小寺信良のくらしDX

第40回

足りないものは自分で作る 引越しで大活躍した3Dプリンター

4月末に首都圏へ引越しし、1カ月ほどかけてどうにか以前のように仕事ができる環境まで持ってきた。とはいえ、以前から使ってきたものでも、古くなったり壊れたりしたものは随分廃棄してきたので、足りないものはたくさんある。

大物はホームセンターでまとめて購入したが、ちょっとした小物は微妙にしっくりくるものがなかったり、見つからなかったりする。「あれがいるな」と思いつくたびにいちいちホームセンターまで出かけるのも面倒なので、作れそうなものは3Dプリンターで自作することにした。

3Dプリンターは、ものづくりの試作であったり、特殊部品や小ロットの製造に使われるのが一般的だと思うが、データを探してみると意外に日用品も多い。多くは海外のデザイナーや設計者が作ったものなので、日本で買えるものと微妙にセンスが異なっており、見ているだけでも結構楽しいものだ。

公開されているモデルデータを見るだけでも楽しい

筆者宅にあるプリンターはCrealityの「K2 Combo」で、25年10月に発売された新K2シリーズのうち、一番小さいモデルだ。造形サイズは260×260×260mmなので、それほど大きなものは作れないが、家庭用のちょっとしたものを作るには十分である。以前レビュー用にお借りしたのだが、そのままご提供いただけるということになり、使い続けることになった。

引っ越し先でも活躍中の Creality「K2 Combo」

まず手始めに作ったのが、ヘッドフォンハンガーだ。筆者は仕事柄、かなりの数のヘッドフォンを持っているが、常時手元に置いておきたいのは2つぐらいである。これまで置き場所がなく、いつも机の上に適当に置いていたのだが、この機会にちゃんと置き場所を作ろうと思った。

調べてみるとオーディオメーカー製の既製品もあるが、1個1,000円ぐらいする。それなら自分で作るかということで、データを探して出力してみた。

ヘッドフォンハンガーを出力
ヘッドフォンが邪魔にならずスッキリした

ネジ部分も3Dプリンター製なので、強く締め付けると折れたり曲がったりしてしまうが、ギチギチに固定しなければちゃんと役に立つ。今もテーブル脇で活躍中だ。

反対側のデスク脇にはUSB充電ハブがあるのだが、いつもケーブルの先端がそこからぶら下がっているだけなので、ケーブルや端子を椅子のキャスターで轢いてしまうのが難点だった。

そこでUSBケーブルの先端を引っ掛けておくハンガーも作ってみた。構造は単純だが、先端をここに引っ掛けておくだけでケーブルが床に這わない。また特定の端子を探すにも、これまではいちいちケーブルをたぐってみて先端を確認する必要があったが、これなら一発で目的の端子が見つけられる。こうした面白いデザインのものは、市販品ではなかなか見つからない。

意外なデザインのテーブルハンガー
ケーブルを轢いてしまうこともなくなった

小物入れも、たくさん作った。これまでは製品が入っていた箱のふたなどをひっくり返して入れ物にしていたが、内部に仕切りがないので、結局ごちゃごちゃになる。こうした小物はたまにしか使わないが、使うときにはすぐ見つからないと困る。仕切り付きのトレイを色々作って、デスク上がかなり整理できた。

予備レンズのトレイ
いろんな仕切りのトレイも出力
乾電池やネジ、変換コネクタなども小物入れで整理
重ねられるボックスも便利

家族内でウケが良かったのが、ランプシェードだ。螺旋状の単なる薄い筒だが、中に余っていたLEDテープライトを突っ込んで、テーブルランプにしてみた。LEDテープの線光源と螺旋状のねじれが奇妙な一致を見せる。

家族にウケが良かったランプシェード
中身は余っていたLEDテープライト

リビングに設置した照明が少し暗めだったので、ちょうどいいアクセントになった。電源はモバイルバッテリーから取っているので、どこにでも動かせる。

データがなさそうなものは自分で作る

公開されたデータがなさそうなものは、自分で設計して作ることもできる。都市部に戻ってきてモバイルで仕事することも多くなったのだが、長文を書くときにはノートPCの上に別のキーボードを載せる、いわゆる「尊師スタイル」でタイピングすることも多い。

このとき、外付けキーボードの脚でノートPCのキーボードを押してしまわないよう、いわゆるブリッジのようなものが売られている。市販品は2,500円ほどするが、それほど難しくなさそうなので、自分で設計して作ってみた。市販品のように2つが合体して持ち歩けるような機構はないが、実用的には十分である。

キーボードのブリッジを自作
この上に外付けキーボードを乗せる

もう一つ作ってみたのは、ベランダに設置するソーラーパネル用の架台だ。スペースの関係でソーラーパネルをベランダのフェンスに2列設置したのだが、上のパネルが少しフェンスからはみ出す。

ちょうど折り畳みのヒンジの部分がフェンスの上に当たるので、そのままだとベロッと後ろや前に倒れてしまう。そこでそのはみ出した部分を45度で固定するための治具を自作してみた。

ソーラーパネル用の支柱も自作

一応役には立っているが、熱で少しずつ曲がりつつあるので、もう少し別の設計にしたほうがよさそうだ。

25年ぶりに3Dモデラーになる

設計に使用したのは、無料で利用できる「FreeCAD」というCADツールだ。機能的にはかなりのことができるようだが、どうも操作が覚えきれない。

最初はFreeCADで制作していた

筆者はライターになる前、3DCGの制作を仕事にしていた時期があり、モデリングはそれなりにできる。作りたいものをどうやってモデリングすればいいのかは頭の中で答えは出ているのだが、FreeCADには様々なモードがあり、モード選択を間違えると作業がやり直しになってしまう。

もう少し高度な設計のものを作るには、FreeCADの操作をマスターしなければならないわけだが、それほど頻繁に使うわけではないため、少し覚えてはまた忘れる、の繰り返しで、どうにも効率が悪い。

そこで、3DCG制作者時代にメインで使っていた3DCGソフト、「LightWave 3D」を再び購入して、設計用のツールとして使うことにした。

モデラーからの出力形式には、3Dプリントで広く使われるSTLフォーマットがあるので、スライサー経由で3Dプリンター用のデータに変換できるはずである。筆者は正真正銘の本物の大学生なので、学生・教員版が47,080円で購入できる。正規版は184,800円する、本格ソフトである。

約25年ぶりにLightWave 3Dのモデラーに再挑戦

調べてみたら、最後に使っていたバージョンは「7」だったので、2001年のことだ。実に25年ぶりに使うことになる。

最初はショートカットもすっかり忘れていて手こずったが、ポリゴンモデラーとしての作成方法は変わっていないので、現在少しずつチュートリアルを見ながらリハビリ中である。2週間もすれば、ちょっとしたものなら自分で設計できるようになるだろう。

3Dプリンターは、2009年にFDM(熱溶解積層方式)の基本特許が失効したことで多くのメーカーが参入し、低価格化が進んだ。小型のものでは10万円を切る製品もあり、個人でも購入できる範囲だ。

CADを使って設計できないと使えないと思われているが、一般家庭で使えるようなツール類のデータも豊富に揃っており、ゼロから設計する必要はなくなっている。

DIYというとどうしても木工を想定しがちだが、そうじゃない方法も出てきたというわけである。自分で家のリフォームなどを考えている人には、1台あると便利なんじゃないだろうか。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。