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U-NEXT 堤社長に聞く「1000万加入」への道 オリジナル作品は「継続」が重要
2026年2月6日 08:20
U-NEXTは、2025年11月に利用者数が500万契約を突破した。有料映像配信としては、日本国内第3位をキープしており、ビジネス展開もかなり活発である。
映像配信の世界では、NetflixやAmazon Prime Videoなど、外資大手の動きが目立つ。特にNetflixは2026年に「ワールドベースボール・クラシック(WBC)」の独占配信も控え、ワーナー買収の件もある。
大手がさらに規模を求める中で、U-NEXTはどのようなビジネスを展開しようとしているのだろうか?
2024年1月に掲載したインタビューでは、「500万加入の先になにかがある」と語っていた。その500万をこえた今、この先をどう考えているのだろうか?
U-NEXT代表取締役社長の堤天心氏に聞いた。
日本でトップ3を堅持して1000万へ
まず気になるのは、「500万」という契約者数がどんな意味を持っているのか、ということだ。
堤社長は「コロナ禍を過ぎて、市場はいい意味で成熟しつつある」と話す。
堤社長(以下敬称略):500万という規模感は、従来の二次利用型プラットフォームである、衛星放送・ケーブルテレビ・レンタルビデオなどの「レガシーメディア」から、完全に配信へと移行したことの象徴であると捉えています。
500万という数は、メインストリームの市場に対して存在感を示せる規模感だ、ということだと認識しています。
日本という市場を見た時に、500万が「マスにとどいた配信」として必要な規模感である、ということだ。ではその先はどうだろうか?
堤:日本の市場を見た時、トップ3社でそれぞれ「1,000万」という数字は実現可能なものである、と考えています。ですから、500万から1,000万へ、という戦略については、現在検討を進めているところです。
日本のOTT(Over The Top、インターネット上でのサービス)市場は成熟し始めており、1人のユーザーが平均2つ以上のサービスを使い分けるライフスタイルが定着しています。この競争の中で、いかにトップ3の座を確保するかが最重要課題と認識しています。そして、日本の市場規模から見れば、トップ3のプレイヤーに入っていれば、1,000万加入の到達は十分に可能と見ています。
以前から、映像配信の事業は「椅子取りゲーム」だと言われてきた。1社との契約ですべてのニーズを満たすのは難しく、2つ・3つのサービスを併用するのが一般的になる……という見方が支配的だ。そう考えると、日本でもマス向けサービスとして生き残るには、トップ3の中に入ることが重要である、ということになるだろう。
そういう意味で、500万加入の実現は到達点ではなく「ようやくスタート地点に立った状態」と、堤社長は話す。
オリジナル作品は「継続」が重要
映像配信といえばその事業者のオリジナル作品、というイメージが強い。U-NEXTもその点を強化していく、という話ではあるのだが、ここで重要なのは「やり続けられる仕組み」という点だ。
堤:オリジナル作品を作るということは、プラットフォームのブランドを底上げする、という点に最も大きな効果があります。
その際、オリジナルを1本作って、それで何人ユーザーが増えたのか。割に合う・合わないという議論をしていては、たぶんその先が続かないです。
500万から1,000万を目指す、本当にさらにマスに近いところを目指すのであれば、オリジナル投資をやり続けられるパイプライン作り、体力作りが必要。それに対するコミットが、必須要件だと思っています。
結局、500万加入以下のときには、とりあえず1本作ってみることはできても、作り続ける仕組み作りというのは不可能ですよね。
ここで重要なのは、「ヒットするオリジナルコンテンツ」だけを狙って作ることなどできない、という点だ。ヒットしやすい作品はあっても、それが大ヒットするとは限らない。確実にヒットしか作らない、というのは不可能であり、だからこそ、多数の作品が生み出されている。
堤:やるならば、1本2本のヒットを狙うのではなく、出版社やテレビ局の編成のように年間を通じて作り続ける「パイプライン」として捉える必要があります。
Netflixもそういう形ですが、年何本パイプラインを切ってやり続ける。それをプラットフォームブランドに昇華させて、プラットフォームの数にも非線形的に効いていく……というイメージですね。
テレビ局もそうじゃないですか。「編成」というパイプラインで、年間何本というスケジュールを組む。少なくとも「編成」という考え方自体がパイプラインです。同じように(制作の体制を)パイプラインで捉えないと、オリジナルコンテンツでのビジネスはちょっと成立しません。
すなわち、500万を超えた数量で、1つ2つではなく多数のオリジナルコンテンツを持続的に作っていくことが、最終的にはブランド価値になり、サービスを強くするということだ。
これは、NetflixやAmazon Prime Videoを見てもわかるし、国内のサービスで「オリジナル作品展開が続かない」ところは認知を高められていない……という点にも繋がる。
パイプラインかIPか、Netflixと異なるオリジナル作品戦略
では、オリジナル作品を作る上で重要なところはどこだと分析しているのだろうか? 堤社長は「オリジナルのIPを持つもの」と話す。
堤:オリジナルに、本質的に取り組むのであれば、やはりIPを自社が持つものをやらないとダメだと思っています。プラットフォームのブランド戦略として原作付きのドラマなどをやるのはいいんですけれど、IPビジネスという観点で見れば、例えば原作を一緒に作り、そこから展開していくという積み上げをしないといけません。
ですから、原作の漫画・アニメ・小説・ウェブなど、我々自体がIPのデベロップメント、パブリッシングを本格的に着手しようというのが、500万契約以降の、もう1つのビジネスストラテジーです。
ここでいうIP(知的財産権)とは、それぞれの作品に関する根本的な使用権のことを指す。
映像制作の世界では、「IPを持たないと厳しい」ことはよく知られている。制作会社が映像作品を作っても、IPを持っていないと「制作に関する費用」しか入ってこない。実は、「アニメを作っても制作会社や現場が儲からない」という話の根幹はここにある。
U-NEXTは傘下に出版事業も持つ。これはまさに、原作を作り、それをIPとして最終的な作品制作へと幅を広げるための基盤作りでもある。
日本の場合、特にコミックや小説が原作となって作品が作られることが多いが、それは、多数の作品が出版社に集まってきて世に出ていき、映像作品やグッズなどの幅広い展開を目指す構造が根付いているからだ。アメリカの場合だとその根っこの部分は映画会社であり、彼らが作品・シナリオ・企画を大量に集めてIPとして映像作品を作る。
U-NEXTは日本型のビジネスを目指す。自社が出版社となってIPを作ったり、既存の出版社と組んでIPホルダーとなったりする形で、オリジナル作品を作ることを目指す。
この構造をとる以上、Netflixなどとは異なる形になる。
堤:IPとして見た場合、いろんなウィンドウ(作品が世にでるタイミング)を複合的に使い、メディアミックスを通じてIPのビジネスとして拡大していく、ということです。これはすなわち、コンテンツ制作をIPビジネスとして見ているのか、プラットフォームビジネスとして見ているのか、という違いです。
プラットフォームビジネスとして見た場合、コンテンツはプラットフォームに客を呼ぶための材料であり、制作現場はややもすると「コンテンツを製造し、納品するための工場」になってきます。その納品先が、Netflixなどの映像配信プラットフォーマーです。
韓国では、Netflixなどの大手プラットフォーマーが大きなビジネスを制作会社に提供してきたため、制作側がプラットフォーマーに依存してしまう……という現象が指摘されている。IPは出資元であるNetflixなどにあり、制作会社は制作する立場だ。
それはそれで1つの関係であり、グローバル配信を前提とした大きな費用で制作できて、出演者のギャランティも多くなる……というメリットがある。韓国はそれで成功してきた。
だが問題は、プラットフォーマー側でGoが出ないと作品が作れなくなっていくということだ。自国内だけで消費する作品が予算的に成立しづらくなり、プラットフォーマーの「パイプライン」に依存する体制になる。
U-NEXTはそこに逆張りし、既存の企業との共生関係を目指す。
堤:配信と映画館に放送。この3つのメディアがありますが、それぞれがミックスされて、元々のコンテンツ価値、IP価値がスケールしていく。この仮説が、我々の事業基盤の前提になっています。
既存の事業者を解体して1つのプラットフォームに集約するのではなく、あくまで協力体制で広げていく……という計画だ。
値下げの予定なし 広告は「マスでないと成立しない」
他社がスポーツに力を入れる中、U-NEXTもスポーツには注力し、バリューを高める。だが、そこでの取り組みも他社とは異なる。
堤:他社は「イベント的」なスポーツに注力していますが、我々は、安定的な「シーズンスポーツ」に力を入れています。そこからプラスアルファのところで、代表戦や国際大会などの大型イベントについても、配信できればベストだとは考えます。
大型イベントものは、タイミングとか条件があえば我々も行きますが、それをマストハブ(必須)、戦略的コアには置いていないです。「合理的な条件でできればいい」という判断で、やっても合理性がないと判断すれば、権利が取得できなくても別に問題ないという判断です。
これは、スポーツイベントの権利が高騰しているからでもあるだろう。スポーツをシーズンまとめて配信することは、そのスポーツが好きな人の契約を、そのシーズンの間引き止める効果をもつ。U-NEXTとしてはそこを重視する、ということなのだろう。
では、U-NEXTの根幹の部分、利用者拡大や収益拡大はどうなるのだろうか?
同社の利用料は、他社(安価なモデルでは月額1,000円以下)に比べて高く、2,189円。現時点では「値下げの予定はない」(堤社長)という。
堤:他社の価格が上がってきたので、結果的にですが、お得な印象になりました。ある意味、時代が追いついたというか。ポイントも含まれますし、バリューとしてうまくワークしていると思います。
現時点で、廉価なモデルや広告モデルの導入は考えていません。
日本のネット広告単価は低く、YouTubeやTVerのような圧倒的スケール、MAUで数千万規模になっていない限り、広告とサブスクモデルとの両立は現実的ではないと判断しています。広告とサブスクリプションの両立自体に、私は懐疑的です。
その中で、楽天モバイルとの連携は、マーケティング施策がうまくいっていますね。








