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恐竜になって走る「ティラノサウルスレース」 参加してみた

「ティラノサウルスレース」というイベントをご存じでしょうか。これは、ティラノサウルスの着ぐるみを着て全力疾走するという、アメリカ発祥とされる競技です。

その見た目や動きの面白さや、誰でも参加できる競技のシンプルさから話題となり、日本でも「日本ティラノサウルス競技連盟」を中心に、町おこしの一環として全国各地で開催されています。

筆者は動画でレースを見てから、いつか出てみたいと思っており、近所での開催が決まったのを機に着ぐるみを購入して初参戦しました。今回は、着ぐるみの使い勝手とイベント当日の様子をお届けします。

ティラノの着ぐるみ「ティラノサウルススーツ」について

ティラノサウルスレースに出場するためには、「ティラノサウルススーツ」と呼ばれる着ぐるみが必要となります。レンタルできるイベントもありますが、参加条件として着ぐるみの各自用意が求められるケースが多いので、初参加の際は基本的に購入することになります。

購入したティラノサウルススーツ。カラーはオレンジ

筆者が購入した着ぐるみは、連盟が公式Webサイトで推奨しているモデルで、価格は4,000円くらいでした。会場ではほとんどのティラノが同型または近いデザインだったので、迷ったら推奨モデルを選べば間違いありません。

素材は190Tポリエステルで、着用方法としては、腹部のファスナーを開けて中に入り、背中に取り付けた送風機を起動させたら着ぐるみが数十秒ほどで膨らみ、ティラノサウルスになれます。

視界はティラノの顔の下にある四角窓から確保でき、手足は外に出せます。この着ぐるみはフリーサイズとなっており、推奨身長は160~190cmです。筆者の身長は170cmでちょうど窓が覗きやすかったです。

腹部のファスナーを開いて中に入る
身長が170cmくらいだと窓の位置がちょうどよかった
中からの視界

送風機は、付属のバッテリーケース(単三形電池4本で駆動)またはモバイルバッテリーで動きます。バッテリーケースでも6時間は駆動できるようでイベント1日分は持ちますが、なんとなく不安だったのでいつも使っている小型のモバイルバッテリーを使用しました。

なお、着ぐるみ内部にはバッテリーを入れられる収納ポケットもありますが、走行中に落下しそうなので当日はショルダーポーチに入れてました。

送風機

なお、日本ティラノサウルス競技連盟のホームページには、レースで使用できるティラノサウルススーツについてのルールが書かれています。例として、成獣(大人)は、顔や人間が出ていたり、奇抜なデザインの着ぐるみはレースに参加できません。

デザインに関しては今も意見が分かれていて、どこまでが参加できるのかは明確になっていないようです。ただ、推奨モデルから大きく外れていると審議対象となり、勝ち上がれない場合もあるらしいので、やはり推奨モデルを買うのが無難でしょう。

ティラノになって走ってきた

今回参加したのは、ショッピングセンター「流山おおたかの森S・C」の屋外広場で行なわれた、N plus編集室主催の「第2回 ティラノサウルスレース in 流山」です。参加費は3,000円だったので、着ぐるみ代とあわせて約7,000円で参戦できました。

会場入り口にもティラノ

このイベントは、26年3月21日に船橋競馬場で開催される日本最大規模のティラノイベント「ティラノフェス Vol.2」の全国予選会の第1戦となっており、成獣オスおよびメスの優勝者には、ゲートラン優先エントリー権が授与されていました。

成獣オスとメス(中学生以上)、幼獣(小学生以下)の3部門に分かれており、ルールは1レースあたり7体が30mの直線コースを駆け抜け、成獣のみ各レース1位が決勝へ進むというシンプルなもの。

会場にはおそらく150体ほどのティラノが集結しており、筆者にとってこの会場はなじみのある場所でしたが、人ならざるものが跋扈する光景を目にするのはこれが初めてでした。

どこを見てもティラノ

受け付けを済ませてからは、基本ティラノの姿でいることになり、何頭ものティラノが壇上の人間の話を黙って聞くシュールな開会式や、インスタ映えしそうなティラノ状態でのラジオ体操が行なわれた後、予選レースが始まりました。

予選は成獣メス、幼獣、成獣オスの順に進み、1レースごとに一頭ずつ走者の紹介が入るので、自分の順番まで待ち時間が結構あり、その間にレースをしっかり観戦できました。現地でティラノサウルスレースを見るのは初めてだったので、これだけでも楽しく、来てよかったなと思っていました。

レース直前のティラノたち
目の前をぴょこぴょこ動きながら駆け抜けるティラノたち

順番が近づくにつれ、初参戦で着ぐるみで走るのも初めてということもあり、緊張がじわりと高まりましたが、スタートラインに立った瞬間、緊張は一気に高揚感へ。

スタートしてからは、1歩足を踏み出すたびにティラノの頭部が上下に揺れ、転ばないよう足裏で路面を確かめながら必死に前に進み、無事にゴール。結果は3位で、残念ながら決勝進出には届きませんでした。ただ、ずっと走っていたいと思うほど楽しい時間でした。

もともと運動は得意でなく、社会人になってからはほとんど体を動かしていなかったことを思えば、最下位を覚悟していた分、手応えは十分。体づくりをしてティラノ状態での走りに慣れれば、次は決勝進出を狙えるかもしれません。

予選が終わってもイベントは続きます。ティラノのままで踊るダンスやだるまさんが転んだなどのレクリエーションが用意されており、体力が続く限り恐竜でいる時間を楽しめました。

デザインの異なるティラノもいました

レース参戦で気づいたこと:暑さ対策から手入れまで

ティラノサウルスレースに参加してまず痛感したのは、着ぐるみの中は想像以上に暑いということです。着ぐるみ内が暑いことは知識として知っていましたが、気温が30℃を超えた当日に実際に着てみると蒸し風呂のようで、約3時間の着用だけで約1.5kg落ちるほど汗をかきました。ダイエットしたい方には、おすすめかもしれません。

このように、夏場のティラノサウルスレースは熱中症に細心の注意を払うべきです。筆者は首にタオルを巻き、着ぐるみの中で水分補給できるようにショルダーポーチにスポーツドリンクを入れてました。また、待機時はなるべく日陰にいたり、上半身を着ぐるみから出しておいたりもしました。結果として体調に問題なく最後まで楽しめました。

今回は、気温が上がる前に予選を終えるなど運営の配慮があり、参加者も着ぐるみで通常より暑くなることを見越して各自熱中症対策をしていたようでした。その結果、少なくとも筆者が滞在した時間帯に倒れるティラノはいませんでした。

また、初参戦の方は可能なら事前練習をおすすめします。前もってティラノになって走っておくと、視界やバランスの癖などをつかめて転倒リスクを下げられます。特に、幼獣で出走する子どもはあらかじめ走っておきましょう。

このほか、イベント後は次回に備えた着ぐるみのメンテナンスも欠かせません。着ぐるみは汗などで確実に汚れますので、筆者は風呂場で裏表を洗い流し、浴室乾燥で両面を乾かしました。乾燥の際には、穴や破れがないか点検も行ない、見つけた場合はテープで補強しておくと次回も安心して使えます。

空気で膨らませる構造上、穴があるとティラノになれないため、当日も養生テープなどの補修用品を携行しておくと心強いです。ゼッケンを貼る際の固定にも使えるため、1つ持っていくと何かと役立ちます。

イベント後は裏表をシャワーで流して、“ティラノの開き”にして陰干ししておけば大丈夫そうです

たまには人間をやめてティラノになろう

大人になってから、運動会のように観客に応援されながら徒競走する経験をしていなかったことを、今回恐竜になって走ってみて思い出しました。また、人間で生活していると30m走っただけで拍手が起きたり、「お疲れ様!」とハイタッチが飛んできたりすることはまずないので、これだけでも定期的にティラノになりたいと思えるほど幸福な気持ちになれました。

ティラノ状態では多くの参加者が思うように走れないため、運動神経の差が結果に表れにくいのも魅力です。会場には10代から70代ほどまで幅広い世代が集まり、誰でも気軽に挑戦できる空気がありました。このほか、全員がティラノという匿名性も手伝って、初対面でも気軽に会話できるのも心地よかったです。

とはいえ、成獣オスのレースはスピード感と迫力があり、転倒するティラノも多かったです

ちなみに、ティラノサウルスの着ぐるみを着て活動することを「ティラ活」と呼ぶそうです。今後も定期的にティラノになって走ったり踊ったりしてみようと思います。日常に少し疲れた方や新しい趣味を探している方、楽しく汗をかきたい方は、ぜひ一緒にティラノになりましょう。

【訂正】記事初出時、年間レース数を誤って記載し、当該イベントを「公認レース」と表記していました。いずれも誤りで、当該イベントは公認レースではありません。訂正し、お詫びいたします。(10月20日)

浅井 淳志