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LINEヤフー、公式アカウントからSaaS展開で成長へ アスクル復旧は目処立たず

LINEヤフー出澤 剛CEO

LINEヤフーは4日、2025年度第2四半期決算を発表した。子会社のEC「アスクル」のランサムウェア被害とシステム障害について謝罪するとともに、全サービスのAIエージェント化や、公式アカウント強化、ミニアプリ強化などの方針を説明した。

なお、アスクルについては現在も出荷を停止し、対応継続中であり、復旧の目処は「見通せない」(坂上 亮介CFO)としている。事業への影響は復旧後に精査し、「まずはLINEヤフーとしても復旧や調査を全面支援していく」と述べるにとどまった。

冒頭アスクル問題について謝罪

公式アカウントとミニアプリからSaaS展開で成長

今後の重点施策として取り組むのが、AIエージェントと、公式アカウントとミニアプリの強化だ。

AIエージェントの強化については、LINEヤフーの約1億のユーザーのうち、現在860万人が毎日AIサービスを使っている(DAU/毎日のアクティブユーザー数)。これを1億DAUまで引き上げる狙いで、サービス強化していく。現在はYahoo!検索のAI回答やLINEでAIが返信を提案する「LINE AIトークサジェスト」などで活用されている。

具体的な強化を予定しているのは、LINE公式アカウント(OA/Official Account)とミニアプリ。公式アカウントにより、広告も強化し、ディスプレイ・検索広告の落ち込みをカバーしていく狙い。メディア事業を構造転換し、「オリジナルの価値提供をできる、OAとミニアプリを強化していく」(出澤CEO)とする。

現在の公式アカウント数は130万で、うち有料アカウントは31万。「これは500万まで増やせるだろう。アクティブユーザーも有料アカウントもまだまだ伸ばせる」と成長のコアに据える。25年度に1,400億円規模の売上を、28年度に2,800億円まで引き上げ予定。現在のミニアプリは3.5万だが、28年度には31万まで拡大する。

25年度は公式アカウントの拡大とともに、SaaS事業の立ち上げ準備を進める。SaaSは、店舗DXや予約、顧客管理などのサービスを予定しており、26年上半期に提供予定。すでに類似のサービスを行なうミニアプリやパートナーもあるが、このSaaSはLINEヤフーがデータを持ち、自社で運営していく形を想定している。

店舗DXなどは、すでに多くの事業者が参入しており、LINEのプラットフォームやミニアプリを使うサービスも存在する。パートナー連携や買収の可能性など、今後の事業展開については「次の決算発表にはもう少し詳しくお知らせしたい(出澤CEO)」と語った、

公式アカウントとミニアプリ、SaaSにより、1アカウントあたりの売上向上を見込んでおり、28年度には現在の2.6万円から3万円までの引き上げを想定。ミニアプリについては、営業力強化とUX向上に取り組み、継続的に使われる仕組みを目指すという。

すでにハウス食品やキリンホールディングスなどの飲食、ホリプロなどのエンタメ、ビームスなどの小売といった大手企業での導入が進んでおり、今後リアル店舗で特典付与する「LINEタッチ」の導入や、LINEリニューアルによるウォレットタブの刷新などでミニアプリ利用を増やしていく。

堅調な第2四半期 LINEアプリに「ホーム」タブ

2025年度第2四半期決算は、売上収益は5,057億円(前年同期比9.4%増)、調整後EBITDAは1,254億円(同11.3%増)。ガイダンス(見込み)にはやや未達となったが「検索広告の不調」によるもの。

全社では、PayPay連結の成長とLINEヤフー単体のコスト削減により、EBITDAは前年同期比で11.3%増となった。広告関連ではコマース広告が成長、eコマースでは9月のふるさと納税駆け込み需要により、Yahoo!ショッピングが成長した。また越境ECのBEENOSフル連結化も貢献している。

今後は、LINEをリニューアル。トーク、ショッピング、ウォレットタブを段階的にリニューアルしているほか、年内にホームタブのテストリリースも開始する。ホームタブでは各種サービスの情報を集約したLINEヤフーの「入口」とするほか、LINE友だちのステータスや天気などをお知らせ。またおすすめのコンテンツなどを紹介していく。

一方、AI活用により業務を効率化。成長領域に人的資源を配分していき、固定費は150億円の削減を見込む。

成長領域としては、LINE公式アカウントとミニアプリを中心とし、事業ポートフォリオを転換。AIエージェント化やLINEアプリのリニューアルもその一環と位置づけている。

なお、PayPayの米国上場については、「8月にコンフィデンシャル・ファイリング(届出)は完了しているが、米国政府の閉鎖もあり時期は見通せない(坂上CFO)」とした。