キャッシュレス百景

第1回

わずらわしさからの解放。Suicaを核に、nanacoやiDで電子マネー中心生活

電子マネーに加え、QRコードやバーコードによるスマホ決済など、近年注目が集まる「キャッシュレス決済」。キャッシュレス百景は、“実践者”達の生活を通して、現代のキャッシュレス生活の一端を紹介する連載です(編集部)

Edyの実用サービス、Suicaの商用サービスが始まった2001年から20年弱が経過し、電子マネーという仕組みはすっかり当たり前のものとして根付きつつある。来年の消費税に向けてキャッシュレスでの支払いは増税分の2%を還元するという仕組みが検討されるなど、キャッシュレスへの注目は非常に高まっている。

一方で、電子マネーは知っているがまだ使ったことがない、使ってはいるが交通系電子マネーだけ、という人も少なくないだろう。今回は自他共に認める電子マネー好きとして、電子マネーの魅力を改めて振り返りつつ、主要な電子マネーの使い方を紹介したい。

筆者が設定している電子マネーの一例。ヨドバシカメラのポイントカード、スターバックスの「Mobile Starbucks Card」なども設定済み

電車利用時のわずらわしさから解放してくれるSuica

主要な電子マネーやポイントサービスは利用できる限りほぼスマートフォンに設定している筆者だが、その中でも利用率が高いのはJR東日本の「Suica」だ。JR東日本の乗車券や特急券はもちろんショッピングにも利用でき、フィーチャーフォンやAndroidに加えてiPhoneでも利用可能となった。首都圏の鉄道やバスに対応した「PASMO」とも相互連携しているため、首都圏の移動にはもはや欠かせない存在といっていい。

JR東日本の電子マネー「Suica」

首都圏以外の対応も進んでおり、JRグループ以外のバスや私鉄でもSuica/PASMOが使えるようになっている。先日も出張で京都へ出かけた際、京都駅からの移動に使った地下鉄やバスがSuicaの相互利用に対応しており、東京にいるのとほとんど変わらない感覚で過ごすことができた。

Suica専用改札も当たり前の風景に

もはや日常生活において当たり前になりすぎているSuicaだが、改めてその利便性を考えてみると、「乗車賃を調べる」という手間から解放されたことが大きい。Suicaを使わず電車に乗ったことがない、なんて世代もいるのだろうが、駅に行くたびに路線図を見て値段を確認、路線図にないような駅はとりあえず乗り換えの駅までの乗車券を買ってあとで精算……なんてことを行なっていた頃から考えれば、Suicaをかざすだけでどこまでも電車を乗り継いでいけるSuicaの便利さは隔世の感がある。

ほとんど見ることがなくなった駅の路線図

一方で気をつけなければいけないのはSuicaのチャージ金額だ。Suicaはあらかじめ金額をチャージしておくプリペイド式のため、残額が少なくなっているのにチャージをしていないと、買い物はもちろん改札を通る時もエラーが起きてしまう。かくいう筆者も、知人と電車に乗ろうとして自分のチャージが不足しており、慌ててチャージしている間に目的の電車を逃してしまった……、という経験も少なからず体験している。

そのため最近はSuicaのチャージ上限である2万円ギリギリまでチャージする運用に切り替えた。具体的にはチャージ残額が1万円を切るとすぐに1万円をチャージする、という方法だ。最初は1万円という大金をチャージするのになぜかためらいがあったのだが、おかげでチャージ不足で迷惑を掛けたり時間に遅れたりするロスがほぼなくなった。

少額を都度チャージしても結局使う金額は変わらないし、電車に乗る機会が多い人であれば確実にチャージ金額は減っていく。紛失時などの不安もあるものの、Suicaを便利に使うのであればある程度余裕を持ったチャージ金額を心がけたい。

なお、Suicaのチャージについては、ウォレットアプリ「Kyash」を通じてチャージしている。対応するクレジットカードを持っていれば、クレジットカードとKyashを連携するだけで2%の還元が手に入り、支払いもいつものクレジットカードにまとめられるのでお勧めだ(注:11月12日現在、Kyashに問題が発生しており、自動チャージ等に制限あり)。

コンビニ商品が「何でも買える」幅広さが魅力のnanaco。独自の特典も

首都圏の電子マネー対応はSuica/PASMOが圧倒的に進んでおり、複数の電子マネーに対応している場合はほぼ間違いなくSuicaが使える。Suica以外の電子マネーのみに対応していた店舗も最近では複数対応が進んでおり、身の回りではWAONしか使えなかった吉野家がついにSuicaへの対応を進め始めた。余談ながら個人的には吉野家のためだけにWAONをチャージしていたといっても過言ではないのだが、おかげでWAONしか使えない店舗が身の回りからほぼなくなってしまい、チャージ金額の扱いに困ってしまっている。

近所の吉野家はむしろSuica/PASMO推し

そのため、首都圏で生活している分にはSuicaさえあればほぼ他の電子マネーは必要ないというのが正直なところなのだが、Suicaほどではないが利用頻度が高い電子マネーが、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」と、NTTドコモの「iD」だ。

nanacoが利用できるのはセブン&アイ・ホールディングス系列のスーパーや百貨店、コンビニエンスストアで、主に利用しているのはセブン-イレブンだ。セブン-イレブンも複数の電子マネーに対応しているため、Suicaがあれば支払い自体はできるのだが、わざわざnanacoを別に持つようにしているのは、セブン-イレブンで取り扱っているほとんどの商品がnanacoで支払えるからだ。

セブン&アイ・ホールディングスの電子マネー「nanaco」

具体的には下記URLの通り、食べ物や飲み物といった一般的な商品のほか、独自ポイント「nanacoポイント」の対象外にはなるものの、公共料金の支払い、切手やはがき、ごみ処理券などがnanacoでも支払える。

ポイント対象商品/対象外商品|電子マネー nanaco
https://www.nanaco-net.jp/point/save/item.html

逆にnanacoで支払いができないのは、 nanacoのカード発行手数料やnanacoギフトカードの購入、nanaco以外の電子マネーを含む現金チャージなど。要はnanacoそのものに関わる費用とnanaco以外の電子マネーへのチャージでなければ使える、と考えておけばいい。例えば、同じギフト券であってもAmazonギフト券などはnanacoで支払うことが可能だ。

nanacoの支払いについて
http://www.sej.co.jp/services/cash.html

ファミリーマートやローソンでは公共料金の支払いや切手などの支払いに電子マネーは使えないし、セブン-イレブンであってもnanaco以外の電子マネーではこれらの支払いはできない。自社系列の独自電子マネーだからなせる技なのだと思うが、nanacoにチャージしていればセブン-イレブンで買えないものはない、という安心感は非常に心強い。

一見するとnanacoしか使えないように見えるが、主要な電子マネーはほぼ対応している

また、nanacoでは時おりセブン-イレブン商品向けのキャンペーンをしており、本原稿を執筆している2018年11月も、nanacoでセブンカフェを5回買うとコーヒーが1杯無料になる、というキャンペーンを実施している。普段からセブン-イレブンでコーヒーを買うことの多い筆者にとっては、ただnanacoで支払うだけでコーヒーが無料でついてくるようなもの。先日同様のキャンペーンが実施されているときは、気がつけば3杯もの無料チケットを入手していた。セブンカフェを頻繁に利用する人にはnanacoの発行をぜひおすすめしたい。

クレジットカード感覚で利用できる「iD」

Suicaとnanacoは事前に金額をチャージしておくプリペイド式なのに対し、支払った金額を後で精算できるポストペイ式の電子マネーとして愛用しているのが、前述のiDだ。

NTTドコモの電子マネー「iD」

ポストペイの電子マネーというとわかりにくいが、要は「電子マネーとして使用できるクレジットカード」のようなもの。Suicaやnanacoはチャージ金額の上限が数万円のため、高い金額の買い物では使いにくい。また、タクシーを使う時などもチャージ金額を気にせず支払えるのはメリットだ。飲み会などの帰りで多少酔いが回っていても、iDなら残額を気にせず支払うことができる。いざというときの備えとして、ポストペイ型の電子マネーであるiDは大いに役立っている。

身の回りで電子マネーが使える店でもiDに対応した店舗は非常に多い。あくまで体感ベースであるが、Suicaの次に対応しているのがiD、というのが筆者の印象だ。

iDは設定できるクレジットカードに制限があるのだが、筆者が使っているのは同じNTTドコモのdカード。NTTドコモが提供していることもあってNTTドコモの回線がないとメリットがないように思えるのだが、クレジットカードを使った時のポイントは1%と比較的高く、1年の間に一度でも利用していれば年会費も無料。NTTドコモの回線契約をしていない人にとってもメリットの大きいクレジットカードだ。

ただし、残念なことにdカードはNTTドコモ回線の契約したスマートフォンでない限りiDに設定できないという制限が課されている。筆者がメイン利用しているスマートフォンはFeliCa搭載Android「HTC U11」で、回線もMVNOのIIJmioを利用しているのだが、この環境ではiDにdカードを設定することができないのだ。

なお、iPhoneで使えるiD(Apple Pay)にはこうした制限がない。筆者はiPhoneとAndroidのスマートフォン2台持ちのため、dカードはiPhoneに設定しておき、Android用にはファミリーマートのクレジットカード機能付き「ファミマTカード」を使った「ファミマTカードiD」を設定している。こちらはdカードに比べるとポイント還元が0.5%と低いのだが、その代わりに「Tカードを見せなくてもiDで支払うだけでTポイントを貯められる」という隠れたメリットがある。

AndroidにはファミマTカードiDを設定

詳細は遼誌ケータイWatchで以前書いたのでそちらを参照してほしい(コンビニ会計で「最短の一手」を目指し、ファミマTカードをiDに設定)が、「いつも通り支払うだけでTポイントもついてくる」のがうれしい。今までは支払いのたびにTカードを取り出すのが面倒でポイントを貯めていなかったのだが、ファミマTカードiDのおかげでいつの間にかTポイントが貯まるようになった。

財布を忘れても困らない電子マネー中心の生活

SuicaやEdyといった電子マネーの登場から20年弱が経ち、地域によって格差はあるものの、首都圏に住んでいると身の回りの電子マネー対応が急速に進んでいることを実感する。コンビニエンスストアやレストランチェーンなどはもちろん、スーパーやドラッグストアなどでも電子マネーを使える店が増えており、今まで現金のみだった店がいつの間にか電子マネーに対応していることも増えてきた。

最近では、ちょっとした買い物ではほとんど財布を取り出すことなくスマートフォンに設定した電子マネーで支払いを済ませている。電子マネーになれてしまうと鞄の中の財布を探す手間というのは大したことがないようで地味に負担だったのだなと改めて実感する。

また、お店選びの時も電子マネーに対応しているお店をある程度把握しておき、電子マネー対応とそうでない店ではそれだけで前者を選ぶようになった。今ではタクシー待ちの時ですら電子マネー非対応のタクシーは「電子マネーで支払いたいので」と運転手および次の人に告げて次のタクシーを待つほどだ。タクシーに乗ったはいいが1万円しか財布になく、運転手も夜でおつりの用意がないため仕方なくコンビニで買い物をして支払う、といった双方にとって不幸な事態を、電子マネー支払いなら回避することができる。

現金をほとんど使わなくなったので財布を持ち歩くことも減った。近所での買い物で目的地が決まっている場合はスマートフォン1台握りしめていくだけでいい。電子マネーに慣れすぎて時には財布そのものを忘れることもあるのだが、以前に比べて最近は財布を忘れてもほとんど困ることがなくなった。

ポイント還元や使ったお金の明細化もキャッシュレスの魅力

身の回りの支払いを現金から電子マネーに移行したことで意外なメリットだったのがクレジットカードのポイントだ。クレジットカードを使うと還元されるポイントは高くても数パーセントのため以前はさほど気にしていなかったのだが、生活の電子マネー化に伴いクレジットカードの使用が増えるにつれて、数パーセントのポイントがばかにならなくなってきた。

例えばdカードは独自ポイントの「dポイント」として1%が還元される。月に10万円を使うと1,000ポイントが貯まる計算だ。独自ポイントは現金に比べて使いにくく感じるかもしれないが、筆者は月に数回程度使うマクドナルドでの支払いにdポイントを使っている。また、意外におすすめなのが「松竹マルチプレックスシアターズ」でのdポイント使用。ピカデリーや松竹系列の映画でdポイントが使えるため映画鑑賞がはかどっている。

dカード利用で貯まるdポイント。マクドナルドや映画鑑賞で愛用

クレジットカードを使うとお金の感覚がわからなくなるという意見もあるが、実際にクレジットカードを使い始めた身からするとその感覚とは真逆だ。決済の時差はあるものの、クレジットカードの支払いはすべてが明細として表示されるので、「何にお金を使ったのか」を後から見返しやすい。ただ、メイン利用しているSuicaは明細がすべて「物販」として表示される、取得できる明細に上限があるなど、後から見返す用途としては若干使いにくいのが課題だ。

電子マネーをより便利に使うためには、やはりカード型よりスマートフォンアプリをお勧めしたい。手続きが面倒といったハードルはあるものの、鞄からカードを取り出す必要が無いため、複数の電子マネーを持ち歩くのも苦にならない。チャージ残額をいつでもどこでも確認でき、足りなければその場でチャージできるというのもアプリのメリットだ。

FeliCaの対応端末も、AndroidからiPhoneにも広がり、Googleオリジナルスマートフォンの「Pixel 3」もFeliCaに対応するなど、対応スマートフォンの裾野は着実に広がっている。電子マネーによるキャッシュレスの活用のためにも、ますますの拡充を期待したい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝