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メルカリが自社の集荷物流網を構築。梱包レスや無人ボックス強化「メルロジ」

メルカリは、物流サービスの企画・開発・運営を目的とし、100%子会社として株式会社メルロジを設立した。

メルロジでは、メルカリによる国内最大級の発送取扱量に加え、「メルカリポスト」(全国約1,000カ所)、メルカリを“体験しながら学べる”リアル店舗「メルカリステーション」(全国11カ所)などの自社のタッチポイントを活用。新たな集荷物流網を構築する。11月からエリアを限定して実証実験を開始し、その結果やデータを確認しながらエリア拡大を図っていく。

メルカリポスト

メルカリが持つデータとテクノロジーを活用した効率的な集荷物流網を構築し、梱包レス発送など顧客体験を更に向上させるサービスの提供を目指す。自社のタッチポイントを使った集荷物流網を構築するが、パートナーとの連携により実現し、トラック・倉庫等の自社アセットを持たない形で展開する予定。

具体的には、メルカリが持つ月間利用者2,000万人の取引データをもとに、より荷量が多い場所を特定し、集荷の精度を上げることで、効率的な集荷物流網を構築する。

また、「らくらくメルカリ便」で非対面発送できる無人投函ボックス「メルカリポスト」は、現在の全国約1,000カ所から2024年までに全国8,000カ所に拡大。「メルカリステーション」と合わせて自社のタッチポイントとして活用し、集荷効率の最大化を図る。

これらの集荷物流網では、売れた商品を持ち込むだけで発送が完了する「梱包レス発送」や、発送前の商品のクリーニング、リペアといった付加価値サービスも提供。利用者の体験向上を目指す。クリーニングやリペアは2022年春の導入を目指す。

集荷物流拠点は、メルカリが整備するのではなく、パートナー企業との連携を想定しているという。「メルカリリペアという名前で(靴修理の)ミスターミニットと実証実験を行なっている。既存の業態との連携していく。リペアやクリーニング、お直しといったサービス業態との親和性が高いことはわかっている。メルペイの加盟店のなかでそういった業態との始めている(メルロジ 野辺一也CEO)」とした。

また、メルロジの集荷物流網では、繰り返しリユースすることを前提とした梱包発送資材の導入や、配送過程で発生する環境負荷への対応にも取り組む方針。メルカリが目指す「限られた資源が大切に使われる循環型社会の実現」にも寄与するとしている。

将来的には、メルカリポストのパートナー企業への開放なども検討。他社ECの商品返品等の発送対応や、メルカリグループ以外のサービスを使ったネットショップ出店者への、保管・発送サービスの提供なども行なう計画。

また「メルカリShops」の出店者向けに、出品・梱包・発送代行を担うサービスを提供。メルカリグループの他の事業とのシナジー創出を目指す。

2017年頃から大手EC事業者が物流事業に参入したことで、「ラストワンマイル」の配達キャパシティが拡大。さらに置き配サービスやロッカー受け取りなど、「受け取る側」の改善が進んできた。一方、「送る・発送する」プロセスには課題がまだ残されており、この領域の改善を自社物流網で担っていくのが「メルロジ」となる。

なお、メルカリの出品時の集荷部分の改善を担う新会社となっており、物流網における日本郵便やヤマトとのパートナーシップは変わらないとする。

コンビニ発送の8割がメルカリ。非対面とオフライン拠点の2面を強化

メルカリによれば、「出品してみたい」という潜在的なユーザーはまだ約3,600万人いるが、特に出品には課題や不安があり、多くの人がまだ使えていない状況という。一方、メルカリの規模は年々拡大しており、日本全体の宅配便の戸数は年間約50億個、宅配市場におけるメルカリの荷物の割合は5~10%と推測されている。加えて、メルカリの流通取引額が毎年25%拡大しており、物流業界に与える影響が大きくなっている、

特にコンビニ発送におけるメルカリの発送割合は約80%で、レジなどでの出荷手続きにかかる時間は約1分と長いため、コンビニからは負担を訴える声もあるという。そのため、「メルカリポスト」をコンビニに設置するといった対応も進めている。

こうしたことから、メルカリのさらなる事業拡大には、物流の持続的な発送オペレーションの構築が急務と認識。コンビニや郵便局での対面でのやり取りを減らす必要があり、それに応えることがメルロジを立ち上げる理由の一つとなる。

現在、非対面配送のメルカリポストを1,000店舗で展開しているが、メルカリポストを設置した近隣の店舗では、店頭での発送手続きが大幅に減少。店舗での負荷も大幅に軽減しているという。また、メルカリポストなどで「非対面」で取引した人は、手軽で早く、レジでの負担を気にすることがないため「リピート率」が高い。非対面配送利用者の継続利用率は70%で、非対面の推進で「お客様の体験や利便性向上が利用率が高まっていくと考えている」(メルカリ ビジネスデベロップメント ディレクター 進藤智之氏)とする。

メルロジ 野辺一也CEO(左)とメルカリ ビジネスデベロップメント ディレクター 進藤智之氏(右)

メルロジで強化していくポイントの2つめは、オフライン拠点。特に発送環境の整備。メルカリでは、荷物のサイズによって発送方法や場所が変わる、送料がわからない、梱包資材の準備が面倒など、出品・発送にまつわる利用者の悩みは多いとする。こういうものは、「店頭でのオペレーションを通じてしか改善できない」(メルロジ 野辺一也CEO)とし、メルロジでは発送拠点を整備。集荷物流網で、売れた商品を持ち込むだけの「梱包レス発送」や、発送前の商品のクリーニング、リペアなど付加価値サービスも提供する。

梱包レス発送(イメージ)

もう一つのメルロジのテーマが「環境負荷の低減」。「そもそも梱包しなくていいのでは?という商品もある。配送過程だけでしか使わない梱包材などは、リユースできるものなどに変えていく。CO2の問題を考えれば、メルカリの持つデータを使いながら配送拠点の整備などにも反映していける」と言及。データとテクノロジーを活用し、効率的かつ循環型社会に貢献できる集荷物流網を構築するという。