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NTT、熟練者の判断プロセスをAIで見える化 世界初

NTTは、コールセンターの熟練オペレーターの対応をAIでフローチャート化し、可視化する技術を開発した。熟練オペレーターの対応をフローチャート化することで、新人オペレーターでも熟練者のような対応を可能にするノウハウを構築する。

セキュリティ事故対応や、コールセンター業務などの問い合わせ履歴から、熟練者の判断プロセスを約9割という高精度で見える化する世界初のAI技術。コールセンターの業務ノウハウ継承が進まない問題の解決が可能になるという。

コールセンターの熟練オペレーターが、ユーザーからの問い合せ対応を行なう際には、暗黙的な判断プロセスがあるはず、という考えに基づき、その判断プロセスをフローチャート化。

例えば、「子どもと旅行に行きたい」という問い合せに対して熟練オペレーターは、子どもが小さかったら子ども用のベッドが必要かも、と即座に考え「お子様用のベッドは必要ですか」などと提案する。このプロセスを見える化する。

フローチャート化することで、解釈性が向上し、人間によるチェックが容易になる。このため、多少誤ったフローチャートが生成されても手動で修正できる。

また、新人業務ノウハウの継承にも利用可能なほか、抽出した熟練者の判断プロセスを、さらにAIに取り込むことで、業務ノウハウに基づく自動応答も実現可能になる。既存のファインチューンはRAGなどと比較して、LLMによる応答根拠がフローチャートにより明確なため、自動応答システムとの親和性も高いとしている。なお、今回はLLMとしてGPT-4が使用されている。

フローチャート抽出は大きく3ステップに分かれる。まず、問い合せ履歴から熟練者が行なった質問と提案を抽出し、IDを付与。様々な問い合わせ方法で行なわれた質問などを統一的な観点で統合し、同じ趣旨のものを1つの質問として統合していく。

次に、抽出した質問・提案に基づいて問い合せ履歴をフローに構造化。1つの履歴に対して先ほど生成した質問・提案リストを参照しながら、どのような問い合わせのフロー(Q&A)を辿ったのかを構造化していく。

最後に、構造化した問い合せフローをフローチャートに集約。各構造化フローで質問・提案から次の質問・提案への遷移を1ステップとして出現回数をカウント。統合的に処理を行ない、出現回数が多いものが上位になるようなツリー構造に変換することで、フローチャートが完成する。

「FloDial」という公開データセットを使った実験では、約9割の確率で正しいフローチャートが生成できることを確認している。「FloDial」は、フローチャートとそれに基づいて対応を行なう対応者とユーザーの対話がセットになったデータセット。

今後は、セキュリティ事故対応やコールセンター業務などの現場に適用するため、さらに精度を向上。2026年度の商品化を目指す。