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KDDI、増収増益の決算 付加価値で「モバイル収入」伸ばす

決算ハイライト

KDDIは、2025年3月期の決算を発表した。連結売上高は前期比2.8%増の5兆9,180億円、連結営業利益は前期比16.3%増の1兆1,187億円だった。当期利益は前年同期比7.5%増の6,857億円。通信ARPU収入、金融・エネルギー、ローソン、DXが成長を牽引し、増収増益となった。

増減要因
振り返り

2026年3月期は、連結売上高が前年同期比7.0%増の6兆3,300億円、連結営業利益は前年同期比5.3%増の1兆1,780億円、当期利益は7,480億円を見込む。

2026年3月期の目標とポイント
まとめ

ベースインフラから「付加価値」への転換

決算説明会に登壇したKDDI 代表取締役社長 CEOの松田浩路氏は、自身の社長就任会見や5月の新料金プラン発表会で基本的な方針を発表済み。サテライトグロース戦略も踏襲しており、目下は中期経営計画の最終年度となる今期を好調な業績で終えることが目標となる。

個人・法人問わず、基盤インフラとしての通信サービスを提供するだけでなく、高い付加価値(グロース)をセットにして提供し、ふさわしい対価を得て好循環につなげていく、というのが基本的な考え方。

通信サービスの強化に取り組む方針も従来から変わっていない。先日の新料金プランで明らかになった、コンシューマ向け通信サービスでは珍しい優先サービス「au 5G Fast Lane」については、松田氏は、高い付加価値を分かりやすい形で提供するために設計したと説明。一部ユーザーが優先されることで逆に不利になるユーザーがいるのでは、という懸念も聞かれるが、一般ユーザーに負の影響が出ないことを前提とし、「急行列車がある中での特急列車」(松田氏)と説明している。

今後は、Sub6や5G SA、スライシングといった、5Gならではの機能を活用したサービスを順次提供する見込み。そうした高い付加価値の片鱗を体感できるものとして、現時点の基地局でできる仕組みで先行提供するのがau 5G Fast Laneとしている。

付加価値サービスを含めた新定義「モバイル収入」

業績説明の中では、2026年3月期から採用する新定義「モバイル収入」も公開した。これは、通信収入と付加価値サービスが不可分になっていることから、新たに定義するもの。対象になるのは、au、UQ mobile、povoの通信料収入や、補償収入、コンテンツ収入など。

この定義を適用した2024年3月期(2023年度)のモバイル収入は1兆8,371億円、2025年3月期は1兆8,501億円となる。

NTTデータ統合「甚大な影響を懸念」

質疑応答では、NTTがNTTデータを完全子会社化すると発表した件について問われると「NTT、ドコモ、NTTデータと、すべての資本が統合されることになると、SIと通信が一体的に提供されがちな業界に甚大な影響が出ないか、懸念している。総務省の審議会を含め、検証が必要ではないか」(松田氏)とし、強い懸念を表明している。

なお、京セラとトヨタ自動車は、それぞれ保有するKDDI株を売却する意向を示しており、KDDIはこれを受け総額4,000億円の自己株式取得を実施する。KDDIは、両社ともに資本政策の見直しや資本効率の向上を図る目的で売却するものとし、「さまざまなビジネスで協業しており、この関係や重要なパートナーであることは今後も変わらない」(KDDI取締役 執行役員 常務の最勝寺奈苗氏)とコメントしている。