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無人ミニ店舗に“音”でセキュリティ。新ミニストップポケット

ヤマハとミニストップは、ヤマハ開発の音響通信技術を活用する「簡単入店機能」を追加した無人のミニコンビニ店舗の実証実験を開始した。7月4日にはヤマハ東京事業所内に実験店舗がオープンする。ミニストップは、格安で始められる無人ミニコンビニを拡大する目的で、ヤマハ開発の簡単入店機能を導入した店舗の需要を測る。

実証実験は、ミニストップがオフィス向けに展開している無人ミニコンビニ「ミニストップポケット」に、ヤマハの音響通信技術「SoundUD」を活用した「簡単入店機能」として、スマートフォンを使いアプリ不要でロックを解除できる、簡易なセキュリティゲートやドアを設置するというもの。

これにより、従来はオープンスペースに展開していたミニストップポケットを、パーティションなどで区切られたエリアの中に設置できるようにして、これまで展開できていなかった病院や学校、施設のロビーといった半公共空間にも展開できるようにする。

ミニストップはオフィス向けの無人ミニコンビニ「ミニストップポケット」をすでに約700店舗、展開している。レジは完全無人で24時間稼働できる認証を取得した独自開発のレジで、レシートも電子レシートにした完全キャッシュレス・ペーパーレス仕様。最小規模は冷蔵庫とゴンドラがそれぞれ1つで合計100品目という内容。現在はオフィスや工場といった、関係者しか出入りしない空間向けに展開されている。ミニマムサイズでは初期費用0円、レジのモバイル通信の料金も負担がかからないという内容で、手軽に導入できるのが特徴になっている。

ミニストップポケット。最小単位は冷蔵庫・ゴンドラがひとつずつ。通常はオフィスなどのオープンスペースに設置されている
無人で24時間稼働できるセルフレジ。キャッシュレス専用

一方、ミニストップポケットには無人店舗専用の高度なセキュリティ機能はセットになっていない。セキュリティゲートやカメラによる画像・商品の認識、棚のセンサー、専用アプリなどは用意されていない。このため、施設関係者以外の人も利用する病院や学校、ビルのロビーなど、半公共的な空間には、セキュリティ面で設置が難しいという面があった。実際にこうした施設から導入の問い合わせがあっても、断っている状況だったという。

ヤマハが開発し350社・団体で共通化を推進している「SoundUD」は、東京五輪のサポートでも活用されるなどすでにさまざまな分野で導入されている技術。音楽や音といっしょに、人には聞こえづらい帯域、あるいは騒音環境下であっても音があまり含まれていない“静かな帯域”に、トリガーとなる音を流すという音響通信技術で、スマートフォンのスピーカーや一般的なマイクを使って実現できるのが特徴。駅のホームでも問題なく利用でき、実際に導入されているという。

ミニストップポケット+SoundUDの流れ

報道関係者向けに先行公開された実証実験店舗は、簡易なパーティションとドアに区切られたスペースの中に、ミニストップポケットが設置されているという形。入室に専用アプリは不要で、ドアの前に貼られたQRコードを読み取るか、NFCタグにスマートフォンをかざすと、URLが開いて専用Webサイトにアクセスする。Webサイトではトリガーとなる音を再生するボタンが表示されるので、タップして音を再生すると、ドア付近に設置されたマイクが“トリガー音”を拾い、パーティション内に設置されたタブレットを通じてドアのロックが解除される。退出する際はこのタブレットのボタンをタップしてドアのロックを解除するという流れ。

ヤマハ東京事業所内にオープンした実験店舗「ミニストップポケット SoundUD 0号店」。有人の売店があったものの、コロナ禍で閉鎖されたという場所に設置。なおこの店舗は施設関係者しか入れないエリアにあるため本来セキュリティゲートは不要だが、実証実験の一環で設置されている
ドア横にドアの開け方を掲示
QRコードか内蔵NFCタグをスマートフォンで読み取る。アプリ不要で施設のゲストも利用しやすい
専用Webサイトにアクセス、音を再生するボタンが表示されるのでタップして再生する。トリガー音(通常は聞こえない)とは別にメロディも流れる
ドア付近のマイクがスマートフォンから再生された「トリガー音」を拾う。騒がしくても問題なく、人にはほぼ聞こえない帯域も使われるため「今ので聞こえたの?」と驚く
ドアのロックが解除されたところ
出る時はタブレットで解錠する

専用アプリが不要なため、たまたま訪れた人や施設のゲストが利用する際のハードルが低いのも特徴。店内BGMとして、ヤマハの楽器を使用した録り下ろしの楽曲も用意、来店者が楽曲をダウンロードできるサービスも用意している。また、SoundUDに対応した専用アプリを使い、店内BGMをトリガーとして、来店スタンプカードのようなサービスを提供することもできる。ほかにも応用として、セキュリティカメラと組み合わせて、利用者が困っていることを検知したら有人操作でアナウンス音声を流すといったことも可能という。

入室に専用アプリは不要だが、スタンプアプリなどを提供することは可能

桁違いの安さで施設内の無人コンビニを実現

一般に、駅構内や路面店に出店される“無人コンビニ”など、高度なセキュリティ機能を備える無人店舗は、規模が大きくなると数千万円単位のコストがかかるとされ、設置できる場所や売上規模が自ずと限られている。

今回の実証実験で展開される店舗は、初期費用0円からスタートできるミニストップポケットに、数十万円程度とみられる費用を追加するだけで実現できるのが特徴。セキュリティレベルとコストの折衷案という形だが、両社は、半公共空間では最上級のセキュリティまでは必要ないというケースは多いという見立て。コロナ禍により、オフィスビルの有人の売店が閉鎖されるというケースは増加しており、病院や学校といった半公共空間も含め、ミニストップとヤマハは共同でこうしたマイクロマーケット(施設内ミニ店舗)の獲得を狙う。