ミニレビュー

手数料無料で個人間送金、高いポイント還元も魅力な「Kyash」

消費税増税時のポイント還元という時事的な話題もあり、最近話題のキャッシュレス支払いにおいて、還元率の高さから注目を集めているのがウォレットアプリ「Kyash」だ。クレジットカード感覚で利用でき、2%以上のポイント還元を得られるKyashの魅力を、Kyashのヘビーユーザーを自称する筆者が紹介する。

審査不要、“ほぼ”クレジットカードとして利用できるKyash

Kyashは、「バーチャルVisaカード」というVisaブランドのクレジットカード番号が発行でき、「ほぼ」クレジットカードと同様に使える決済サービス。基本的にはスマートフォンアプリとして利用する形で、AndroidとiOSの両方に対応している。

一般的なクレジットカードと違って審査や銀行口座登録の必要がなく、ユーザー登録のみで利用を開始できるのが特徴。利用する際にはKyashへの入金が必要だが、入金方法としてはコンビニ、ATM、デビットカードからの入金のほか、Visa/Mastercardのクレジットカードを登録することで自動チャージも可能だ(JCBは現在のところ非対応)。

コンビニ、ATM、デビットカードやクレジットカードのチャージに対応

ただし、完全にクレジットカードと同じように使えるわけではなく、いくつか制限がある。月の利用限度額は最大12万円、1回あたりの利用限度額は最大5万円のため、高額の支払いには利用できない。このほか、カードの有効期限は5年、有効期限内の利用限度額は100万円となっており、期限内に100万円を超える場合はカードを更新する必要がある。

また、Kyashで発行されるクレジットカード番号はプリペイド扱いのため、利用できないサービスも存在する。先ほど「ほぼ」同様と表記したのはこのためだ。具体的にいうと定期購読のように毎月定期的に課金が発生するようなサービスはKyashでは利用できない。また、筆者の利用した範囲ではホテルなどの決済でKyashが利用できないことがあった。おそらくバーチャルカードの利用が対象外になっているのだろう。

Google Play ストアの支払いに設定しているため、定期購読の「ジャンプ+」は毎回支払いエラーになる(実際には別設定しているクレジットカードで決済は行なわれる)

2%以上の還元が得られるキャッシュバック。Suicaチャージでの利用がお勧め

こうした制限がある中で筆者がKyashを愛用する一番の理由はポイント還元率の高さだ。Kyashでは現在2%のキャッシュバックを実施していることに加えて、Kyashにクレジットカードでチャージすることでクレジットカードのポイントも還元され、実質2%以上のポイント還元になるからだ。筆者の場合、メインで利用しているdカードをKyashに登録しており、dカードの1%とKyashの2%で合計3%が還元されている。

月の上限が12万円のため大きな買い物には利用できないのだが、筆者がメイン利用しているのはSuicaへのチャージだ。Kyashでは電子マネーのチャージや金券の購入、公共料金の支払いはポイント還元の対象外になっているのだが、Suicaだけは「1回につき6,000円以上のチャージ」が2%還元の対象となる。Kyashへチャージした際のdカードも1%還元されるので、前述の通り実質3%の還元になる。

Kyashのキャッシュバック例。上限12万円近くまで使ったことで約2,000円をキャッシュバック

手順としては複雑に見えるかもしれないが、要は今までクレジットカードでSuicaチャージしていたユーザーなら、その間にKyashを挟み込むイメージだ。一度設定してしまえばKyashでSuicaにチャージすると、その金額が自動的にクレジットカードから引き落とされるため、明細が「Suicaチャージ」ではなく「Kyash」になる以外大きな違いはない。

筆者の場合、これまではSuicaへのチャージのためだけにビューカードを契約していた。これはビューカードであれば「モバイルSuicaチャージへの年会費1,030円が無料」「ビューカードからのSuicaチャージは1.5%還元」「オートチャージが設定できる」という特典が魅力だったためだ。

しかし、iOSのApple PayやAndroidのGoogle Payを使ったSuicaチャージでは年会費の1,030円が不要となり、さらにポイント還元もKyashを使えば実質3%と倍のメリットがある。

残るオートチャージはビューカードのみの「特権」だが、手動チャージに手間がかかるJR東日本のモバイルSuicaアプリに比べ、Google PayでのSuicaチャージは「アプリ起動」「チャージをタップ」「ボタンをタップ」という3ステップでチャージできるためさほど手間がかからない。

Google PayからのSuicaチャージ。アプリを起動して「チャージ」を選択
金額を確認して「チャージする」で完了。動作も軽快
Suicaアプリからのチャージ。アプリを起動して「チャージする」を選択
金額を選んでログイン
画面がわかりにくいが「クイックチャージ」をタップが正解
入金方法を選んでチャージ完了。処理時間もGoogle Payに比べると遅い

また、今までのオートチャージもSuicaの利用頻度が圧倒的に高いため、チャージ上限の2万円に対して「1万円を切ったら自動的に1万円をチャージ」という運用をしていた。手動チャージの場合も同様に「1万円を切ったことに気がついたら手動で1万円をチャージ」と運用することでほとんど苦労することはなくなった。

なお、定期券についてはJR東日本のモバイルSuicaアプリでないと利用できないため、ビューカードは引き続き契約している。自社サービスとはいえ定期券や年会費やオートチャージなどのビューカード「特権」は囲い込みに近く、オートチャージや定期に関しては年会費を支払っても利用できないという制限は、そろそろ撤廃して欲しいところだ。

ポイント還元率の高さで注目の「LINE Pay」との比較

ポイント還元の高さという点では、LINEの「LINE Pay」も注目されているキャッシュレスの1つ。こちらは月に10万円以上決済すればKyashと同じ2%還元が得られるが、クレジットカードでのチャージに対応していないため、Kyashのようにクレジットカードのポイントを還元することができない。そのため、筆者のように実質3%の還元を得ようとすると、Kyashの利用限度額である12万円の1.5倍、18万円まで使って同額、ということになる。

また、Kyashは複数のスマートフォンで同時に利用できるのに対し、LINE Payは1つのスマートフォンにしか設定できない。多くの人にはスマートフォン1台で十分だと思われるが、筆者は、iOSとAndroidを2台持ちしており、端末変更の頻度も高いため、LINE Payを含むLINEの「1端末のみインストール」制限はどうにも使いにくい。

このほかKyashはユーザー登録してクレジットカードを紐付けるだけで利用できるのに対し、LINE Payは銀行口座登録による本人確認が必要など導入のハードルも高い。 そのため、現状ではLINE Payを使わずKyashを活用している。

LINE Payの魅力としては、利用上限がないため月の利用が20万円以上であればKyashよりも実際の還元は大きい。また、コミュニケーションツールとして普及しているLINEのサービスという点も重要だろう。

なお、LINE Payでは2019年7月までさらに3%を還元することで最大5%の還元を謳うキャンペーンを実施しているが、この対象はQR/バーコードで支払った場合のみ。物理カードとして全国のJCB加盟店で使える「LINE Payカード」は対象外のため、利用できる店舗は限られる。

PayPayや楽天ペイなどのQRコード決済と連携してポイント還元率アップ

本稿はもともと10月中に執筆していたのだが、原稿が終わって提出したちょうどそのタイミングでKyashに障害が発生し、クレジットカードからのオートチャージ機能が制限される事態となった。コンビニやATMからの事前チャージは可能だが、その場合は事前にチャージしておいた金額しか使うことができない。Kyashをほぼクレジットカード感覚で利用できていたのはひとえにこのオートチャージ機能にあったのだと思い知らされた。

その後オートチャージ機能は11月27日に復旧したのだが、その間に話題を集めたキャッシュレス決済が、ソフトバンクのQRコード決済サービス「PayPay」だ。サービス自体は10月から開始していたが、11月22日に発表した「100億円あげちゃうキャンペーン」が大いに話題を集めた。12月4日から開始となったが、PayPayで支払った金額のうち20%を合計100億円までキャッシュバックするという大規模なキャッシュバックキャンペーンだ。

同じキャッシュレスのサービスの競合と思われるかもしれないが、むしろ現状ではKyashとPayPayは非常に相性のいいサービスになっている。というのもPayPayはチャージ残高が足りない時に登録クレジットカードからチャージする機能を備えており、このクレジットカードとしてKyashを登録できるからだ。

本稿の前半ではSuicaのチャージにKyashを利用する例を紹介したが、このSuicaの部分がPayPayに置き換わると考えればいい。筆者の例ではdカードのポイントが1%、Kyashのキャッシュバックが2%の合計3%だったが、PayPayは200円で1ポイントのポイント還元があるため、この例では3.5%までキャッシュバックが高まることになる。

チャージ残高が足りない状態でPayPay支払い
該当の金額がKyashから支払われている

また、PayPayと同じくQRコードで決済する「楽天ペイ」も、PayPayと同様にKyashのクレジットカード登録が可能であり、楽天ペイ支払いで0.5%のポイント還元を受けられる。上限が12万円という制限はあるものの、PayPayや楽天Payと組み合わせることでKyashはよりさまざまな場所で活用できるようになるだろう。なお、NTTドコモのQRコード決済「d払い」は、クレジットカードの登録に本人認証サービスが必要なためKyashは登録できない。

飲み会の割り勘でも大活躍。手数料無料が魅力

ポイント還元の高さばかり言及してきたが、利便性という点でもKyashは魅力的だ。前述の通り知人との飲み会などでは、端数までしっかり割れて小銭の用意が不要であり、手数料も発生しないKyashでの割り勘がとても便利。Kyashユーザー同士はもちろん、Kyashを持っていない人がいたとしても、(本人の意志を大前提とした上で)その場でユーザー登録してすぐに支払える。割り勘方法もURLで共有できるため、相手のアカウントや電話番号を知らなくてもURLさえ送れれば請求できるという点も利便性が高い。

手軽かつ手数料無料で使える個人間送金

受け取りだけならクレジットカードの登録は後回しでいいし、その場で支払うなら割り勘でも2%以上のポイントが還元されるのも嬉しい。今までは飲み会の割り勘をつい後回しにしてしまい、翌日支払金額がわからなくなってしまうことも多々あったが、Kyashで支払うと履歴にしっかり残り、コメントもできるためこうした面倒から解放された。

当初はアプリのバーチャルカードのみだったKyashも物理のプラスチックカードとして「リアルカード」が発行できるようになった。最初は興味本位で発行したのだが、のちにリアルカードを発行すると1回の利用限度額が5万円に引き上げられるという特典が導入されたことに加えて、スマートフォンケースに入れておく予備クレジットカードとしても活躍している。

Kyashのリアルカード

スマートフォンとクレジットカードを一緒に持ち歩くのは不安だったのだが、Kyashの場合は決済した瞬間にアプリに通知が来るため不正利用に気がつきやすく、アプリから簡単にカードを停止できる。また、万が一不正利用されても月の上限が12万円で止まるという点は安心だ。

急速かつ着実にサービスを拡充。今後の更なる展開に期待

筆者がKyashと出会ったのは2017年末のこと。当時は本稿で紹介した2%還元も実施されておらず、単に「手数料が不要な個人間送金」として注目していたのだが、その後は2%に加えて物理カードの発行やQUICPayへの対応、セブン銀行ATMからのチャージなど急速かつ着実にサービスを拡充してきている。QUICPayについてはAndroidのみの対応であり、SuicaチャージにKyashを使っているとさほど魅力はないのが正直なところだが、支払い方法の間口が広がったという点では期待が持てる。

2%という高いキャッシュバックがいつまで続くかわからないが、キャッシュバックが終わったとしても本人確認不要ですぐに利用でき、割り勘にも便利なKyashの魅力は変わらない。クレジットカードがなくてもコンビニエンスストアでチャージできるし、セブン銀行ATMならレジに行かなくてもチャージが可能。受け取った金額もオンラインショッピングなどで幅広く使える。現金不要、手数料も発生しない割り勘の魅力を、ぜひKyashを通じて体験して欲しい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝