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コマース事業を拡大するヤフー。「ストアパフォーマンス」で信頼性向上

急拡大するヤフーのコマース事業とその課題

ヤフーがECに力を入れている。'19年にはZOZOの買収を発表したほか、Yahoo!ショッピングと連携した新たな「PayPayモール」を10月にスタート。家電量販店やファッションブランドが参加する「プレミアムショッピングモール」として展開し、日々取扱高を増やしている。

新たなヤフーの「柱」してコマース事業を強化してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大とともにECでの取引が拡大。2020年第1四半期決算は、広告などのメディア事業の営業利益をコマース事業が初めて超えたと報告している。

メディア事業の営業利益をコマース事業が超える

しかし、ヤフーがコマース事業の拡大にあたっての課題もあったという。それがストアの品質。2013年の出店無料化以降は、出店者や商品数は大幅に増えたものの、納期や配送についてのクレームなども増え、「ストアのオペレーション品質が落ちているのでは」という課題があったという。

Yahoo! ショッピングもPayPayモールも、企業がモールにテナントとして「出店」する形のECサイト。そのため、サービスやショッピング体験の改善には、ヤフーだけの努力では足りず、ストア(出店者)に依存する部分が大きい。

その対策として、2018年11月から取り入れたのが「ストアパフォーマンス」制度。良いストア、ユーザーが信頼できるストアを「可視化」する仕組みだ。

ストアパフォーマンスとはなにか

ストアパフォーマンスは、まずYahoo!ショッピングで導入され、その後スタートしたPayPayモールでも同様の基準が使われている。主なメリットは、ユーザー側から見れば、信頼できるストアがわかること。ストアから見れば、ストアの「なにを改善すればいいか」がわかる仕組みということ。

ストアパフォーマンスでは、「売上規模」「配送・発送」「キャンセル率」「ストア評価」「商品レビュー」といったストア運営状況を各種指標ごとに可視化する。各種指標から利用者の評価状況を把握し、ストア運営の課題などを可視化する。

ストアパフォーマンスの各指標

例えば、サイトで表示している予定通りに配送できていれば評価はアップし、注文後のキャンセルが多いサイトの場合は、評価が下がるといった形だ。

ストア管理画面 ※画像はイメージです

一定の基準をクリアすると「優良店」と認定される。

配送・発送のスコアが足りない場合は、ストアが配送を改善することで評価が向上。単に「配送の早さ」だけを求めるだけでなく、ユーザーに示した配送予定をきちんと実行できているか、といったことまで確認しているという。

このスコアの導入により改善点が可視化され、ストア側からはなにをクリアすれば「優良店」かがわかりやすくなる。

優良店になると、Yahoo! ショッピングで「ユーザー高評価店」のバッジが掲出されるため、ユーザー獲得や売上面でもメリットが生じる。

また、ストアの利用者視点では、「信頼できるストア」がすぐにわかるため、買い物の安心感につながる。

ヤフー ショッピング統括本部 プロダクション2本部長の杉本務氏によれば、制度導入以前は、ストアの評価が難しかったという。「オペレーションが可視化されず、ストアから『どこを改善すべきかがわからない』と言う声もあった。Yahoo! ショッピングもPayPayモールも、ヤフーだけでショッピング体験全体は改善できず、ストアと一緒に改善していく必要がある。改善点を見えるようにし、参考にしていただくために作った制度」と説明する。

ヤフー コマースカンパニー ショッピング統括本部 杉本 務 プロダクション2本部長

スコアパフォーマンスでは、特に配送・発送とキャンセル率、ストア評価を重視しているとのことだが、ストアのジャンルや売上規模などに応じて総合的に評価。都度スコアは変更しており、優良店対象だった店舗が、翌日から対象外になることもあるという。

ストアパフォーマンスの効果。PayPayモールは全て優良店

ストアパフォーマンス導入後、店舗に「改善の方向性」が示されたことで、出店ストア全体の評価も向上。2020年2月は、前年2月と比べて「ストア評価」が約30%改善している。

Yahoo! ショッピング/PayPayモール内での「信頼できるストア」が増え、ヤフーのコマース全体の品質向上につながっている。このコロナ禍においても、Yahoo!ショッピングとPayPayモールであわせて、新規購入者数は54%増加した。

なお、優良店を示す「ユーザー高評価店」の表示は、PayPayモールでは表示されない。

なぜなら、PayPayモールは基本的に「優良店」のみが参加するプレミアムモールという位置づけだから。出店基準のひとつを「過去約90日間において80%以上の期間、優良店」と定めている。

PayPayモールが「厳選されたプレミアムなオンラインモール」とYahoo! ショッピングとの違いをアピールしている一因となっている。

PayPayモール

ヤフーでは、Yahoo!ショッピングは、「欲しいものが手に入る、幅広い品ぞろえのショッピングモール」、PayPayモールは「厳選されたストアのみが出店できる、『ワンランク上』の買い物体験を提供するプレミアムモール」と位置づけている。

PayPayモールは、百貨店や大手家電量販店、メーカー、ファッションブランドなど1,000店舗が出店。Yahoo! ショッピングには出店せず、PayPayモールへ新規出店するストアも約70店舗あるとのこと。

また、PayPayモールは返品期限が14日間とし、安心して買い物できることや配送通知機能など“プレミアム”を充実。さらに、PayPayユーザーからの流入などで、Yahoo! ショッピングとは利用者層も異なっており、若い層を獲得。新しい魅力的なショッピングモールとしてアピールしていく。