わりに近づくほど枠が埋まってしまい、早生まれの子がどうしても不利になってきます。何らかの是正策が必要になってきそうですね。
まだまだ都市部の潜在的待機児童問題が残っているとはいえ、今後、基本的に保育園が入りやすくなっていくのは間違いないでしょう。
とはいえ、10年間保活をウオッチしてきて、「保活は役所で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!(懐)」という思いだけはずっと変わりません。
保活は自宅から半径数km以内という、きわめて狭いエリア内で展開するもの。1棟でも大きなマンションが建ったり、保育園が閉園・統合などすれば、とたんにその年度だけグッと競争率が上がるという……。環境因子に大きく作用されるものなのです。
この10年で、パパも保活の当事者として関わるご夫婦が飛躍的に増えました。どうか夫婦ふたりで支え合いながら、保活という情報戦を進んでいっていただきたいと思います。









