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NTT、何もない空間に「つるつる」や「ざらざら」を感じる新技術

NTTは、特別なデバイスを使うことなく、超音波で空中にリアルな触感を作り出す新技術を考案した。成果の一部は、東京大学との共同研究によるもの。

超音波を肌に集束させ焦点を作ると、その焦点には非接触な触覚が生まれる。超音波による触覚技術はデバイス装着が不要なため、ユーザー負担の低い触覚技術が実現可能になる。

従来は、XRなどで人や物に触れる感覚を体験するには、重たいデバイスを装着する必要があった。また、超音波により触覚を伝える技術はあったが、従来の方法は超音波で提示できる力が弱く、伝えられる感覚も単調なものに限られるという課題があった。

今回の成果は、超音波で生まれる力の感覚を増強する刺激条件を特定したことと、複数周波数の超音波による刺激を自在に合成し、多彩な触感を生み出す超音波触感シンセサイザを考案したこと。

一般的に、人は超音波焦点に触れると最大で0.01N程度の弱い力を感じるが、この焦点を肌の上で5Hzで回転させると、感じられる力が20倍程度まで増強される。回転による刺激は、回転と同じ周期の皮膚振動や刺激範囲の拡大など様々な要素を含むが、従来の研究では、超音波焦点の回転刺激のうち、何が感じられる力を強める決定的な要因なのかは特定されていなかった。

今回は、超音波の焦点を回転させたときに皮膚に現れる5Hzの振動に着目し、調査を実施。5Hzの回転刺激のほうが、5Hzの振動刺激よりも6倍強い刺激を与えられることがわかった。

また、超音波触感シンセサイザでは、超音波の音圧を特定の周波数で揺れ動かす刺激を合成することで、多彩な触感を実現。5Hzの回転刺激に一定の振動を合成し、「つるつる」や「さらさら」「ざらざら」などの触感を自在に調整しながら伝えることを可能にした。

これらの成果により同社は、デバイスを身に着けることなくリアルな触感を再現できる触覚インターフェースや触覚コンテンツ(遠隔でのソーシャルタッチやXRでのふれあい体験等)の実現を目指す。また今後は、人が様々な物体に感じる触感の忠実な再現や、感じられる力を強める触覚の仕組みの解明、人間の脳が触感を知覚する仕組みの解明にも発展させ、XRにおける世界初の触体験の実現に貢献する。