お金の教室
第1回
株高の今、積立投資は一旦止めるべき? 長期投資の基礎知識
2026年1月30日 08:40
2024年、NISA制度のリニューアルが大きな話題を呼び、投資人口も拡大しました。そのタイミングで将来に向けた資産形成を始めたものの、分からないことも多く、金融関連のニュースなどを見て漠然とした不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな悩みを解消すべく、元金融庁金融教育担当で、現在は金融教育家の塚本俊太郎氏が、知っておくべき金融に関する知識を解説します。(編集部)
今回は「株高の今、積立投資は一旦止めるべき? 長期投資の基礎知識」というテーマでお話しします。
結論から言うと、「高値掴みを恐れすぎず、積立投資を続けていく」が重要になります。一見すると逆説的な考え方ですが、長期投資という視点で見ると、実はとても合理的な判断です。
この記事では、株式市場が最高値圏にある今、なぜ「待つ」という選択が必ずしも正解ではないのかを整理したうえで、上げ相場と下げ相場それぞれの投資の難しさ、そして2026年のNISAをどう使っていくのがよいのかを順に見ていきます。
最高値の株式相場だから待つべき
日経平均株価は、直近1年間で大きく上昇し、バブル崩壊後の最高値を更新しました。2025年4月には、いわゆるトランプ関税ショックによって一時的に下落する場面もありましたが、その後は持ち直し、全体としては上昇基調が続いています。現在は5万円台をつけており、「さすがに高すぎるのではないか」と感じる方も多い状況です
一方で、NISAで人気の全世界株式インデックスファンド、いわゆる「オルカン」も最高値を更新しています。2025年4月には同じく下落局面がありましたが、その後は株式市場の上昇に加え、円安の進行も重なり、価格は大きく上昇しました。
最近では、AIブームによる過熱感や、株式市場全体の割高感を指摘する声も増えています。そのため、「今買ってしまうと高値掴みになるのではないか」「もう少し待った方がいいのではないか」と悩む人が増えているのも自然な流れと言えるでしょう。では、高値圏にある今、本当に待つことが正解なのでしょうか。
ここで考えておきたいのが、デフレからインフレへの転換です。消費者物価指数を見ると、2020年はコロナ禍の影響で物価が下落し、デフレの状態でした。この時期は、現金を持っているだけで相対的に価値が高まる環境でした。しかし、コロナ禍が収束し、経済が正常化する中で、ロシア・ウクライナ戦争による原材料価格の上昇などを背景に、世界的にインフレが進みました。
現在は、日本でもおおむね3%程度のインフレが続いています。この3%のインフレは、100万円を現金で持っていると、1年後には実質的に97万円の価値になってしまうことを意味します。つまり、投資をせずに「待つ」という選択そのものが、コストになっているのが今の環境です。
次に、上昇の途中で買うのか、それとも下落直前に買ってしまうのかは、長期ではそれほど大きな違いにならないという点を確認しておきましょう。
ここでは、オルカンが連動するMSCI ACWI(全世界株式指数)の、2000年12月から2025年11月までの約25年間の推移を見ています。
例えば2005年末は当時の最高値でしたが、その後も相場は上昇を続けました。2008年にはリーマンショックで株式市場が大きく下落しましたが、直前の高値で投資していた場合でも、時間をかけて回復し、再び高値を更新しています。2020年のコロナショックも同様で、直前に投資していたとしても、下落は一時的でした。
このグラフが示しているのは、上昇トレンドの途中で買っても、下落直前で買っても、長期で見れば高値は更新され続けてきたという事実です。過去の歴史を振り返ると、高値掴みを過度に恐れる必要はなく、むしろ市場に居続けることの方が重要だと分かります。
上げ相場と下げ相場どっちが投資しやすい?
次に、上げ相場と下げ相場のどちらが投資しやすいのかを考えてみましょう。オルカンの直近1年間の値動きを見ると、2025年4月の下落を除けば、全体としては上昇基調でした。
下げ相場で投資をすると、「下がったから買ったつもりが、さらに下がる」という状況がよく起こります。買った直後に含み損が広がり、不安になって売ってしまうというケースも少なくありません。本当は底値で買いたいところですが、下落局面では悪いニュースばかりが続き、心理的に手が出せなくなってしまいます。その結果、回復局面に乗り遅れてしまうことも多いのです。
一方、上げ相場では、買った後に比較的早く含み益になりやすく、資産が増えている実感を持ちやすくなります。そのため、投資を継続しやすいという面があります。一般的には、下げ相場よりも上げ相場の方が、精神的には投資を続けやすいと言えるでしょう。
ただし、上げ相場にも注意点があります。相場が順調に上がっていると、早く多く投資したくなり、積立投資では物足りなく感じて一括投資に踏み切りたくなることがあります。また、毎月の積立額を増やしたくなる気持ちも生まれがちです。しかし、その直後に急落が起きると、恐怖から売却してしまい、損失を確定させてしまう可能性があります。こうした事態を避けるためにも、上げ相場であっても無理に投資ペースを速めず、長期の積立投資を淡々と続けることが大切です。
「下落する前に売って逃げたい」と考える気持ちもよく分かります。企業の業績が好調で、予想通りの決算が続くと、株式市場は緩やかに上昇します。一方で、戦争や災害、想定外の政策変更など、予測できない出来事が起きたときに、市場は急落します。急落が起きるのは、予想できないからこそです。
そのため、下落を正確に当てて回避するのは非常に難しいと言えます。相場は多くの時間を上げ相場で過ごし、想定外の出来事が起きたときに短期間で大きく下落する、という動きを繰り返しています。どんな投資スタイルであっても、下落局面を完全に避けることはできない、という前提に立つことが重要です。
投資を始めたばかりの人へのアドバイスもしておきます。始めたばかりの頃は投資額が小さいため、短期間で大きく増えることはあまり期待できません。そのため、短期的な値動きを気にしすぎないことが大切です。まずは、毎月積立投資をする仕組みを作ることを目標にしましょう。
積立設定をしてしまえば、相場が上がっていても下がっていても自動的に投資を続けることができます。10年以上続けていくと、投資元本が大きくなり、それに伴って利益も徐々に大きくなっていきます。相場を頻繁にチェックしすぎないことも、長く続けるためのコツと言えるでしょう。
2026年NISA最適投資術
2026年のNISAにおいても、基本となるのは長期・積立・分散投資です。長期投資とは、下落局面があっても売らずに持ち続けることです。
積立投資は、毎月一定額を投資することで、価格が下がっているときには多く、上がっているときには少なく買う仕組みになっています。そして分散投資によって、特定のリスクに偏らず、長く保有しやすくなります。
つみたて投資枠と成長投資枠は、どちらも積立投資が可能です。成長投資枠は一括投資しかできないと思われがちですが、積立設定もできます。両方の枠を活用したい場合は、積立投資を基本にするとよいでしょう。一方で、投資経験が長く、下落局面を経験してきた人であれば、成長投資枠での年初一括投資も選択肢になります。つみたて投資枠でも、ボーナス設定を使うことで一括投資に近い形を取ることが可能です。全世界株式インデックスファンドやS&P500など、分散された商品を選び、投資方針をぶらさずに実行していくことが大切です。
まとめ「基本は積立投資を続けること」
株式市場が最高値だからといって待ってしまうと、インフレによってお金の価値は目減りしていきます。下落局面は避けられないものと受け入れたうえで、長期的に持ち続けることが重要です。
過去を振り返ると、株式市場は長期では成長してきました。高値掴みを恐れすぎず、市場に居続けることが、結果的に資産形成につながります。2026年のNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を活用し、基本は積立投資を続けること。投資経験がある方は、一括投資も含めて、自分に合った方法を選びながら、長期の視点で取り組んでいきましょう。











