ニュース

ドコモ、オリックス・クレジット連結子会社化 個人ローンや“経済圏”強化

NTTドコモは6日、オリックス・クレジットを連結子会社化すると発表した。また、株主間契約において、ドコモとオリックス・クレジットは資本業務提携を行なうことでも合意した。

ドコモでは、「dカード」や「d払い」などのキャッシュレス決済サービスを起点に、さまざまな金融サービスを提供している。また、'22年7月に開始した個人向け無担保ローンサービス「dスマホローン」は、2024年2月に、累計貸付実行額370億円を達成し、拡大している。

今回、オリックス・クレジットと提携することで、ドコモの持つdポイントクラブ9,876万人の会員基盤と、オリックス・クレジットの融資事業のオペレーション力、個人向け融資の与信ノウハウ、融資分野における新サービス開発力などを連携。利用者のライフステージに合わせた金融サービスの提供を目指すという。

具体的には、dスマホローン事業の拡大に向けた、与信力強化・オペレーションの高度化や、ライフステージやニーズに応じた、新たなローン商品の共同開発・販売、ドコモのメディアや販売チャネルを活用した、オリックス・クレジットの既存事業の強化などに取り組む。出資金額は792億円で、譲渡後の株式持ち分はNTTドコモ66%、オリックス34%。

なお、この提携による、オリックス・クレジットの商品に関する契約内容やサービス内容の変更の予定はない。また、リストラや人員整理も行なわない。

住宅ローンは経済圏対決に必須 「マネ」活的通信・金融連携も

NTTドコモ 執行役員 スマートライフカンパニーの江藤俊弘統括長は、dカードやd払い、dスマホローンの取り組みのほか、マネックス証券との資本提携などドコモ金融サービスの強化の取り組みを紹介。その流れの最新事例として、オリックス・クレジットの連結子会社を位置づける。

dポイントをベースとし顧客基盤を拡大してきたが、顧客接点となる「決済」サービスから、今後は「投資」や「融資」、「保険」などの新サービスに繋げ、ドコモの金融サービスを強化していく流れだ。

この提携で、まずは「dスマホローン」を強化。スマホ利用者向けの無担保ローンサービスで、ドコモユーザーに金利優遇を行なう点が特徴。回線契約やdカード契約などでローン金利を優遇するほか、スマホで手続きを完結できる。また、1,000円から借りられるため、「エントリーの障壁が限りなく低い」とし、d払いですぐに使える点が特徴となる。

開始から1年強で累計貸付額370億円を突破したが、オリックス・クレジットの与信ノウハウやサービス開発力、オペレーション力などを活かして、商品力を高めていく。また、オリックス・クレジットでは、無担保ローン以外に住宅ローンなども有しているため、これらをドコモの販路や商品として活用すべく検討していく。

オリックス・クレジットでは、スマホ起点の「ORIX MONEY」などの個人向け無担保ローンを展開しており、2023年12月末の無担保ローン貸付残高は1,000億円。これは業界6位の規模となる。

また信用保証事業やモーゲージバンクも展開。住宅ローン事業では、「フラット35」を中心に展開しており、フラット35の年間融資実行件数は7,000億円規模で国内2位となる。強みとしては、与信ノウハウのほか、審査から回収まで自社で完結できる体制、営業ネットワークと顧客基盤などを挙げる。

左からNTTドコモ 執行役員 スマートライフカンパニー統括長 江藤俊弘氏、オリックス・クレジット岡田 靖 取締役社長、オリックス 執行役 渡辺 展希氏

ドコモの江藤氏は、提携への期待について、「ローン事業(dスマホローン)を自前で立ち上げて2年弱だが、今後の拡大に向けて課題を抱えている。具体的には、事業運営のためのオペレーション力、審査と回収の幅広い業務ノウハウが必要。提携の大きな理由は、長年ローンに携わり、独自の与信のノウハウを持ち、自前でコールセンターなどのオペレーションも持つ。そこが魅力的だった。これらを活かして我々のローン事業拡大を実現できると考えた」と説明。

期待する商品としては、「ドコモは住宅ローンを提供していない。(auや楽天など)他の経済圏では、当たり前のように住宅ローンが経済圏の商材になっている。オリックス・クレジットとともに開発し、提供していきたい」と経済圏に住宅ローンを取り込むことも、提携の狙いの一つとする。

また、携帯電話の料金プランと金融サービスの連携強化にも今回の提携を活用していく。

「他社でもペイトク(ソフトバンク)、マネ活(au)など、金融サービスと電話事業が渾然一体となって提供・訴求している時代。それらを意識した今後のプランも念頭に置いている。現時点で決まったものはないが、他社の動向も意識しながら、社内でディスカッションを進める」(NTTドコモ 江藤氏)。

無担保ローンにおいても、「個人的意見」としながらも「今経済圏で無担保ローンの1位は楽天銀行。ここにいち早く追いつき追い越すことをここ数年で実現したい」と語り、他社も強化する通信・金融連携を強く意識していることを示唆する。

「dスマホローン」などの無担保ローンは、dカードとは競合しないとしており、「基本的にはお客様の選択で、ローン事業全般の成長を目指していく」と説明。カード事業よりは、楽天銀行やPayPay銀行の無担保ローンに相当するサービスとして、dスマホローンを軸に強化していく方針という。

なお、ドコモでは2022年から三菱UFJ銀行と提携し、デジタル口座サービス「dスマートバンク」を展開している。'21年の提携発表時には、住宅ローンも検討課題に入っていたが、「初期アイデアとして住宅ローンを検討していたが、金利が低い中で、競争力のある住宅ローンが出せるかどうかが論点。明快な答えを持てず、住宅ローンは実現していない。三菱UFJ銀行との協業を止めるわけではないが、良いサービスをできるよう継続して検討していく」とした。