いつモノコト

通気性重視のシマノ室内サイクリング用シューズを1カ月間使った

シマノの室内サイクリング専用シューズ「IC100」

季節や天候に左右されることなく、いつでも好きなだけ自転車に乗れる室内のバーチャルサイクリングは、このコロナ禍、安全なフィットネスメニューの1つとして俄然人気が高まってきた。そういうこともあってか、より快適に室内サイクリングできるようにする専用シューズ「IC100」(直販価格11,000円)が自転車用品メーカーのシマノから登場している。発売からしばらく在庫切れが続いていたが、ようやく手に入れることができた。1カ月間ほど使用したので紹介しよう。

メッシュ&ベンチレーションで最大限の通気性

室内サイクリングをしている人はご存じのことと思うが、外をサイクリングするのに比べて室内でやっかいなのは汗をかきやすいことだ。屋外だと自然の風を全身に浴びることができ、汗が蒸発するのも早いので気にならないのだけれど、室内だとそうもいかない。エアコンやサーキュレーターをガンガン稼働させることになる。

バーチャルサイクリングソフトで室内サイクリング。エアコンとサーキュレーターは不可欠

それでも汗がどんどん噴き出てくるので、バスタオルをハンドル周りに置いたりしながら自転車をこぐのだが、1時間も走り続ければ乾いたところがなくなってタオルとして機能しなくなるくらいにはひったひたになる。とにかく暑さと汗との戦いでもあるので、全身をできるだけ通気性のいい装備にして、少しでも快適に室内サイクリングしたい。人によっては半裸状態でペダルを回していたりもするだろう。

で、ぐっしょり汗まみれになるのはシューズの中身も同じ。ある程度本気で自転車に乗る人だと、足裏がしっかり固定されるビンディングペダルとビンディングシューズにしていると思うが、通気性を高めた夏用シューズでも汗はかく。屋外や競技に向いたものが多いので、どちらかというと強度や耐候性を考慮したうえで、そこそこの通気性にする、というレベルに止まっているのだろう。

筆者がこれまで使っていた夏用の普通のサイクリングシューズ

それに対して、シマノが2022年1月に発売した「IC100」は、屋外利用を想定せず、室内のみに用途を絞り、徹底的に通気性を追求したサイクリング用ビンディングシューズだ。シマノのオンラインストア限定販売品で、人気なのかいまだ在庫が不足気味ではあるけれども、数量限定というわけではないようなので待っていれば在庫が復活するはず。他のECサイトで取り扱っているのを見かけたりもするが、値段を吊り上げているところが少なくないので注意しよう。

「IC100」はシマノのオンラインストア限定販売
倍以上の値段で販売しているECショップもあるので注意。普通に公式サイトで買おう

このIC100がどれくらい通気性に気を使っているかは、写真をひと目見ればわかるに違いない。一般的なビンディングシューズとは素材感が明らかに異なり、足の甲側の大部分がメッシュに。そして足裏側も大胆にベンチレーションが設けられていて、シューズの内部が透けて見えるよう。もちろん中敷きもパンチングメッシュになっているので、表からも裏からも、外気がシューズの中、あるいは足の素肌まで届きやすくなっている。

足の甲側はほとんど全体がメッシュ素材
足裏側はつま先と土踏まずあたりにベンチレーションが設けられている
シューズ内側から見るとメッシュが透けている。中敷きもパンチングメッシュ

もちろんビンディングシューズなので、シマノのSPDやSPD-SLといったクリートに対応し、それと互換性のある他のクリートも利用可能だ。筆者はユニークな円盤形状のSPEEDPLAY(Wahoo)のペダルを使っているが、もちろんこのペダル用のクリートも装着できる。

室内用ということで、通気性だけでなく軽さや使い勝手にもこだわっている。シューズの骨格となる部分(ソール)の素材や強度なんかも最適化しているのだろう。以前使っていた屋外用のシューズに比べて片側で50g以上軽く、室内のフローリングを歩くときの音も心なしか穏やか。ベルクロで締め付けるタイプだが、よほどガッチガチに締め付けた状態でなければ、いちいちベルクロを緩めなくても履いたり脱いだりできるようになっている。

以前使っていた夏用シューズは273g
「IC100」は221gで、52g軽量化
ベルクロで締め付ける力を簡単に調整できる
SPEEDPLAYのクリートを装着
問題なくSPEEDPLAYのペダルが使える

1カ月使い続けた結果、「IC100」のメリット・デメリットは……

そんなわけで、これまで使っていた夏用のシューズの代わりに1カ月ほど使ってみたのだが、結論から言えば、はっきりとしたメリットは残念ながら感じられなかった。また、デメリットとまでは言えないものの、「本気で室内サイクリングをする人」には物足りなく感じるところもありそうだ。

まずは一番気になる通気性。たしかに履いた直後など、通気性が高いと感じられる瞬間もあるとはいえ、ペダリング中に、それまでの夏用シューズに比べて明確に「涼しい」と感じることはなかった。ひょっとすると足に集中的にサーキュレーターの風を当てればより違いがわかるのかもしれないが、限られた室内スペースで、1台きりのサーキュレーターを使っている限り、身体に風を当てるのを優先するのは当然のこと。それを足のためだけに使うわけにはいかない。

必死にペダリングした1~2時間のトレーニング後、いくぶんシューズ内の蒸れ(汗の量)が少なくなった気がするときもあったが、結局のところソックスがびっしょり濡れることに変わりはなく、通気性が以前より高まったかどうかを実感することはできなかった。

履いたり脱いだりするときの手間も微妙なところがある。いわゆるスリッポンということで、ベルクロを留めたままの状態で脱ぎ履きできることはできる。が、それが通常のサイクリングシューズと比べて手軽かというと、そうとも言えない。

もちろんシューズのタイプにもよるのだが、たとえば筆者が使っていたBOAダイヤルと呼ばれる調整機構付きのシューズだと、履くときは片手で押さえて足を差し入れ、その後ダイヤルを押し込んで回転させれば締め付け完了となる。両手を使えば両足同時に履けたりするわけだ。また、脱ぐときはダイヤルを引っ張るだけで締め付けがすぐ緩み、ほとんど手の力を使わずに脱ぐことができる。

従来のシューズは片手で押さえつつ足を差し込み、BOAダイヤルを押し込んで回せば装着完了

一方のIC100は、履くときは片足ごとに両手を使って入口を広げながら足を差し込む必要があり、ベルクロを留めたまま脱ぐときは少なくとも片手でしっかり押さえなければならない。ベルクロを外せば力は少なく済むが、当然その分手間は増えることになる。ベルクロを少しだけ緩めにしておけばいいのでは、と思うかもしれないが、そうすると今度はペダリングに影響する。足の甲側が柔らかいメッシュ素材なせいで、ペダルを引き上げるときに力が十分伝わらないように感じるのだ。

「IC100」はベルクロを緩めずに履こうとすると、どうしても両手が必要になる

なので、しっかり引き足も使ってペダリングするには、ベルクロを強めに締め付けておかなければならない。そうすると脱ぎ履きにも当然力がいる、もしくはいちいちベルクロを外す必要が出てくる、ということになる。まあ、せいぜいが脱ぎ履きのときの数秒間の手間の話なので、それくらい気にしないという人もいるだろうけれども、あくまでもBOAダイヤル付きのシューズと比べたときには思ったほどメリットは感じられないだろうな、ということだ。

室内用の初めてのビンディングシューズならおすすめだが……

これまでは普通のペダルで室内サイクリングをしていたけれど、もっとちゃんとトレーニングしたいからビンディングペダルとシューズにしようかな、と考えている人には、IC100はおすすめできる製品だ。通気性や軽量さは、少なくとも夏用サイクリングシューズ並みかそれ以上を期待できるし、それでいて一般の競技用ビンディングシューズのような本気さが見えないカジュアル感もいい。価格も比較的リーズナブルだ。

が、すでにある程度通気性のある夏用サイクリングシューズを室内で使っているところにIC100を投入しても、価格相応の快適性や利便性を実感するのは難しいかもしれない。だったらその予算でサーキュレータを大きくするとか、もう1台追加するとか、もしくは室内サイクリング中に動画を楽しめるタブレットなんかに投資した方が「快適さ」はアップするように思う。いずれはさらなる進化版、同じメッシュ素材のBOAダイヤル付きシューズなどが登場することに期待したいところだ。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。