いつモノコト
au Starlink Directを試した 山奥でもGoogleマップ
2025年11月24日 09:15
スマホで直接Starlinkと通信できる「au Starlink Direct」ですが、9月からiPhoneでデータ通信が可能になり、筆者も契約してみました。筆者はau回線を持っていませんので、月額1,650円の「au Starlink Direct専用プラン+」を契約しています。au回線保有者なら無料で利用できます。
日本の大手キャリアの通信エリアが人口カバー率99%以上を達成して久しいですが、それでもまだまだ、全く通信ができない状況に陥ることはあります。特にクルマで林道などを走ればかなりの頻度で通信ができない場所に遭遇します。これまではそうしたケースにあっても、「まあしかたない」と諦めていましたが、Starlink Directがあればこうした場合でも最低限の通信ができるようになります。
au Starlink Directでは当初、テキスト通信や位置情報の共有などがメインで提供されていましたが、データ通信が使えるようになり、より実用的になっています。とはいえ、全てのアプリが自由に使えるわけではなく、対応するアプリでのみ通信が可能です。また対応アプリにおいても、通常版よりもデータを少なくした簡易モードになる場合があるなど、違いがあります。
今回試したのは、iOSに標準搭載されている天気アプリとGoogle マップです。犬を連れて自転車で林道を走ることはよくあるのですが、夏場は予測不能な突然の雨に悩まされがちです。林道沿いでは通信が入らないことは珍しくなく、「この雨はあとどのくらい降るのか」という情報をスマホから得ることができないことが多いです。
今年もやはりそういう状況に遭遇し、誰も来ない山奥の休憩所で2時間近く雨宿りしました。雷も鳴っているので雨の中を走り続けるという選択肢はないのですが、あとどのくらいで雨が止むのか、という情報は知りたいところです。
9月にau Starlink Directを契約したものの、なかなか実用の機会に恵まれなかったのですが、今回、クルマで東北の紅葉スポットに訪れたところ、キャリアの地上局からの電波が入らない場所に遭遇したので、動作を確認してみました。
まず使ったのはApple純正の天気アプリです。これはau Starlink Directとの通信でも、通信量を制限せず、通常のアプリと同じように通信ができる仕様ですが、今後の天気や地図上での雨雲の状況など、問題無く確認できました。これなら雨宿り中でも天気の確認ができる、と思いたいところですが、実際の荒天時にどのくらいStarlinkの電波を受信できるかは未知数ですので、過信はできないですね。まったく見られないよりはマシでしょう。
特に便利だと感じたのがGoogle マップです。Google マップも通信制限モードなどはなく、普段通りのそのままの状態で使えるのですが、Starlinkの実効通信速度はそこそこあるようで、山奥からでもお店の情報やナビゲーションが普通に使えました。これは頼もしいです。
筆者はクルマの純正ナビが今ひとつ信頼できないため、普段はスマホのYahoo!カーナビをメインに使っていますが、スマホのカーナビでよく困るのが「移動先が通信不可能エリア」の場合です。こうなると通信ができませんので、新たに目的地を設定することができません。山奥に入ったところにある観光スポットなどではよくある状況で、オンラインカーナビの弱点ですね。
単にルートが設定できないだけなら純正ナビのほうに切替えて使えば済む話ですが、「このあとどこかで食事をしたい」という場合に、お店の情報を探せないのも不便です。
しかし、au Starlink Directによってこの状況は一変しました。Google マップがそのまま使えますので、普段通りそのままお店の情報を探すことができます。もちろん、4G回線よりはだいぶ遅いので、お店のレビューに掲載されている写真が読み込まれるのをしばらく眺める、ということにはなりますが、使い物にならないというほどのものではありませんでした。Google マップに掲載されている動画なども普通に表示され、次々とお店の情報を見て回ってもそれほどストレスには感じません。
意外だったのが、クルマの中にいてもそれなりに通信が可能だったことです。運転席で使ったのでフロントガラスなどで空が見えやすいというのもあるとは思いますし、方角によっても違うとは思いますが、時々衛星を見失うことはあっても、長時間通信不能になるということはありませんでした。このお陰で、寒い屋外で頑張らずともクルマの中で情報収集が可能でした。
Google マップが衛星経由で使えるおかげで、これまで通信不能で何もできなかった状況でも、地図による目的地情報の検索と、ルート案内までができるようになりました。これは画期的です。なお、今のところYahoo!カーナビはau Starlink Directに対応していません。
実はau Starlink Directを契約はしたものの、スマホ単体でアプリがまともに動くのか、実際に使うまで半信半疑でした。なにしろ、当初は主にテキストデータの送受信がメインでしたし、通常の固定型のStarlinkで使われるような大きなアンテナもスマホは備えていません。低軌道とはいえ、衛星からのデータをどこまで受信可能なのか不安だったのですが、しっかりと使えることを確認できました。今後もau Starlink Directは対応アプリが増えていくそうなので期待したいところです。
問題は、価格ぐらいでしょうか。auを契約していれば無料というのは素晴らしいのですが、au回線がない場合は月額1,650円がかかります。山奥でも通信ができるという利便性はあるものの利用頻度を考えるとこの価格は少し高く感じてしまいます。特に冬場は標高の高い道路や林道は閉鎖されてしまう=通信が繋がらないシーンが激減します。
povo 2.0のように月額料金を払わずに回線の維持はできませんので、利用停止は解約しかなく、再度契約する場合には再び事務手数料3,850円がかかってしまいます。事務手数料は初回のみau PAYで全額還元され実質無料ですが、2回目以降は実費が必要になります。
とはいえ、緊急時にはお金に換えられない価値を発揮しそうなことは、今回実感できました。将来的に1時間200円など、スポット的な使い方ができるサービスがpovo 2.0などで提供されれば理想だとは思います。しかし、ドコモやソフトバンクなど大手キャリアも2026年を目処に同様のサービスを展開する予定ではありますので、そこまでしなくても気軽に使える人は増えそうです。
ただし、ソフトバンクでサービスが開始されても、筆者の契約しているワイモバイルがどういう扱いになるか不明ですし、個人的にはau回線のように無料で提供とはならないだろうと思っています。来年は、このままワイモバイルを維持してau Starlink Directを契約し続けるか、auかソフトバンクに乗替えるか、悩むことになりそうです。









