石野純也のモバイル通信SE

第93回

Androidスマホ日本一を見据えるサムスン「Galaxy S26シリーズ」の狙い

2月25日に、サムスン電子はサンフランシスコでGalaxy Unpackedを開催。Galaxy S26シリーズ3機種などの新製品をお披露目した

サムスン電子は、2月25日(現地時間)に米カリフォルニア州サンフランシスコで新製品発表イベントの「Galaxy Unpacked」を開催。26年のフラッグシップモデルに位置づけられる「Galaxy S26」シリーズを発表した。日本では、ドコモ、KDDI、ソフトバンクに加え、楽天モバイルからも発売される。

ティアワンになった日本のGalaxy

Ultraがつく最上位モデルがGalaxy Noteシリーズのポジションを受け継いだこともあり、これまでのGalaxy SシリーズはベースモデルとUltraで、デザインのテイストが大きく異なっていた。Galaxy S26シリーズでは、これを統合。「Galaxy S26」「Galaxy S26+」「Galaxy S26 Ultra」でデザインが共通化され、よりシリーズ感を強くしている。

Galaxy S26シリーズ3機種。デザインが統一され、よりシリーズ感が高まった

チップセットに「Snapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxy」を採用するなど、処理性能を底上げしたうえで、サムスン電子は売りにしていた「Galaxy AI」を強化。「先回りするAI」をテーマに、ユーザーの行動を読み取り、スケジュールや画像などを提案する「Now Nudge」という機能を搭載した。英語では、アプリの操作を肩代わりするエージェント機能にも対応する。

AIの機能がさらに進化し、メッセージ内容に応じて必要な画像やスケジュールを自動で提案してくれるようになった

処理能力を底上げしつつ、AIでできることを増やしていくというアプローチはある意味王道ともいえる進化だが、日本市場ではこれらに加え、勢いを加速させる3つの取り組みを展開する。

1つ目が、“ティアワン”として世界最速グループでの発売になったことだ。Galaxy S26シリーズは、サムスン電子が重視する米国やおひざ元の韓国とほぼ同日となる3月12日に投入される。

これまでもサムスン電子は、徐々に発売を早めてきていたが、おサイフケータイ対応などのハードウェアの違いもあり、第2集団として最速発売の国や地域よりも、やや遅れて投入されていた。グローバル発表から発売まで時間が経っていたこともあり、情報の鮮度がやや落ちてしまったことは否めない(逆にちょうどiPhoneの発売とかぶり、テレビで対抗軸として大々的に取り上げられたこともあったが……)。

発売は3月12日を予定。日本が一次販売国に“昇格”した

ハードウェアが異なり、なおかつキャリア向けのカスタマイズも加える日本版を世界と同時に発売できるのは、サムスン電子が日本市場をより重視するようになったと見ていいだろう。実際、アップルとグーグル以外のメーカーは、グローバルでの発売から遅れがち。特にキャリア向けカスタマイズをしているモデルが同時というのは、かなり珍しい。

ついに4キャリア対応 Galaxyにとっての意味

2つ目の違いは、取り扱いキャリアを拡大したことだ。25年の「Galaxy S25」シリーズでは、約10年ぶりにソフトバンクでの取り扱いが復活。久々のGalaxyだったが、ソフトバンクがiPhone、Pixelと並ぶ“3本柱”のように扱い、実質価格を積極的に下げて攻勢をかけたこともあり、フラッグシップモデルの売れ行きが向上した。

Galaxy S26シリーズでも引き続きソフトバンクは販売するが、今回から、新たに楽天モバイルもキャリアに加わり、正式な4キャリア対応になった。楽天モバイルは過去にもGalaxyシリーズを取り扱っていたものの、フラッグシップモデルの取り扱いは限定的だった。通信料が安く、端末購入プログラムの整っていなかった楽天モバイルでは、価格の高いハイエンドモデルを買いづらいという事情もあった。

ついに楽天モバイルでも最新のGalaxyを他社と同タイミングで購入できるようになる。カラーやストレージ容量のバリエーションは他社より少ないものの、キャンペーンも展開される

一方で、楽天モバイルも1,000万契約を超え、ARPU(1ユーザーからの平均収益)を重視するなか、ハイエンド端末の重要性が増している。2月に開催された楽天グループの決算説明会では、データ利用量が多く、ARPUの高い20代、30代のユーザーを獲得するため、「Rakuten最強U-NEXT」のような料金プランとともに、ハイエンド端末を拡充する方針が三木谷浩史会長兼社長から語られていた。

楽天モバイルはARPU向上施策の一環として、よりデータ利用量の多いユーザーに使われるハイエンド端末を拡充する方針を示していた。写真は楽天グループの決算資料

Galaxyシリーズの取り扱いは、サムスン電子にとって販路が増えるメリットがあるだけでなく、楽天モバイルにとってもラインナップの拡充につながるというわけだ。4キャリアで販売が横並びになることで、iPhoneやPixelのようにGalaxyを軸に獲得競争が激化する可能性もある。

Android国内トップを見据える

3つ目の新たな取り組みは、製品名に「+」のつくGalaxy Sを取り扱い、3モデル構成になるということだ。

元々、海外では「Galaxy S24+」や「Galaxy S25+」といったベースモデルの画面サイズを大型化したモデルが販売されていた。日本でも、「Galaxy S21+」などが取り扱われたことはあったが、一部キャリアにとどまっていた。22年の「Galaxy S22」シリーズから展開が見送られており、約5年ぶりの投入。しかも今回は、4キャリアとも3モデルを販売する。

日本でも、久々に「+」のつく大画面版Galaxyを販売する。しかも4キャリアとオープンマーケット版、すべての販路で取り扱われる

こうした取り組みの背景には、昨年からシェア拡大に本腰を入れ、ユーザーが多様化していることが挙げられる。調査会社MM総研が2月に発表した25年のメーカー別シェアでは、サムスン電子がApple、グーグルに次ぐ3位につけており、4位のシャープを抜いた。2位のグーグルとのシェアの差は、わずか1.4ポイントとAndroidスマホで国内トップの座も視野に入りつつある。このような状況で、ラインナップを拡充するのは自然な流れと言えるだろう。

MM総研が2月に発表した25年の出荷台数調査サムスンは3位につけ、Androidで2位のポジションにつけている。1位のグーグルにも迫っていることが分かった

国内での価格が上がり、最上位モデルである「Galaxy S26 Ultra」が218,900円(S25 Ultraは199,800円)からとこれまで以上に高くなってしまったことで、「Galaxy S26+」の人気が高まる可能性もある。Sペンや最上位のカメラまではいらなくても、大きなディスプレイを求めるニーズはあるからだ。価格設定がうまくはまれば、“Ultraより手の届きやすい大画面のGalaxy”というポジションを築けるのかもしれない。

海外ではアップルとトップシェアを争うサムスン電子だが、日本ではフィーチャーフォン時代に十分な存在感を示せておらず、その後も紆余曲折があって他社の後塵を拝していた。昨年から、こうした状況が変わりつつある。端末そのものはもちろん、それ以上に国内でのラインナップや販売戦略がアップデートされた格好のGalaxy S26シリーズだが、日本市場での戦い方もよりグローバルに近づきつつあると言えそうだ。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya