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ドコモ銀行参入 住信SBIネット銀行を子会社化
2025年5月29日 16:22
NTTドコモは29日、住信SBIネット銀行の連結子会社化を発表した。ドコモと住信SBIネット銀行、三井住友信託銀行、SBIホールディングスが決議した。ドコモは住信SBIネット銀行をドコモグループに迎え入れ、銀行業へ本格参入する。
SBI HDが持つ34.19%を約1,864億円で取得するほか、一般株主が持つ31.62%を1株あたり4,900円、約2,336億円で公開買付を行なう。総額は約4,200億円。公開買付成立後の住信SBIネット銀行の持株比率は、ドコモが65.81%、三井住友信託銀行が34.19%保有し、議決権比率ではドコモと三井住友信託銀行が50%ずつを保有することとなる。住信SBIネット銀行は実質支配力基準に基づき、ドコモの連結子会社となる。
ドコモの銀行業参入により、銀行口座と決済・証券等のドコモの金融サービスを一体的に提供。「金融サービスがフルラインナップで揃う」(ドコモ前田社長)とし、スマートフォン1つで貯金、決済、投資、保険、融資、ポイントに至るまで、まとめて便利に利用できるようにする。また、複数サービスの利用に応じてdポイントの特典を付与するなど、お得な仕組みを構築する。
加えてデータ活用や顧客基盤を強化していく。従来から活用してきた顧客データに銀行サービスを加えて、おすすめなどを高度化する。また、ドコモ金融事業の成長加速についてはドコモの販売チャネルを使った預金獲得などを進める。
5月30日から住信SBIネット銀行に対して、株式公開買付を実施し、一般株主には1株4,900円で取得する。最終的にはドコモが65.1%を取得し、取引完了は11月頃を予定。2025年第3四半期以降、住信SBIネット銀行はドコモの連結子会社となる。
また、ドコモと住信SBIネット銀行の業務提携により、デジタルバンク事業における口座数伸長、メインバンク化に伴う預金残高拡大による成長などのシナジーを実現。特に、 ドコモの顧客基盤やリアルとデジタル接点を活用したサービス提供により、銀行口座獲得を強化していく。
また、ドコモのサービスやポイント還元と連携し、銀行口座のメインバンク化の促進、ドコモのサービス・販売網等を活用した住宅ローン市場での競争力強化、ドコモグループのサービスとの連携による金利優遇商品等の開発などの商品の差別化、ドコモのメディアを通じた認知向上やドコモショップ等を活用した販売チャネルの拡充を目指す。
住信SBIネット銀行のBaaS事業「NEOBANK」では、「JAL NEOBANK」などパートナー企業に銀行サービスを提供してきた。この枠組みは不変で、ドコモ子会社化により強化していく。ドコモグループの法人ネットワークを活用したBaaS事業の提携先の拡大なども予定している。
住信SBIネット銀行の円山社長は、「巨大な経済圏を持つ企業とは違うことをやらなければいけなかった。それがBaaSで、銀行サービスを多くの企業に提供し、あらゆる産業を銀行に世界初のモデル。このBaaSが成長ドライバで、実際新規顧客の7割はBaaS経由になっている」という。
一方、大きな経済圏を持つメガバンクが本格的にデジタルバンクに参入しており、「このようなタイミングで(ドコモによる子会社化の)話があったのはよかった。我々にはプラスしかない」と説明し、ドコモの法人のネットワークなどを使ったパートナー開拓に期待しているとする。加えて、「既存のNEOBANK提携先は自社の経済圏をもっている。これはドコモの経済圏に組み込むわけではなく、切り分けて考えている」とした。
24年にドコモ社長に就任した前田義晃社長は、就任当初から「銀行は金融サービスの起点になる」として、銀行の必要性を強調していた。
通信大手においては、“経済圏”などを目的に金融サービスを強化しており、KDDIはauじぶん銀行、ソフトバンクはPayPay銀行、楽天は楽天銀行を有している。NTTドコモは、非通信事業の「スマートライフ事業」を強化しており、マネックス証券やオリックス・クレジットを子会社化し、銀行参入にも意欲を見せていたが、金融サービスの核となる銀行に参入が決まった。
NTTとSBI HDも資本業務提携 SBI証券でdカード積立
また、両社の親会社となるNTTとSBIホールディングスも資本業務提携を発表。資産運用・セキュリティトークン・保険分野における新サービスや、金融サービス事業におけるシステムの開発などで協力していく。NTTは、SBIホールディングスが実施する第三者割当増資を引き受け、SBI HD株式の約8.18%、総額約1,108億円を取得する。
なお、SBI HDではSBI証券があり、NTTドコモはマネックス証券を子会社化しているなど、証券においては競合関係にある。この点について、SBI HDの北尾会長は「(提携を進めるうえで)課題だったが、公平かつ公正に扱ってほしいということで双方合意ができた」と言及。「どの証券会社を使うか、決めるのはお客様。顧客本位で公平に取り扱うということ」としており、ドコモ前田社長も「住信SBIネット銀行でSBI証券を使っている人は大勢いる。この提携により、不便になることはなく、必ずこれからも便利にお使いいただける」とした。
提携により、新たな銀証連携サービスも展開。SBI証券の1,409万口座、住信SBIネット銀行の825万口座と、ドコモの9,141万件の契約数を組み合わせたサービス展開も目指す。具体的には、SBI証券でのdポイント積立投資や、dカードによる投信積立を提供予定。
SBI証券では「オープンアライアンス」としてパートナーと協力して事業推進しており、三井住友カードとも連携した。現在、口座獲得における48.4%がアライアンス経由となっており、パートナーからの送客による顧客基盤拡大を目指す。
NTTとSBI HDは、資産運用やセキュリティトークン、保険、Web 3、メディアなどでも協力していく。
住信SBIネット銀行は「ベストなパートナー」
なお、NTT島田社長は、2月の決算会見において、銀行参入について質問され、パートナーについては、「言葉は悪いが『帯に短し、襷に長し』で、いらない機能はいらない。必要な機能がほしいので、自分たちで新しい銀行を作ることを含め、次の決算発表(5月ごろ)までには結論を出していきたい」と言及していた。
住信SBIネット銀行という「フルサービス」のネット銀行を子会社化することになったが、NTT島田社長は「基本的にトランザクションの機能がほしかった。その点で、住信SBI銀行はベストだと思っている。いらないと申し上げたのは、店舗やATMなどの“重たい”もの(設備)。住信SBIネット銀行がお持ちのものは、銀行として必須のもので、『帯にもなるし、襷にもなる』ベストなパートナー」と答えた。
住信SBIネット銀行の使いやすさに対し、「dアカウントが使いにくい」という声もある。この質問について、ドコモ前田社長は「皆様から多くの指摘をいただいている。反映させるべく検討開発している。住信SBIネット銀行のUI/UXは素晴らしいので、それらを自分たちのサービスにうまく反映していきたい」と応じた。
かつてソフトバンクグループの孫正義会長と連携してきた北尾氏には、「NTTと組むことについて」どう考えるかとの質問がでた。「孫さんが考えそうなことは全部わかる。多分彼は、『よかったね』というんじゃないかと思う。彼の関心はここにあるわけじゃない。ソフトバンクの宮川さんは違う感想を持つかもしれませんが」と応じた。