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フィジカルAIのMujinにNTTらが364億円 世界初のネイティブAI OS

産業用ロボット用OS「MujinOS」を開発するMujinは、シリーズDラウンドにてNTTグループとカタール投資庁(Qatar Investment Authority)を共同リード投資家として、三菱HCキャピタルリアルティ、Salesforce Venturesから第三者割当増資による総額209億円の調達を実施した。加えて、複数の銀行や金融系事業会社各社から総額155億円のデット調達を実施。これによりシリーズDラウンドのファーストクローズでの資金調達総額は364億円となり、累計資金調達額が596億円に達している。

「MujinOS」は、産業用ロボットなどの自動化を、ティーチング無しで実現するロボット用OS。従来のOSにおいてAIはアドオンのような位置づけだが、MujinOSは始めからAIが組み込まれた世界初のAIネイティブOSとしている。

「MujinOS」は、カメラやLiDAR、モーターなどを組み合わせ、現実の物理世界で自律的に認識・判断・行動を行なう「フィジカルAI」を実現するOS。リアル環境をデジタルツインに取り込み、デジタルツイン上で試行し、実環境で実行、問題があればさらにデジタルツインでの試行を繰り返す、といった方法で、人間が直接動作を教えなくとも、産業用ロボットが行なうさまざまな動作を自律的に実現できる。

ロボットについては、モーターが付いているものなら何でも対応可能とし、パソコンのOSのように、ロボットのメーカーやモデルに関わらずMujinOSで動作させ、統合管理が可能になる。

同社によると、15年後のAIソフトウェア市場は現在の12兆円から700兆円、産業用ロボット市場は現在の3兆円から130兆円と、40~50倍の成長が見込まれるとしており、知能ソフトウェアプラットフォーム無しでは市場の競争力を失う世界になるという。例えば、6年前に導入したピッキングロボットについて、1時間あたり350個のケースを処理していたが、現在では1,000個のケースを処理可能になっている。これは、ロボットは全く同じものを使いながら、ソフトウェアが進化した結果だという。

「MujinOS」は、すでに世界中の2,000を超える企業に導入済み。これまではOSの提供とロボットへの適用までを含め他ソリューションを提供していたが、今回の投資によりOSのみを提供し、事業者側が自分でロボットへの適用を可能にするプロダクト事業の展開を開始する。

NTTグループと資本業務提携

また、NTTとNTTドコモビジネスは、Mujinと12月1日に資本業務提携を締結。NTTグループのIOWN技術や、AI時代に最適化されたプラットフォーム、ネットワークインフラなどと、「MujinOS」などの制御技術を組み合わせることで、ロボット自動化ソリューションの提供や、フィジカルAIによる自律的な自動化社会の実現を推進。将来は建設現場や農業、介護施設、家庭向けのロボットなどへの展開も視野にいれている。

まずは、MujinOSで課題となっている、ロボットから出力される膨大なデータをセキュアに扱うためにクラウドデータセンターを活用するほか、NTTが抱える13万社の顧客へのアプローチも行なっていく方針。

左からNTT 執行役員 研究開発マーケティング本部 アライアンス部門長 爪長 美菜子氏、Mujin共同創業者 滝野一征氏、同ロセン・デアンコウ氏、NTTドコモビジネス 執行役員 ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部長 山下 克典氏