ミニレビュー

クライムアクションゲーム「GTA V」の世界をチャリで疾走。結構ハマるかも!?

スマートサイクルトレーナーでGTA Vの世界を走れる!

「グランド・セフト・オート V」(以下、GTA V)というゲームをご存じだろうか。ゲーム好きな人にとって超有名なこのタイトルは2013年に発売され、3Dグラフィックで構築された米国風の架空世界を舞台に、3人の主人公を操って好きなように歩き回ったり、クルマなどを乗り回したり、ちょっと悪いことをしたりしながら、さまざまなミッションをこなしていくアクションゲームだ。

で、このGTA Vを含め最近のゲームの中には、MODと呼ばれるゲームの改造用データや拡張用データを追加できるようになっていることがある。ゲーム会社自身や有志の手によって次々と開発されており、このMODを適用することで通常のゲームにない機能を追加したり、グラフィックの見た目を大幅に変えたりでき、ゲームをさらに深く楽しめる。

オープンワールド型のアクションゲーム「グランド・セフト・オート V」

そんなMODのなかでちょっと面白そうなものを見つけた。GTA V用の「GT Bike V」というMODだ。なんとスマートサイクルトレーナーと連動して、GTA Vのリアルな世界を自転車で走ることができるのだという。

GTA Vにはいろいろな乗り物が用意されており、元から自転車にも乗ることができるのだけれど、それはキーボードやマウス、ゲームパッドで操作するもの。しかし「GT Bike V」を導入すると、スマートサイクルトレーナーの機能を活かして、自転車のペダルを回した分だけゲームの中で走ることができるようになる。もしかするとGTA Vのリアルな3D世界で自転車トレーニングができるのでは!? と思い、さっそく試してみた。

サイクルトレーナー「Wahoo KICKR」については、別の体験記事を参考にしてほしい。また、「GT Bike V」の動作に必要なものと導入手順は記事の下部でまとめている。

今こそ室内サイクリング! 30日間Zwiftチャレンジでやせられる?

GTA Vの世界で最高のバーチャルサイクリング体験が

GTA Vを普通にプレーしたことのある人ならご存じの通り、この架空世界のフィールドは広大で、ビルが建ち並ぶ街や交通量の多いハイウェイ、曲がりくねった山道、荒涼とした砂地など、バラエティや起伏に富んだ地形がリアルに表現されている。2013年発売のゲームだが、グラフィックのクオリティは高く、行き交う人々に近づいたときの反応にもリアリティがある。

GTA Vの世界を自分の脚力で走り回る

このなかを自転車で疾走するのは、実に気持ちがいい。人々が本当に生活しているかのようなダイナミズムを感じられる風景のなか、自分の脚力で好きなように観光できるのだ。バーチャルサイクリングソフトの「Zwift」はトレーニング向けのツールとしては秀逸ではあるけれど、グラフィックが古く感じられるのが残念な点だった。GTA Vも最新世代のグラフィックというわけではないが、Zwiftより高い映像品質で、圧倒的な臨場感が得られる。

カメラの視点を変えながら走行可能
見晴らしのいい丘の上で休憩

3D空間の地形に合わせてスマートサイクルトレーナーのペダルの重さが自動で変化するのも、リアルなグラフィックとあいまって実走感が強い。画面の右下に表示されるサイクルコンピューター風のコンソールでは走行距離やパワー、ケイデンス、時速、走行時間、傾斜などが表示されているので、トレーニングの際の目安にもなるだろう。

地形の傾斜に併せてペダルの重さもリアルタイムに変化。かなりの実走感がある

GT Bike Vでは、自分の好きなように走り回ることも、Zwiftのように制約を加えた形で走ることもできる。たとえばキーボードやマウス、あるいはゲームパッドを併用して自由に操舵しながら走らせられるし、「Auto drive」モードをオンにして自動で道路に沿って走ることも可能。自転車をこぎながらキーボードなどで操作するのはかなり厳しいが、オープンワールドであるGTA Vの魅力を自転車に乗りながら存分に味わえる。ロードバイクでは通常できない危険なダウンヒルも楽しめてしまう。

Auto driveで走るときは、あらかじめ4種類用意されている走行ルートをなぞるのがお手軽だ。画面隅にあるミニマップ内にナビ表示されるルートガイドや、フィールド上に現れる通過目標を確認しながら、ペダルを回すことに集中して走ることができる。

障害物やクルマは勝手に避けてくれるため、(筆者がプレーした限りでは)事故を起こすことはないので安心だ。ただし、タイミングが悪ければクルマに衝突することもあるかもしれない。

走行ルートは現在4種類用意されている。設定ファイルを作成することで独自のルートを追加することも可能なようだ
決まったルートを走るときは、ミニマップに表示されるルートやフィールドに現れる緑色の通過目標を目安にする
Auto driveなら、クルマや障害物はだいたい自動で避けてくれる(時々ぶつかる障害物もある)
マニュアルで操舵するときは、どちらかというとゲームパッドが楽かも。専用ホルダーの登場が待たれる
エクストリームダウンヒル! 道なき道もガンガン攻めることができる。が、山の上まで行くのも激坂(山の斜面)を登らないといけないのでけっこう大変

走行内容の分析も可能。GTA Vはニウエ島が舞台だった!?

ストーリーモードで動作するので、他のオンラインのプレーヤーと競ったりはできず、自分1人きりでひたすら走るスタイルになる。心拍センサーと連動する機能は今のところないから消費カロリーの計測も不可で、実際にフィットネスやトレーニングにフル活用できるかというと微妙かもしれない。

それでもMODメニューで「End and save current activity」を選ぶと、そのときの走行データをFITという拡張子でファイル出力でき、各種トレーニングサービスを使って取り込むことで走行内容を分析することは可能だ。

MODメニューで「End and save current activity」を選ぶとFITファイルが出力される

試しにGarminのサービス「Garmin Connect」でFITファイルを取り込んでみたところ、走行距離・時間、速度やパワーなどがきちんと記録されており、ケイデンスやパワーの時間軸グラフも表示された。走行ルートは地図表示できるものの、仮想空間の座標を強制的にGoogle マップに反映させているせいか、なぜか「ニウエ島」を走ったことになっていて、アクティビティの実施時刻もニウエ島のタイムゾーンに変換されてしまうというお茶目なところも。

FITファイルをGarmin Connectに取り込んでみる
データがきちんと記録されていることがわかる
ここは……ニウエ島!?

GTA Vのゲームジャンルが「クライムアクション」ということで、自転車をこぎながら武器を使って通行人や他のクルマを攻撃できるという、アナーキーでシュールなプレーが可能だったりもする。のだけれど、やはりGT Bike Vでの一番の楽しみは美しい風景を見ながら走れること。もし必要な機材がそろっているなら、Zwiftなどでマジメにトレーニングに励みつつ、時にはちょっとした息抜きにGTA Vの世界をポタリングしてみてはいかがだろうか。

興味のある人向けに、動作に必要なものや導入手順もまとめているので、ご参考まで。

「GT Bike V」の動作に必要なものと導入手順

GTA Vでスマートサイクルトレーナーを使うには、初めにいろいろと準備が必要になる。用意するものとMODの導入手順は以下の通りで、ハードルは若干高いかもしれない。

用意するもの

1. ANT+ FE-C対応のスマートサイクルトレーナー(今回はWahoo KICKRを使用)

2. ANT+ FE-C対応のUSBドングル

3. Windows PC版の「グランド・セフト・オート V」ゲーム本体(今回はEPIC Games上からインストールしたもので試したが、Steam版でも問題ないと思われる)

4.MOD本体「GT Bike V」

5.ライブラリ「Script Hook V」

6.ライブラリ「ScriptHookVDotNet」

MOD「GT Bike V」の導入手順

1. Windows PCを使い、(Zwiftなど他のソフトで)スマートサイクルトレーナーとANT+で問題なく接続できていることを確認する

2. GTA Vをインストールし、(まだプレーしたことがないなら)一度起動した後、終了する

3. GTA Vのインストール先フォルダに「GT Bike V」を展開した後にできる「Scripts」フォルダを丸ごとをコピーする

4. 「ユーザー名ドキュメントRockstar GamesGTA V」フォルダに「GT Bike V」を展開した後にできる「ModSettings」フォルダを丸ごとをコピーする

5. 「Script Hook V」を展開した後にできる「bin」フォルダの内容をGTA Vのインストール先フォルダにコピーする

6. 「ScriptHookVDotNet」を展開した後にできる「ScriptHookVDotNet」と名前の付いたファイルを全てGTA Vのインストール先フォルダにコピーする

GTA Vでスマートサイクルトレーナーを使い始める手順

1. GTA Vをストーリーモードで始める

2. F5キーを押して「GT Bike V」のMODメニューを表示(表示されない場合はMODやライブラリのインストールに失敗していると考えられる)

3. メニューの「Activate mod」をダブルクリックなどで有効にする(いきなりサイクリスト風の姿になる)

4. 体重などの設定を確認して、スマートサイクルトレーナーをこぎ出せば走り始める

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。