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NTT、IOWN APNで遠隔データセンタの再エネ利用を最適化

再生可能エネルギー需給に応じた自律制御実験全体イメージ

NTT西日本、NTT、QTnetの3社は、IOWN APNを活用した遠隔データセンター間での処理配置最適化に関する実証実験に成功した。太陽光発電などの再生可能エネルギー発電に余力があるエリアのデータセンターを優先的に活用することで電力の有効活用を促進する。

近年、データセンター(DC)のニーズが飛躍的に高まる一方、消費電力も大幅に増加していることが課題になっており、2050年度には現在の2倍の年間消費電力が必要になるという。災害対策やエネルギー効率の観点から、地域に分散したデータセンターの活用についても期待が高まっている。

一方、再生可能エネルギーの利活用は進んでいるものの、発電された電力が需要に対して過大になりすぎ、出力制御(余剰電力を一時的に抑止する)を行なうケースもある。全国では年間19億kWhの電力が出力制御されており、特に再エネ活用が進んでいる九州では出力制御が多く、2023年度で12.9kWhもの発電を抑制している。

今回の取り組みでは、こうした余剰電力を活用することで電力の有効活用を図る。実験では福岡のデータセンターと大阪のデータセンターを約600kmのIOWN APNで接続。アプリケーションを配置した仮想化基盤と生成AI基盤からなる分散データセンター環境を構築した。従来、長距離のライブマイグレーション(アプリケーションを停止させずに配置を変更)を行なうには、アプリケーションに影響を与えるダウンタイム(システムの一時停止時間)が課題だったが、IOWN APNを利用することで、ダウンタイムの増加を抑えた分散DC環境を構築した。

次に、実際に九州地域で再生可能エネルギーの出力制御が発生した日のデータを使い、再生可能エネルギーの発電量やデータセンターの電力利用量に応じて、最適なデータセンターを30分サイクルで選択させる実験を実施。

これにより、福岡で電力が余る時間帯には福岡のデータセンターで集中して計算を行ない、夕方以降、太陽光発電がなくなると、両データセンターに対して負荷分散を行なうなど、自動制御を行なった。

システム適用時の電力の推移

データセンター間はIOWN APNで接続されているため、遠隔地のデータセンターでも問題無く低遅延で作業が可能で、これにより処理配置最適化(計算負荷や電力消費に応じた最適な処理配置を動的に行なうこと)を実現できることを実証した。また、再生可能エネルギーの利用率は最大31%効率化されたという。

なお、処理配置最適化計画の算出は、外部の電力需給状況や各DC内部のリソース状況など多様な要件を考慮するため、膨大な計算量が必要になる。今回は、NTT独自のアルゴリズムを使用することで、従来は算出に9日かかっていた1日分(24時間)の処理配置最適化計画を2分以内に算出することにも成功。より大規模な環境を対象とした処理再配置にも適用が可能になる目処がついた。

将来的には複数のデータセンターをIOWN APNで接続し、天候なども考慮しながら、最も最適な発電力が得られるエリアを活用できるようにする。また、分散したデータセンターの活用は、災害時に一部のデータセンターが運用できなくなった場合でも容易に処理能力の代替が可能になる。