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線状降水帯・台風発生のメカニズム解明へ 海上データ収集でNTTら共同研究

NTTと沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、線状降水帯・台風等の極端気象に関する大気海洋機構解明のため、気象庁気象研究所との共同研究契約を締結した。

気象衛星の発展により、気象予測精度は向上したが、更に予測精度向上をめざすためには、気象衛星では捉えることが難しい、海上気象や海洋表層における観測データが必要になる。

NTTとOISTは、極端気象予測の精度向上に向け、台風直下等の海域大気海洋観測手法の高度化をテーマとして2021年度から共同研究を実施。台風の予測精度向上に向け、沖縄近海において海上気象や海洋表層の観測データを直接収集する技術の研究開発を推進してきた。

気象研究所は、線状降水帯や台風に伴う豪雨などの顕著現象の実態把握やメカニズムを解明するため、2025年5月下旬から10月にかけて、大気と海洋の双方をターゲットとした集中観測を実施する予定。

今回の研究では、NTT、OIST、気象研究所の3者がそれぞれの知見を活かし、共同で線状降水帯・台風等の観測データを直接収集。得られた観測データにより大気海洋機構の解明に貢献する。

具体的には、出水期(6月~9月頃)における海域の大気や海洋表層に関わる大気海洋観測データを直接収集するため、無人海上観測器や観測ブイ等を南西諸島海域に投入。線状降水帯・台風の分析に必要な気圧、気温、温度などのデータを取得する。NTTの通信技術等を使うことで、海域での超広域な観測データ収集を可能にしている。

台風等の実態把握・メカニズム解明のためには、データの乏しい海洋上における大気下層の水蒸気や海水温などを直接観測することで、顕著現象に対する海洋の役割を理解することが鍵となる。線状降水帯や台風に伴う顕著現象の形態は極めて多様で、発生場所や要因、台風の経路などが事例ごとに異なるため、多様な観測データの収集と分析が必要になる。そのため、2025年度から4年間にわたって観測研究を実施し、各年次において段階的に観測領域と解析対象を拡張していく計画という。

2025~2026年度は、「線状降水帯・台風 海表面観測実証」とし、自律航行が可能な無人海上観測器や観測ブイを駆使し、観測データを収集。2027年度以降は、観測対象を海表面から洋上大気(海面~対流圏下層)にまで拡張し、「線状降水帯・台風 洋上大気観測実証」とし、大気観測センサなどを併用し、観測データを収集する。大気海洋機構の解明に関しても、段階的に分析を進め、予測技術向上のための研究を促進する。

NTTは今後、衛星IoT、HAPSを活用した地球規模での大気海洋IoTセンシング基盤の研究も促進し、海洋国家である日本に不可欠な海洋観測プラットフォームの実現をめざすとしている。また、地球規模の観測データとシミュレーションを組み合わせ、高精度な極端気象予測のユースケースに応じた活用技術の研究開発も進める。