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日本のキャッシュレス比率はすでに50%超え? 新指標で80%を目指す
2026年3月27日 08:40
日本のキャッシュレス決済比率は2024年に40%を突破し、42.8%に達したと経済産業省は発表している。ところが最近、このキャッシュレス決済比率を変更しようという取り組みが進められている。その結果として、現在の日本のキャッシュレス決済比率は51.7%という数字になり、半数以上の決済がキャッシュレスになっていることになる。
今回の変更がなぜ行なわれて、それは正しく実態を捉えているのか。新たなキャッシュレス決済比率の定義について説明する。
仮定の支払いを除いてより実態に即した比率に
経済産業省では長年、キャッシュレス決済に関する有識者会議での議論を続けており、例えば2018年の「キャッシュレス検討会」、2022年の「キャッシュレスの将来像に関する検討会」が開催され、2025年には「キャッシュレス推進検討会」で議論が行なわれていた。
もともとは2017年の政府が策定した「未来投資戦略 2017」において、「2027年6月までに、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすること」が目標とされた。これが2018年のキャッシュレス検討会が取りまとめた「キャッシュレス・ビジョン」において、2025年の大阪・関西万博をめどに前倒しして達成する方針となった。
この目標に向けて取り組みが進められ、結果として2024年の実績で42.8%となり、目標は無事達成。前倒しした目標を、さらに1年上回っての達成となった。政府はその後、80%以上の実現を目指して取り組みをさらに強化する方針を示している。
ところがこのキャッシュレス決済比率には課題が存在していた。
それが、「仮に国民すべてが常にキャッシュレス決済を使い、現金がまったく使われなくなっても計算上は決して比率が100%にならない」という問題だ。
従来使われていたキャッシュレス決済比率の算定式は、2017年に経済産業省が取りまとめた「FinTechビジョン」内に登場した。そこでは「キャッシュレス決済額の⺠間最終消費⽀出に占める⽐率」という指標が使われており、これをキャッシュレス・ビジョンでも踏襲して「民間最終消費支出」に対するキャッシュレス決済の比率を示す形になった。つまり算定式の分母は民間最終消費支出であった。
この指標だと、世界銀行の各国統計情報における「家計最終消費支出(Household final consumption expenditure)」と共通であり、各国比較が可能ということで都合もよかった。
しかし、この民間最終消費支出だと非営利団体の消費が含まれるため、「個人の支払い」に注目した比率としては現状にそぐわないと指摘されていた。そのため、2025年のキャッシュレス推進検討会では、この分母の数字が「家計最終消費支出」へと変更された。
なお、世界銀行の定義では「家計最終消費支出=家計+非営利団体の支出」だが、日本の場合は「民間最終消費支出=家計+非営利団体の支出」となっているので、これまでは国際比較ができていた。今回は指標の目的を踏まえて、国内向けの指標として変更が行なわれた形だ。
「持ち家」問題の解消
ところがこの変更だけだと、今度は「持ち家の帰属家賃」が含まれてしまう。この「持ち家の帰属家賃」とは、家賃の支払いを行なっていない自己所有住宅、いわゆる持ち家について、「借家と同様のサービスが消費されていると仮定し、一般市場価格で評価して家賃支払いを計上する」という統計上の処理を指す。
つまり、現実にこの支払い自体は発生していない。持ち家の人はローンや税金を支払っているかもしれないが、ここで算定しているのは、「一般的な家賃と同等の額を支払っている」という仮定の数字で、実際には存在しない取引だ。この数字が、実は日本の民間最終消費支出の約17%に相当する約57兆円分を占めていた。
この約17%は、誰も支払っていない仮定の支出にもかかわらず、キャッシュレス決済比率算出の分母となっているため、仮にすべての消費がキャッシュレスになっても、比率は約83%で頭打ちになってしまう。その中で80%以上を目指すとなると、上限が83%程度なので、実質的には96%以上を目指すぐらいのかなり無理のある設定となってしまう。
こうした背景を踏まえて新指標が設定されることになり、新たに分母として「家計最終消費支出」から「持ち家の帰属家賃」を引いた数字が採用された。
なお、日本では海外と比べても利用が多い支払い方法として、「銀行振込」や「口座振替」といった銀行取引がある。現金を直接受け渡ししないという点でれっきとしたキャッシュレス決済であり、以前からキャッシュレス決済比率の算定に組み込むことが検討されていたが、今回も「正確な金額を算出できない」ことから、新指標からは省かれている。
24年のキャッシュレス比率は42.8%→51.7%に
いずれにしても、この新たに設定された「国内指標」が、日本の実態に即したキャッシュレス決済比率として今後使われることになる。今までの比率の算出方法も国際比較のために継続する方針だが、より実態を表した数字として国内指標を扱う。
この国内指標を使うと、従来の民間最終消費支出が329.8兆円(2024年)、キャッシュレス決済額が141兆円だったところ、分母が家計最終消費支出から持ち家の帰属家賃を引いた272.9兆円となるため、キャッシュレス決済比率は51.7%となった。
現状の日本は決済額の半数強がキャッシュレス決済になっているのが実態ということになる。もちろん、都市圏のコンビニエンスストアでは利用が多いだろうし、地方の個人店では非対応という例も多いだろう。銀行振込・口座振替を使う人も多いはずだ。金額ベースで考えれば、この新たな数字がより実態に即した比率であるといえそうだ。
ちなみに、決済件数で言えば2023年時点で342億5,000万回となっている。ただし、これはクレジットカード会社26社の集計である点や、クレジットカードを紐付けたコード決済の支払いではそれぞれがカウントされて2件となってしまうという課題がある。
これに加えて、そもそも分母となる現金を含めた全体の決済回数算出がほぼ不可能であることから、比率は算出されず、キャッシュレス決済の件数として参考値の扱いとなっている。
この新指標を持って、政府はキャッシュレス化の取り組みをさらに強化する方針だ。将来的な目標である80%は、前述の通り「国内指標で」という形になり、条件は緩和された。さらに中間目標として、2030年までに国内指標で65%、国際比較指標(従来指標)で55%の達成を目指す。
この65%という数字について経済産業省は、銀行取引が含まれていないことから、「キャッシュレス決済を利用する意志のある消費者は、大半の場面でキャッシュレスを利用できる状態」になっていると見ている。







