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資さんうどんを全国進出・店舗倍増させた佐藤社長退任 外食業界を変えた8年
2026年2月26日 08:20
九州のローカルチェーンから、店舗数倍増、全国展開へ。そんな「資(すけ)さんうどん」の快進撃を長らく支えてきた、株式会社資さん・佐藤崇史社長が、3月をもって、運営会社「株式会社資さん」の社長から退任し、「資さん」や「すかいらーく」グループから完全に身を引くという。
「停滞ローカルチェーン」から「全国展開」に導いた社長
佐藤氏が2018年3月に社長に就任してからの「資さんうどん」(以下、資さん)の勢力拡大は凄まじく、本拠地である九州だけでなく大阪、東京へと次々進出を果たしている。
2024年10月には外食大手のすかいらーくから「240億円」という破格の提示によるM&A(買収)で傘下入り。ここからさらに出店の勢いが加速しており、社長就任から店舗は倍増、いまや全国100店舗も達成間近だ。
驚くべきは、それだけではない。普通のファミレスなら1日の売り上げは30万~50万円程度のところ、関東1号店の「八千代店」(千葉県)では、130席の店舗で1日平均の日商が200万円にものぼるという。実際に足を運んでも、おなじグループの「ガスト」「ジョナサン」とは比べようもないほどの繁盛ぶりには、目を見張るものがある。
いまや同グループの「ガスト」「藍屋」から「資さん」への転換も相次いでおり、他の店舗も行列必至の人気をキープしている。在任中に「資さん」の全国展開を果たし「他の飲食店ブランドよりも確実に顧客の支持を得るフォーマット」に成長させた佐藤社長の功績は、あらためて凄まじい。
しかし、佐藤社長が就任した2018年当時、「資さん」は危機的な状況にあったという。なぜ、ここまでの躍進を遂げることができたのか? 外食業界の歴史をも変えた「資さんと佐藤崇史社長の8年間」を、改めて振り返ってみよう。
創業者の精神を「変えずに進化させた」
1976年に北九州市戸畑区に1号店を出店した「資さん」は、2013年に創業者・大西章資(おおにししょうじ)さんが社長を退任(2015年に死去)して以降、後継者問題に悩まされ続けてきた。業績は停滞しており、当時の報道によると、「ガス会社に売却」「地元大手運輸会社に売却」などの諸説が飛び交っていたという。
実際には、地元銀行が主体のファンドに経営権が移ったあと、2018年には投資会社「ユニゾン・キャピタル・パートナーズ」が「資さん」を取得。ここで、ソニーやファーストリテイリング(ユニクロ)、エムピーキッチン(三田製麺所など)でマネジメントの経験を積んできた佐藤氏が、社長として「資さん」に送り込まれてきた。
一般的に、ファンドによる買収は「企業価値を上げて転売」(バイアウト)するケースが多い。ファンドの方針で「企業風土より効率」とばかりに会社の在り方を大きく変えてしまう場合もあり、業績の低落に至って会社の価値を落としてしまうケースもある。
しかし、着任の内示を受けた佐藤社長は丁寧に全店を回り、創業者・大西さんの精神を残すべく、一緒に働いていた人材も含めて徹底的に話し合いを行なった。そのうえで、メニューや方針は変えずに「幸せを一杯に。」という経営理念を言語化したという。
一方で、人材教育システム「資さん大学」による人材育成で、「資さん」全国進出へのレールを、着々と敷いていった。外部から飛び込んできた経営者であるにもかかわらず、創業者の精神を受け継ぎ、うどん店として丁寧に営業を続ける道を選んだのだ。
同時に、メールやFAX頼みであった社内インフラを統一するとともに、客席にタッチパネルを導入して店舗の運営を効率化した。いわゆる「DX化」を果たしたことで、それまで2%台にとどまっていた利益率は大幅に改善、いまは安定して6%程度の利益を出せるようになったという。
地盤を築きつつあった矢先にコロナ禍が訪れたが、SNSでの「資さん」ファンとの細かなやり取りやファンブックの発行で、熱心なファンの「病みつきになって何度でも食べたい」という心理を可視化させた。こういった地道な心理戦を続けることで、長引く外出自粛が解消された瞬間に、コロナ禍明けの「リベンジ消費」を「資さん」に誘導できた。ここからの連続出店、繁盛店の構築は、もはや言うまでもない。
創業から半世紀にもわたって営業してきた「資さん」は、「北九州のソウルフード」とも称される。佐藤社長が8年にわたって挙げた最大の実績は、「守るべきは守り、変えるべきは変え、どの地でも『資さん』が愛されるように進化させた」ことだろうか。
外食業界を変えた!「すかいらーく」への破格バイアウト
先に述べた通り「資さん」は2024年10月、240億円という破格の提示ですかいらーくHDに買収された。このM&Aは図らずとも、外食業界の「バイアウト」(M&Aによる会社売却)の増加に繋がっているのだ。
令和の外食業界は、景気の落ち込みによる「デフレ」がトレンドの中心になっているが、原材料の高騰などで、顧客が望む価格帯に合わせたくとも、合わせられない。かつ、すかいらーくのような複数のブランドを展開する飲食チェーンは、メインとなる「ガスト」のようなブランドの業績が伸び悩んだ際に、他のブランドでグループ全体の落ち込みを挽回する必要がある。
「資さん」は単価500円~1,000円と価格帯もお手頃であり、徐々に高価格帯にシフトしている「ガスト」に変わる「お手頃価格帯の和食ファミレス」として、すかいらーくから見込まれて買収を受けた。
240億円という金額が、いかに見込まれていたかを証明している。実際に「資さん」がすかいらーくで手薄だった「お手頃・和食ファミレス」ポジションにしっかり収まっており、すかいらーくグループが「売上収益4,577億9,400万円(前年同期比14.1%増)、営業利益299億5,700万円(23.9%増)(2026年2月期)という好業績を上げるけん引役になったという。
近年の外食業界の買収例をとるなら、牛丼チェーンがメインの「吉野家HD」によるラーメン「ばり嗎」「キラメキノトリ」、米大手金融「ゴールドマン・サックス」の「バーガーキング(日本法人)」など……いずれも企業再生・経営の効率化による高収益化を期待してのM&Aであり、「資さん」ならびに佐藤社長が成し遂げた企業再生に刺激を受けている面もあるだろう。
佐藤社長が去っても、「資さん×すかいらーく」が起こした成功例は、色あせない。
後継社長は福岡県出身・讃岐うどんブームの立役者
さて、佐藤社長が去ったあとの「資さん」は、誰が指揮を執るのか? 後継人事はすでに発表があり、2024年のすかいらーくHD傘下入りから「資さん」会長を務めてきた崎田晴義氏が、4月から社長に就任するという。
崎田氏は福岡県生まれで、県内の高校を卒業後、スーパー大手「ダイエー」で勤務ののち、香川県内でアパレル業を営む「フォー・ユー」に入社。実はこの会社が「はなまるうどん」に携わっており、崎田氏は分かれて創立した「さぬき小町うどん」の経営者となる。
さぬき小町うどんは、一時期は全国50店舗まで成長させたものの、さぬきうどんブームの終焉とともに経営が立ち行かず、すかいらーくグループに合流。のちに「すかいらーくレストランツ」取締役などを務めたのち、「資さん」に合流している。崎田氏は福岡県の出身でもあり、また「讃岐うどん」ブームを身をもってご存じのはずで、うどん業界・飲食業界では得難い、百戦錬磨の方だ。
かつ「資さん」でも積極的に業務に携わっているようで、2025年2月にオープンした「資さんうどん両国店」では、行列に並んで1時間・2時間待ちの盛況のなかで自ら忙しく立ち働き、まわりに指示を出しておられた。筆者は何度か通い、高確率でお見かけしている。飲食業界のベテランとして、現場の感覚をご存じの崎田氏なら、今後の「資さん」を支えていけるのではないかと考える。
社長が交代しても、「資さんうどん」は「資さんうどん」に変わりなし。佐藤社長の今後のご活躍を祈るとともに、変わらず家族で通っていきたい。







