いつモノコト

オールドレンズの“絞り”を記録できるマウントアダプター

焦点工房が「SHOTEN」ブランドで展開しているニコンZシリーズのカメラ用のマウントアダプターに、電子接点付きの新製品「Eシリーズ」(9種類)が登場しました。個人的に待望していた機能に対応しているようなので、ペンタックスKマウントレンズ用の「PK-NZ E」を買ってみました。Amazon.co.jpで6,730円でした。

オールドレンズでもExifに情報を記録できる

マウントアダプターとは、他メーカーのレンズやオールドレンズを装着できるようにする形状変換パーツのことで、多くはサードパーティ製です。

マウントアダプターは面白いアイテムですが、レンズとカメラボディの「電子的な連携」はできなくなるため、レンズに関するデータが写真に記録されない(Exifデータに記録されない)のが不便な点でした。写真を管理するソフトウェアは一般的にExifデータを参照しており、情報が欠けていると、後から確認や整理をしたり条件をつけてソートしたりするときに不便なのです。

オールドレンズ+マウントアダプターの組み合わせで特に表面化してしまうのは、レンズの絞り値(F値)をExifに記録できないことです。絞りとは、レンズに搭載されている絞りバネの動きのことで、明るさを調整するほか、被写界深度(ピントの奥行き=背景ボケの度合い)にも影響します。

オールドレンズの絞りはまた、描写の“質”にも大きく影響することが多く、絞り値を調整してレンズの“美味しいところ”を使えていたか、後から写真を見ながら確認したいと思うことは多いのです。

SHOTENの新製品「Eシリーズ」としてラインナップされたニコンZ用の電子接点付きマウントアダプターは、フィルムカメラ時代の単焦点のマニュアルフォーカス(MF)レンズを使うという前提はそのままに、電子接点の搭載で「レンズのスペック情報」をボディに伝える機能が追加され、「Exif記録」「ボディ内手ブレ補正」「フォーカスエイド機能」が利用できるようになる、というものです。

SHOTEN「PK-NZ E」

私が普段使っているニコンの「Z6」の場合、電子接点のないシンプルなマウントアダプターを使うと、カメラ側のF値は「--」と表示され、そもそも変更できませんし、撮影した写真のExifにも記録されません。

電子接点のない従来型のマウントアダプターを使った場合。カメラ側のF値は「--」と表示され設定できません
撮影した写真のExifにもF値は記録されません

今回買ってみたSHOTENの電子接点付きのマウントアダプターを使うと、カメラ側のF値は「--」ではなく、ダイヤルを回して変更できるようになります。このカメラ側で設定したF値が、写真のExifに“撮影時のF値”として記録されます。

SHOTENの電子接点付きのマウントアダプターを使うと、カメラ側のF値を変更できるようになります
Exifにはカメラ側で設定したF値が記録されます

ただし、このカメラ側のF値の変更は、レンズの絞りリングの位置(絞り値)と連動するわけではありません。レンズの描写とも無関係です。レンズとカメラで別々にF値を設定できる形ですが、これを揃えておけば、「撮影時のレンズの絞り値」と「Exifに記録されるF値」が同じになるというわけです。

ニコンの「Zf」には「記録用絞り値の設定」として同様の機能が搭載されているようですが、広くZマウントのカメラで同じ機能を実現できるというわけですね。

電子接点で一部の情報が連携できます

絞り込む撮影にはひと工夫が必要

SHOTENが採用するこの仕組みに課題が無いわけではありません。ひとつはファインダー/モニターのライブビュー画面の露出の問題、もうひとつはF13以上を使用することへの制限ですが、どちらも対処法を見つけました。

今回の組み合わせでは、カメラ側でF値をF6.3以上にすると、ライブビュー画面が暗くなる問題が発生するのですが、これは「プレビュー」機能を使うことで回避できました。プレビューのボタンを押したままシャッターを切ることも可能です。

レンズの絞り値をF8にし、カメラ側のF値もF8に設定したところ。ライブビュー画面は実際に撮れる写真よりも暗く表示されてしまいます。また、シャッター速度やISO感度がオートだと、この暗くなったライブビュー画面を基準にしてしまうので注意が必要です
Fnボタンなどに「プレビュー」を割り当てて使うと、ライブビュー画面が暗くなってしまう問題を一応回避できます

F13以降は“設定用領域”になっている

「Exifに正しい情報を記録する」という運用をしたい場合、より現実的な問題としては、カメラ側のF値をF13以上に設定して撮影するのは、少なくとも初期状態では避けなければいけないという点があります。

なぜそうなっているかというと、SHOTENのこの製品は、カメラ側で設定するF値のF13~F36(10段階)を、設定切替の“トリガー”として使うためです。うっかりこの領域のF値に設定してシャッターを切ると、レンズスペック情報が意図せぬものに変更されてしまいます。

ここでいうレンズスペック情報とは、Exifに記録されるレンズの基本的なスペック(焦点距離と開放F値)のことです。この情報はExifだけでなく、カメラボディ側の手ブレ補正やF値の設定範囲に影響するので、正しく設定することは重要です。

カメラ側のF値設定を使って変更(発動)する、レンズスペック情報の切り替え

この問題は、マウントアダプターに格納されているレンズスペック情報(10種類)を書き換えられる機能を応用して、10種類をすべて同じ内容に揃えてしまうという方法で、一応の回避ができました。

付属のUSBケーブルを使ってPCと接続すれば、レンズスペック情報の書き換えやファームウェアアップデートが可能です
マウントアダプターにはレンズスペック情報が記載されたテキストファイルが格納されており、書き換えることで焦点距離と開放F値をカスタムできます

フォーカスエイド機能、Z6は……

ちなみに今回の新製品シリーズが対応している、ピントの合焦を知らせる「フォーカスエイド機能」への対応ですが、「Z6」「Z7」についてはシリーズの初期製品ということで「非対応」でした。フォーカスエイド自体は表示されますが、不安定なため指標として使うのは難しそうでした。従来からある、赤色などでピント面の輪郭を強調する「ピーキング表示」を使っています。

工夫は必要ながら「オールドレンズの絞り値のExif記録」が実現

SHOTENのEシリーズのマウントアダプターを使うと、今までできなかったオールドレンズの撮影時のF値をExifに記録できるようになり、大きく進歩したと感じました。製品全体として少々トリッキーな実装をしていると思いますが、長年待ち望んでいた機能です。私と同じように感じていた人は、チェックしてみてはいかがでしょうか。

太田 亮三