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インスタ15周年、成長を支えるリールとAI戦略 高校生は「公開」しない

Metaは、Instagramが10月6日に15周年を迎えたことを記念して、メディア向けラウンドテーブルを実施した。Meta日本法人・Facebook Japan代表取締役の味澤将宏氏が登壇し、Instagramのこれまでの歩みを振り返るとともに、最新のアップデートや今後の展望について紹介した。

Meta日本法人・Facebook Japan代表取締役 味澤将宏氏

インスタ15周年、これまでの歴史と現在

Instagramは、2010年10月6日にiPhone向けアプリとして公開された。スマートフォンはiPhone 3GSの時代でスマホのカメラ性能や回線速度が十分とは言えず、写真投稿には一度Webサービスにアップロードする手間もあった。

そうした環境下で、Instagramは多彩でセンスの良いフィルターにより高画素でなくても“映える”写真を作れる点が支持されたほか、アプリ内だけで完結する投稿体験や、ほかのSNSへのシームレスな共有も高く評価され、公開24時間でApp Storeで1位を獲得した。

12年にFacebook傘下になり、13年には動画投稿やDM、16年には「ストーリーズ」機能を追加。ストーリーズは24時間でコンテンツが消える形式を採用することで投稿ハードルを下げ、現在でも高いエンゲージメントを維持している。

17年に「インスタ映え」が流行語大賞になると、消費行動への影響力が拡大し、ビジネスやマーケティングへの活用が広がった。18年にはEC連携のショッピング機能や、ぐるなびなどと連携したレストラン予約機能を搭載、20年には短尺動画機能「リール」を導入した。

コロナ禍以降はクリエイター支援を強化。配信時に投げ銭できる「バッジ」機能やサブスクリプションを実装し、クリエイターがアプリ上で直接収益化できる仕組みを整えている。安心安全に利用できる環境づくりにも注力しており、16年よりいじめ対策としてコメントフィルターを導入。20年以降は10代ユーザーの保護を目的に、ペアレンタルコントロールやティーンアカウントを展開してきた。

こうした取り組みの結果、Instagramの月間アクティブアカウント数は世界で30億に達した。日本の利用者数は2019年以降非公表だが、同年の3,300万人から2倍以上に増えているという。日本はユーザー規模だけでなくエンゲージメントも高く、新しい使い方が生まれやすい重要市場だといい、QRコード機能や地図検索機能などは日本発でグローバル展開されている。

味澤氏によると、Instagramの現在の成長をけん引しているのは、リールとDM機能だという。Instagramの利用時間のうちリールが占める割合は50%を超えており、動画視聴時間は前年比20%増で、リールがDMなどで共有される回数は1日あたり45億回にのぼる。

このトレンドを踏まえ、9月に公開されたiPad版アプリは起動時にリールが表示されるよう設計されている。スマホ版でもリールとDMへアクセスしやすいプロダクトデザインへの刷新を検討しており、今後2~3週間でテストを開始する。

今後はAIでさらに使いやすく

Metaは、大規模言語モデル「LLaMA」やAIスマートグラスなどの開発を通じて、AI領域への投資を継続している。InstagramでもAIを軸にユーザー体験の向上に取り組んでおり、主に3つの分野でAI活用を進めている。

1つ目はコンテンツのレコメンド機能で、ユーザーの興味関心にあわせてAIがコンテンツを提示する仕組みにより、Instagramの利用時間は6%増加したという。AIによるレコメンドに関しては、レコメンドのアルゴリズムをユーザー自身がコントロールできる機能の開発を進めているほか、Meta AIによる検索機能を一部の国で導入している。

2つ目は広告効果の最適化で、AI活用により広告の費用対効果(ROAS)は1ドルあたり3.71ドルまで向上している。また、自動広告配信機能「Advantage+」により、CPA(顧客獲得単価)も9%改善したとしている。

3つ目はクリエイティブ制作支援で、いずれも日本での提供時期は未定だが、画像や動画の編集機能「Restyle with Meta AI」および「Restyle on Edit」や、音声から音声への翻訳機能「Meta AI Voice Translations」といったツールを発表している。

味澤氏はInstagramの今後について、これらAI機能も含めた最新技術を活用して、これからも価値のある体験を提供していきたいと述べた。

プリも今年で30周年、フリューが語るプリとインスタの共進化

Metaは、Instagramの15周年を記念してフリューのプリントシール機「EVERFILM」との期間限定コラボを開始している。プリ自体も7月に30周年を迎えており、ダブルアニバーサリーを祝う初のInstagramとプリ機のコラボとなる。

ラウンドテーブルでは、同機の体験が行なわれたほか、フリュー代表取締役社長の榎本雅仁氏がゲスト登壇し、Instagramとプリの共通点などをテーマにトークセッションを行なった。

EVERFILMでの撮影の様子
EVERFILM
撮影イメージ

榎本氏によると、プリントシール機を中心とするガールズトレンド事業で国内シェア9割以上を占めているフリューでは、Instagramのリリース直後からフィルター表現を含む世界観に注目、開発の参考にしてきたという。

フリュー代表取締役社長 榎本雅仁氏

フリューは、毎週のように女子高生へのグループインタビューを実施しており、15年ごろからInstagramが話題にあがってきたという。そのなかでInstagramにプリを投稿する流れが出てきたため、16年に初めてInstagramを意識した機能を追加したプリ機「UP」を投入した。インスタ映えが流行語大賞になった17年以降は、全機種でSNS投稿や映えを意識した機能を搭載している。

同氏によると、プリユーザーのInstagramの使い方は近年変化しているという。従来はフィード投稿で“いいね”を集める使い方が中心だったが、現在は鍵アカウントなどクローズドな場でストーリーズに投稿し、親しい友人とのコミュニケーションを楽しむ傾向が強くなったという。

フリューの調査では、プリ撮影の約8割がストーリーズに投稿されており、これまではオープンな場で公開されていたが、現在は[親しい友だち]など友人だけで共有するようになっている。

こうした変化を受け、25年発表のプリ機「Meidy」ではストーリーズ向けの「9:16コラージュ」機能を備えている。また、「SNSに上げるには加工が強すぎる」との声にも対応し、SNS投稿用に加工を抑えた画像の提供など、SNSとの親和性を高める機能も拡充している。

榎本氏は、プリントシール機事業の今後について、プリが支持される理由として「自己肯定感」、「自己表現欲求」、「つながりたい欲求」の3点を挙げたうえで、これまでの写り偏重や女子中高生向けに寄り過ぎた面を反省しつつ、ほかの価値にも目を向けていく考えを示した。また、国内中心だった同事業を海外にも展開し、最新技術を取り入れながら、撮影からSNS共有までを1つの体験として、より楽しめる場を提供していきたいと語った。